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7話
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時計塔に月光が差し込む深夜。
「カナデさん、こっちです!」
物置を脱出したルキが、庭園の影からカナデを手招きする。
……はずだった。
しかし、そこにいたのは、パジャマ姿でぐったりとヴォルフガングの腕に抱きかかえられたカナデだった。
「ルキ君……逃げて……。この人、僕が寝ようとすると『健康診断だ』って言って離してくれないんだ……」
「カナデさん! 今助けます!」
ルキが魔導杖を構えた瞬間、周囲の空気が一変した。
「ククク……愚かな騎士どもめ。罠にかかったのは貴様らだ」
闇の中から現れたのは、魔導師団の副団長ヴィクトール。彼は禁忌の魔導書を広げ、禍々しい魔法陣を展開する。
「この召喚術で、カナデの魔力を強制的に引き出し、騎士団ごと吹き飛ばしてくれるわ!」
魔法陣から黒い触手が伸び、カナデへと襲いかかる。
だが。
「……五月蝿いぞ、三下(さんした)」
ヴォルフガングが冷たく言い放つと、彼を中心に凄まじい「氷の盾」が展開された。
ただの盾ではない。その表面には、なぜかカナデの寝顔が彫刻されているという、狂気じみたこだわりの防衛魔法だ。
「なっ……魔導師団の禁忌魔法が、防がれただと!?」
「当たり前だ。カナデの安眠を妨げるものは、神であろうと私が斬る」
ヴォルフガングが抜刀する。その一振りで、ヴィクトールが展開した魔法陣は文字通り「凍結」し、粉々に砕け散った。
「ヒィッ! 怪物め!」
逃げようとするヴィクトールだが、ヴォルフガングは逃がさない。
「カナデを傷つけようとした罪、万死に値する。……だが、殺すのは後だ。今はそれ以上に、この小僧に分からせてやらねばならん」
ヴォルフガングは、呆然と立ち尽くすルキに視線を向けた。
「ルキと言ったな。貴様がカナデを慕う理由は知っている。……昔、行き倒れていた貴様に、こいつが自分の食料を分け与えたからだろう?」
「……! なぜそれを……」
「カナデに関することは、すべて調べ上げてある。……だが、甘い。恩返しなら金で済ませろ。愛なら、私の勝ちだ」
ヴォルフガングは、カナデの腰をさらに強く抱き寄せ、ルキに見せつけるようにその白い首筋に唇を寄せた。
「カナデのこの肌の柔らかさも、戸惑った時に赤くなる耳も、私だけが知っていればいい。貴様に分ける『隙』など、一寸たりとも存在しないのだ」
「だ、団長! 敵の前で何言ってるんですか恥ずかしい!」
赤面して暴れるカナデを、ヴォルフガングは陶酔したような瞳で見つめる。
「見ろ、ルキ。カナデがこんなに可愛いのは、私の腕の中にいるからだ。……貴様には一生、届かぬ光だ」
「…………っ、あんた、本当に最低で……最高に重い男ですね!!」
ルキは悔しそうに叫び、連れていた翼を持つ猫と共に、煙のように姿を消した。
「今回は退きます! でも、カナデさんがあなたの重さに耐えきれなくなった時、必ず僕が攫いに来ますから!」
静まり返った庭園。
ヴィクトールたちは、駆けつけたゼクス率いる騎士団にあっさりと捕縛されていった。
「ふむ。……邪魔者は消えたな」
ヴォルフガングは満足げに頷くと、腕の中のカナデをひょいと持ち直した。
「さあ、部屋に戻るぞ。中断していた『健康診断(添い寝)』の続きだ」
「もう朝になりますよ! 寝かせてください!」
「眠らせはしない。私の愛を、朝日が昇るまで囁き続けてやろう」
「拷問だーーー!!」
カナデの絶叫が響く中、魔導師団の脅威は去った。
しかし、カナデにとっての最大の試練――「団長の底なしの愛」は、ここからさらに深まっていくのだった。
「カナデさん、こっちです!」
物置を脱出したルキが、庭園の影からカナデを手招きする。
……はずだった。
しかし、そこにいたのは、パジャマ姿でぐったりとヴォルフガングの腕に抱きかかえられたカナデだった。
「ルキ君……逃げて……。この人、僕が寝ようとすると『健康診断だ』って言って離してくれないんだ……」
「カナデさん! 今助けます!」
ルキが魔導杖を構えた瞬間、周囲の空気が一変した。
「ククク……愚かな騎士どもめ。罠にかかったのは貴様らだ」
闇の中から現れたのは、魔導師団の副団長ヴィクトール。彼は禁忌の魔導書を広げ、禍々しい魔法陣を展開する。
「この召喚術で、カナデの魔力を強制的に引き出し、騎士団ごと吹き飛ばしてくれるわ!」
魔法陣から黒い触手が伸び、カナデへと襲いかかる。
だが。
「……五月蝿いぞ、三下(さんした)」
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ただの盾ではない。その表面には、なぜかカナデの寝顔が彫刻されているという、狂気じみたこだわりの防衛魔法だ。
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「当たり前だ。カナデの安眠を妨げるものは、神であろうと私が斬る」
ヴォルフガングが抜刀する。その一振りで、ヴィクトールが展開した魔法陣は文字通り「凍結」し、粉々に砕け散った。
「ヒィッ! 怪物め!」
逃げようとするヴィクトールだが、ヴォルフガングは逃がさない。
「カナデを傷つけようとした罪、万死に値する。……だが、殺すのは後だ。今はそれ以上に、この小僧に分からせてやらねばならん」
ヴォルフガングは、呆然と立ち尽くすルキに視線を向けた。
「ルキと言ったな。貴様がカナデを慕う理由は知っている。……昔、行き倒れていた貴様に、こいつが自分の食料を分け与えたからだろう?」
「……! なぜそれを……」
「カナデに関することは、すべて調べ上げてある。……だが、甘い。恩返しなら金で済ませろ。愛なら、私の勝ちだ」
ヴォルフガングは、カナデの腰をさらに強く抱き寄せ、ルキに見せつけるようにその白い首筋に唇を寄せた。
「カナデのこの肌の柔らかさも、戸惑った時に赤くなる耳も、私だけが知っていればいい。貴様に分ける『隙』など、一寸たりとも存在しないのだ」
「だ、団長! 敵の前で何言ってるんですか恥ずかしい!」
赤面して暴れるカナデを、ヴォルフガングは陶酔したような瞳で見つめる。
「見ろ、ルキ。カナデがこんなに可愛いのは、私の腕の中にいるからだ。……貴様には一生、届かぬ光だ」
「…………っ、あんた、本当に最低で……最高に重い男ですね!!」
ルキは悔しそうに叫び、連れていた翼を持つ猫と共に、煙のように姿を消した。
「今回は退きます! でも、カナデさんがあなたの重さに耐えきれなくなった時、必ず僕が攫いに来ますから!」
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「ふむ。……邪魔者は消えたな」
ヴォルフガングは満足げに頷くと、腕の中のカナデをひょいと持ち直した。
「さあ、部屋に戻るぞ。中断していた『健康診断(添い寝)』の続きだ」
「もう朝になりますよ! 寝かせてください!」
「眠らせはしない。私の愛を、朝日が昇るまで囁き続けてやろう」
「拷問だーーー!!」
カナデの絶叫が響く中、魔導師団の脅威は去った。
しかし、カナデにとっての最大の試練――「団長の底なしの愛」は、ここからさらに深まっていくのだった。
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