逆夜景

keke

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青春とは。

ありふれたようで満たされない気持ちが右往左往する日々のことだ。
最近ベタな恋愛群像も、月9のドラマにも描けないような想いが張り巡らされて出来ている。
何がいいたいかって?
そうだよ。青春に恋愛もクソもあるか。


颯爽と回転する車輪が音を鳴らして、一定のリズムで鳴る掠れた音は砂嵐のように不快な雑音にも聴こえる。
イヤフォン越しのノイズが風の音に混ざって
河川敷を越えて向かうのは学校。
小砂利を撒き散らしながら真っ黒いタイヤは進む。
立ち漕ぎをしてブレーキを踏む、勢いのあまり前に飛び出してしまいそうになる。
高校の駐輪場へ自転車を停め、鍵をかける。
奇妙な物体がチェーンにぶら下がる。
こんなもんが200円。鍵をなくさないためだ。仕方がない。
カプセルに乗って吐き出された。その物体を握りしめ前ポケットに入れた。
下駄箱に向かうと後ろの席の修司がいた。
「な、瑛太!!銀杏の新曲聴いたか!?」
修司との接点。生粋の音楽好きである。
類はロック。パンクロックといえばいいのか。
何を言っているのかも分からない、汚い音楽、演奏よりも心。
それに惹かれて虜になった同志だ。
「聴いたよ。何よりも昔の感じでてるとこ最高。泣いたわ。」
寝起きが悪い瑛太は少し白け顔で応える。
「だよな!俺らの他に聴いてる奴いないとかまじ狂ってる。俺らが正常。」
本気モードになると次から次へと話題が転換し、大盛況になる。最悪の場合、朝から夜になる。
遅刻寸前に学校に着くので大体遅刻かチャイムが鳴り終わる数秒前に座席に座る。
毎朝格闘焦りの日々。
今日もいつものようにチャイムが鳴り始めたので2階にある教室まで突っ走る。
階段を2段飛ばしで上る。いつの間にか慣れていた。
「廊下は走るんじゃねぇ!」
2階に着いて即座に現れたのは学年主任の近藤。
アメフト部の顧問。鬼の形相だ。
今時こんな熱血教師がいるのか。右手には竹刀。ドラマで見たことがあるような姿で待ち構えていた。
「すみません!廊下は走んないすけどね」
「やめろよ修司。」
怒りに触れた近藤は竹刀を叩きつけた。
修司の性格上あり得ると思っていたことが実現した今、瑛太の体は固まって動けなくなった。逃げ場は2通り。先ほどの階段を上るか下るか。
選んだ出口は思いもよらなかった。
そのまま角を曲がり教室に入り込んだのだ。
瑛太も続けて足を教室へ進めると、途端に
「あいつに伝えとけ、次はねえってな」
近藤に背筋を凍らされながら軽くながし、教室の扉を開いた。
もう既に担任の若林は朝の会を始めたところだった。
若林は大抵の時間をジャージで過ごす。体育教師に見えるが実は数学の教師。
角刈りの頭に厳つい表情。この高校にはそんな先生しかいない気がする。
「起立、礼」
一斉にクラスメイトが立ち上がり朝の挨拶をした。めんどくさがりな瑛太は椅子をしまわずに礼をした。
「えー。おはようございます。本日の連絡は1時間目が変更になりました。英語から古典です。古典の準備を。」
机の上でうつ伏せになった瑛太は話を聞かずに放課後のことを考えていた。
「内野ー。1時間目古典だってよ。俺寝るわ。」
ヒソヒソと話しかけにきたのは斜め前の席の五木だった。その報告いらんやん。うつ伏せになった俺のことを配慮しろよ。瑛太は若干切れ気味でおれもー。と返した。適当に。
五木が俺に話しかけたのはしょっちゅうのことだ。6列ある教室の机。窓側から2列目の後ろから2列目が瑛太の席だ。その斜め前が五木。瑛太の両側は女子。窓側の方は話せるけど、片方は全然話さない。一言も。メガネをかけた優等生女子。瑛太の前の席は藤木。
帰りたいが口癖。毎朝ヨーグルト食ってそう。肌が綺麗。髪がストレート。そして後ろの席は修司。今岡修司。一番話すいい奴。
「後の連絡はもうないな、、あ、内野。放課後職員室な。」
クラスの大半が笑い、うつ伏せのままの瑛太は嫌な顔をした。若林の顔を伺うとウィンクのような仕草をした。なんなんだこいつ。
「んじゃー朝の会終わり。提出物出せよ」

それぞれの生徒が後方にあるロッカーに教科書やノートを取りに向かったり、トイレを済ましに行ったり、自販機へ向かったりしている最中、瑛太と修司は椅子に座ったまま話をしていた。
「今日入荷日じゃね?いく?タワレコ 。」
タワレコとはCDショップ、タワーレコードの略である。2人は一年の大概そこにいる。
「シングルっしょー。そろそろアルバムでそうじゃね??」
音楽の趣味があうのだ。これ以上ない幸せだ。
「っていうか呼ばれてんじゃん瑛太。あれバレたん?」
「この2年間バレたことなんてないんだぜ?そのことじゃあねえと思うぜ。」
「そうか?ならいいけどよー。」
あれとは。瑛太が授業中に行っていることである。机にうつ伏せになりながらブレザーの内側からイヤフォンを通して音楽を聴いている。手慣れたはずのことだ。これでバレて没収されるのは勘弁だ。
「あ、そうだ!あのアルバム貸してくんね?歌詞カード見たいんだよどうしても。」
「いいよ。むしろ今日持ってきてる。」
こんな会話がしょっちゅうのことだ。
真っ黒いリュックサックから取り出したタワレコの黄色い袋に入ったそれを、修司に渡した。
「今日屋上で弁当食おう!」


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