ワスレナグサ

アイネ

文字の大きさ
4 / 9
ヤナギバヒマワリ

唯一の居場所の話

しおりを挟む

ガラガラガラ…



扉を開けると、見覚えのある後ろ姿があって、なんだか安心した



「みさちゃん先生ー!!おはよー!!」



扉を開けた僕達に気づいた先生がこっちを振り返る



「あら、ゆうくん?」


「ど、どうも…お久しぶりです…」



先生は片手に持ったマグカップを机に置いて、ニコッと微笑んだ



「グットタイミングねっ」


「え?」


「今ね、ちょうどお茶しようと思っていたのよ」


「ほらほら、こっち来て一緒にお茶しましょっ」



先生は僕の手を掴むとなんの躊躇いもなく保健室に招き入れてくれた


めぐもなんの躊躇いもなく保健室のベットにダイブしていた



……やれやれだ



あ、そうそう、察しの通り、みさちゃん先生こと、みさき先生は保健室の先生だ


みんなに平等に接してくれる優しい先生


不登校がちな僕にも変な気を使ったりしない


他の子と同じように笑顔を向けてくれる



だから僕は先生がいる保健室がとても居心地がよくて好きなんだ



「ゆうくんはお茶でいいかな?」


「あ、はい」



僕と先生は奥のソファに腰かける


正面のテーブルにはお茶とコーヒーと、そして、大量のお菓子が置いてあった



「…え、なんですか、この大量のお菓子」


「なんかねぇ、気づいたら買ってたのよ…」


「こんなに食べ切れるんですか…?」


「…無理、でも、買っちゃったから食べるしかないわよね~」


「なんか、そういうとこ、先生らしいです」


「笑ってられるのも今のうちよ~?これの消費、手伝ってもらうんだから~」


「ぬぐっ」


先生が僕の口にクッキーをくっこんできたので思わずむせた


僕はこういう時間、嫌いではない




僕らはしばらく二人でのんびりとした時間を過ごした


お茶を飲み、お菓子を食べ、他愛もない話をした



そういえばめぐはベットで横にでもなっているのだろうか


珍しく静かだ



そんなことを考えていると、先生がふと、お菓子を食べる手を止めた



「あ、そういえば…」


「?」


「今日は偉かったね」


「え、な、なんですか…急に…」


「ん~?学校来れたの偉いじゃん、よく頑張んばったよ」



そう言って先生は優しく僕の頭を撫でてくれる



「学校行くのなんて…他の人からしたら当たり前のことですよ…」


「そうかな?先生はそうは思わないなぁ」



先生は優しい、僕のことを否定しない


でも、僕は全然偉くなんかないのだ


今日だってめぐがいなきゃ何も出来なかった



めぐがいないと、僕は何も出来ない…



「あれ?また追い詰めた顔してる…」


「おかしいなぁ、こうやって頭を撫でられると、落ち着くはずなんだけどなぁ」


「落ち着いてますよ、とても」


「そう?まぁでも、少しでも気が楽になったのならよかったわ」



人に優しくされるのは慣れてない


でも、先生の優しい手と声が、さっきまで息苦しかった僕の胸を包む混んでくれるみたいで心地よかった



「私はね、こうされるとすごく心が楽になったんだ」



先生は僕のことを懐かしむように見つめている



「その人がいつも傍にいて包み込んでくれたから今の私がいるの」


「ゆうくんも、そういう人、いる?」




僕は少し考えた




「………はい」


「先生と……そして」




チラッとベットの方へ視線を向ける





「…やっぱりなんでもない」




「あらあら?ゆうくん、好きな人がいるの?誰?教えなさいよ~」








「…………ひみつです」







大丈夫、大丈夫







僕にはめぐがいる






めぐがいるんだ







めぐ、だけなんだ







僕には………





めぐしかいないんだ
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

さようなら、初恋

芙月みひろ
恋愛
彼が選んだのは姉だった *表紙写真はガーリードロップ様からお借りしています

処理中です...