【朗報】無能と蔑まれ追放された俺、実は「聖獣に愛されすぎる体質」でした ~最強の騎士団長が毎日モフモフを口実に抱きついてくるんだが?~

たら昆布

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15話

「――今日から、この騎士団に滞在することになりました。よろしくね、私のカナデ」

騎士団本部の広間。優雅に一礼したのは、隣国の王子としての正体を明かしたセシルだ。
彼は「平和の象徴」として、隣国の希少なもふもふ聖獣たちを引き連れ、正式な親善大使として乗り込んできたのだ。王命とあらば、流石のヴォルフガングも剣を抜くわけにはいかない……はずだった。

「誰が『私の』だ。そのふざけた口を今すぐ縫い合わせてやろうか」

ヴォルフガングの背後には、物理的な吹雪が吹き荒れている。
だが、セシルは余裕の笑みを崩さず、カナデの前に跪いてその手を取った。

「カナデ、見てごらんなさい。この子たちは我が国の誇る『銀雪狐』です。あなたのその清らかな魔力で、彼らを癒やしてくれませんか?」

「わあ……っ、銀雪狐! 幻の聖獣じゃないですか!」
カナデの瞳が、今日一番の輝きを放つ。ふわふわの尾が九本もある狐たちが、カナデの足元に群がり、クゥクゥと喉を鳴らして甘え始めた。

「よしよし、可愛いね……。ええと、ご飯は何を食べてるのかな?」
「カナデ、離れろと言っている。その狐どもは、皮を剥いで私のマントの裏地にしてくれる」

「団長! 職務放棄して猟師にならないでください!」
カナデが狐を抱き上げようとした瞬間、ヴォルフガングの独占欲が限界値を突破した。

このままでは、カナデの興味が「隣国の王子」と「新しいもふもふ」に持っていかれてしまう。
最強の騎士団長が出した結論は、驚くほど短絡的で、かつ強硬なものだった。

「……ゼクス。今すぐ全軍を広場に集結させろ。聖堂の司祭も呼べ」
「えっ、団長? 急にどうしたんですか」

「今この場で、カナデと私の『番(つがい)の儀』を執り行う」

広間にいた全員の動きが止まった。カナデは抱えていた狐を落としそうになり、セシルは持っていた扇子を床に落とした。

「……は、はいぃ!? つがいの儀って、それ、一生離れられない魔法契約の……結婚式じゃないですか!」

「そうだ。貴様を私の『妃』として公式に登録すれば、隣国の王子だろうと手出しはできん。……嫌とは言わせんぞ」

「言わせてくださいよ! 僕、まだ心の準備もスローライフの計画も終わってないんです!」

ヴォルフガングはカナデの抗議を完全に無視し、彼を軽々と抱き上げると、そのまま広場へと続く大階段を駆け上がった。
「離せーーー! 団長のバカーーー!!」

「バカでいい。貴様を失うくらいなら、私は暴君にでも変態にでもなってやる」
「もうなってますよ!!」

広場には、状況が飲み込めないまま整列させられた千人の騎士たち。
ヴォルフガングはカナデを抱いたまま、その中心で宣言した。

「聞け! このカナデ・イシュタルは、本日をもって我が魂の伴侶となった! 彼に触れる者は、私に対する宣戦布告と見なす!」

沸き起こる騎士たちの(半ば混乱した)歓声。
セシルは真っ青になりながら、「卑怯ですよ、ヴォルフガング閣下! そんなの無効だ!」と叫んでいるが、ヴォルフガングは勝ち誇った顔でカナデの首筋に深く、深く牙を立てるようにして『誓いの刻印』を刻み込んだ。

「……あ、あったかい……」
カナデの器が、ヴォルフガングのあまりに重く、巨大な「一生分の愛」を飲み込んでいく。

「これで、もう逃げられんぞ、カナデ。死が二人を分かつまで……いや、死んだ後も、貴様の魂は私のものだ」

「重すぎる……。でも、なんでだろう。……少しだけ、嬉しいって思っちゃう自分が一番悔しい……」

カナデが真っ赤な顔で俯くと、ヴォルフガングは満足げに彼を抱きしめ直した。
こうして、カナデの「平穏な雑用係」としての人生は終わり、帝国最強の男に「永遠に囚われる妃」としての新生活が、なし崩し的に幕を開けたのである。

一方、その光景を遠くから見ていた王族や魔導師団の残党は、あまりの「愛の重さ」に戦意を喪失し、「……あの二人には関わらないでおこう」と密かに誓い合うのだった。

(完……? いいえ、ここからが本当の『重すぎる溺愛生活』の始まりです!)
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