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6話
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「――ヴォルフガング様、いい加減にしてください。これじゃ仕事になりません!」
騎士団長執務室。
カナデは、ふかふかのクッションが敷き詰められた「特製コタツ風ソファ」に埋もれながら、目の前の男に抗議した。
なお、この国にコタツは存在しない。ヴォルフガングがカナデの「前世の知識(断片的なつぶやき)」を元に、魔法具師を総動員して一晩で作り上げさせた魔導具である。
「仕事なら私が終わらせておいた。カナデ、貴様はそこで温まっていればいい。……ほら、口を開け。最高級の蒸し干し肉だ」
「あーん、じゃなくて! 僕は補佐官なんですから、書類の整理とか、ライカのブラッシングとか……」
「ライカなら、あそこでゼクスがやっている」
視線の先では、帝国最強の副団長ゼクスが、死んだ魚のような目で白銀虎のライカをブラッシングしていた。
『……カナデ、この男の指先は事務的すぎて愛が足りない。代わってくれ』
ライカが念話で訴えてくるが、ヴォルフガングの放つ「カナデに近づく奴は殺す」オーラが強すぎて、誰も近づけない。
事の端を発したのは、昨日捕らえた後輩・ルキの存在だ。
「昔からの知り合い」で「自分に好意を寄せている年下」という、ヴォルフガングにとっての地雷をこれでもかと踏み抜いたルキ。
その結果、ヴォルフガングの防衛本能(という名の独占欲)が爆発。
カナデを「一歩も外に出さない」という極端な甘やかし隔離作戦が始まったのだ。
「……カナデ。あの小僧のどこがいい」
ヴォルフガングが、カナデの髪を一房指に巻きつけながら、低く甘い声で囁いた。
その瞳は、嫉妬に焦げ付いている。
「どこって……一生懸命で可愛い後輩ですよ。僕が魔導師団でボロボロだった時に、唯一笑いかけてくれた子なんです」
「…………」
ヴォルフガングの指に力がこもる。
(私がもっと早く、貴様をあの地獄から連れ出していれば……!)
そんな後悔が彼をさらに狂わせる。
「今日から、騎士団の全門に私の魔力感知結界を張った。あの小僧の魔力パターンは登録済みだ。一歩でも貴様に近づけば、自動的に麻痺の雷が落ちる」
「やりすぎです!! 国家予算を私物化しないでください!」
「私の私財だ。問題ない」
この男、財力も権力も愛も、すべてが重すぎる。
カナデが呆れてため息をつくと、ヴォルフガングは不意にカナデの背後に回り込み、その細い体を後ろから包み込むように抱きしめた。
「……カナデ。貴様が、あんな未熟な小僧を頼る必要はない。欲しいものはすべて私が与える。地位も、名誉も、美味い食事も……この私自身の体もだ」
「最後のは返品不可ですか……?」
「当然だ。永久保証付き、一生添い遂げてもらう」
カナデは、首筋に当たるヴォルフガングの熱い吐息に、心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
悔しいことに、この強引で不器用な男に抱きしめられると、不思議な安心感があるのも事実なのだ。
その時、閉め切った窓をコツコツと叩く音がした。
「……!?」
ヴォルフガングが瞬時に殺気を放ち、腰の剣に手をかける。
だが、窓の外にいたのは、ルキが連れていた「翼を持つ猫」だった。
猫は口に小さな手紙をくわえ、ヴォルフガングの結界の隙間(猫一匹分だけ意図的に空けられた通り道)をすり抜けて室内へ滑り込んできた。
『カナデさんへ。物置の鍵、猫の爪で開けました。今夜、時計塔の下で待ってます。一緒に逃げましょう! ――ルキより』
手紙を横から覗き込んだヴォルフガングの顔が、一瞬で「氷の処刑人」モードに切り替わる。
「…………ゼクス」
「はいはい、分かってますよ。ルキ君の再捕縛と、時計塔の周囲を騎士団で包囲すればいいんですね?」
ゼクスがブラッシングの手を止め、慣れた手つきで指示を出す。
「いや、生ぬるい。時計塔そのものを氷漬けにしろ。……カナデ、今夜は寝かせないぞ。逃亡の相談などできぬよう、私の腕の中でじっくりと教育し直してやる」
「だから、僕は何も相談してませんってばーーー!」
カナデの叫びも虚しく、夜の騎士団本部は「ライバル抹殺」に燃える団長によって、厳戒態勢が敷かれることとなった。
一方、ルキの背後には、彼を操る黒い影が。
「ふふ……いいぞ。騎士団の戦力を一箇所に集めろ。その隙に、我らはカナデを『略奪』する……」
不穏な影が迫る中、カナデはヴォルフガングの重すぎる愛の抱擁(と、なぜか始まった耳掃除)に、今日も翻弄されるのであった。
騎士団長執務室。
カナデは、ふかふかのクッションが敷き詰められた「特製コタツ風ソファ」に埋もれながら、目の前の男に抗議した。
なお、この国にコタツは存在しない。ヴォルフガングがカナデの「前世の知識(断片的なつぶやき)」を元に、魔法具師を総動員して一晩で作り上げさせた魔導具である。
「仕事なら私が終わらせておいた。カナデ、貴様はそこで温まっていればいい。……ほら、口を開け。最高級の蒸し干し肉だ」
「あーん、じゃなくて! 僕は補佐官なんですから、書類の整理とか、ライカのブラッシングとか……」
「ライカなら、あそこでゼクスがやっている」
視線の先では、帝国最強の副団長ゼクスが、死んだ魚のような目で白銀虎のライカをブラッシングしていた。
『……カナデ、この男の指先は事務的すぎて愛が足りない。代わってくれ』
ライカが念話で訴えてくるが、ヴォルフガングの放つ「カナデに近づく奴は殺す」オーラが強すぎて、誰も近づけない。
事の端を発したのは、昨日捕らえた後輩・ルキの存在だ。
「昔からの知り合い」で「自分に好意を寄せている年下」という、ヴォルフガングにとっての地雷をこれでもかと踏み抜いたルキ。
その結果、ヴォルフガングの防衛本能(という名の独占欲)が爆発。
カナデを「一歩も外に出さない」という極端な甘やかし隔離作戦が始まったのだ。
「……カナデ。あの小僧のどこがいい」
ヴォルフガングが、カナデの髪を一房指に巻きつけながら、低く甘い声で囁いた。
その瞳は、嫉妬に焦げ付いている。
「どこって……一生懸命で可愛い後輩ですよ。僕が魔導師団でボロボロだった時に、唯一笑いかけてくれた子なんです」
「…………」
ヴォルフガングの指に力がこもる。
(私がもっと早く、貴様をあの地獄から連れ出していれば……!)
そんな後悔が彼をさらに狂わせる。
「今日から、騎士団の全門に私の魔力感知結界を張った。あの小僧の魔力パターンは登録済みだ。一歩でも貴様に近づけば、自動的に麻痺の雷が落ちる」
「やりすぎです!! 国家予算を私物化しないでください!」
「私の私財だ。問題ない」
この男、財力も権力も愛も、すべてが重すぎる。
カナデが呆れてため息をつくと、ヴォルフガングは不意にカナデの背後に回り込み、その細い体を後ろから包み込むように抱きしめた。
「……カナデ。貴様が、あんな未熟な小僧を頼る必要はない。欲しいものはすべて私が与える。地位も、名誉も、美味い食事も……この私自身の体もだ」
「最後のは返品不可ですか……?」
「当然だ。永久保証付き、一生添い遂げてもらう」
カナデは、首筋に当たるヴォルフガングの熱い吐息に、心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
悔しいことに、この強引で不器用な男に抱きしめられると、不思議な安心感があるのも事実なのだ。
その時、閉め切った窓をコツコツと叩く音がした。
「……!?」
ヴォルフガングが瞬時に殺気を放ち、腰の剣に手をかける。
だが、窓の外にいたのは、ルキが連れていた「翼を持つ猫」だった。
猫は口に小さな手紙をくわえ、ヴォルフガングの結界の隙間(猫一匹分だけ意図的に空けられた通り道)をすり抜けて室内へ滑り込んできた。
『カナデさんへ。物置の鍵、猫の爪で開けました。今夜、時計塔の下で待ってます。一緒に逃げましょう! ――ルキより』
手紙を横から覗き込んだヴォルフガングの顔が、一瞬で「氷の処刑人」モードに切り替わる。
「…………ゼクス」
「はいはい、分かってますよ。ルキ君の再捕縛と、時計塔の周囲を騎士団で包囲すればいいんですね?」
ゼクスがブラッシングの手を止め、慣れた手つきで指示を出す。
「いや、生ぬるい。時計塔そのものを氷漬けにしろ。……カナデ、今夜は寝かせないぞ。逃亡の相談などできぬよう、私の腕の中でじっくりと教育し直してやる」
「だから、僕は何も相談してませんってばーーー!」
カナデの叫びも虚しく、夜の騎士団本部は「ライバル抹殺」に燃える団長によって、厳戒態勢が敷かれることとなった。
一方、ルキの背後には、彼を操る黒い影が。
「ふふ……いいぞ。騎士団の戦力を一箇所に集めろ。その隙に、我らはカナデを『略奪』する……」
不穏な影が迫る中、カナデはヴォルフガングの重すぎる愛の抱擁(と、なぜか始まった耳掃除)に、今日も翻弄されるのであった。
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