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16話
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「――さあ、カナデ。番の儀も済んだことだ。今夜こそ、真に一つになろうではないか」
騎士団長専用、防音・防振完備の寝室。ヴォルフガングは、もはやシャツのボタンを半分以上外した状態で、ベッドの端に腰掛けていた。その琥珀色の瞳は、空腹を極めた猛獣のようにギラついている。
「『一つになろう』じゃありません! 儀式は勢いだったじゃないですか! 僕はまだ、心のシャッターがガチガチに閉まってるんです!」
対するカナデは、ベッドの反対側で、ありったけの「もふもふ」を城壁のように積み上げていた。
白銀虎のライカ、夢見羊、翼を持つ猫、そしてどこからか借りてきた軍用犬たち。
「いいか、みんな。今夜、僕の貞操を守れるのは君たちだけだ。団長が近づいてきたら、全力で甘えて足止めしてくれ!」
『……カナデよ。我を肉壁にするとは、いい度胸だな』
ライカが呆れながらも、ヴォルフガングの進路を塞ぐように横たわる。
「邪魔だ、ライカ。どけ、家畜ども。……カナデ、そんな毛玉どもの後ろに隠れて、私の愛から逃げられると思っているのか?」
ヴォルフガングが一歩踏み出すと、部屋の温度が急激に上昇した。嫉妬と情熱が混ざり合い、氷の魔力が「熱」へと変換されているのだ。
「甘いぞ、カナデ。動物たちの相手は、専門家に任せてある」
バァン! と扉が開くと、そこには死んだ目をした副団長ゼクスが、最高級の肉とマタタビを抱えて立っていた。
「団長……。明日、私は有給をいただきますよ。……さあ、もふもふ共。あっちに極上の宴が用意してある。団長の邪魔をすると、明日の朝飯は氷漬けだぞ」
『……背に腹は代えられぬな』
『メェ~(命が大事)』
裏切りは早かった。ライカを筆頭に、もふもふ防衛線は一瞬で崩壊し、動物たちはゼクスと共に去っていった。
「ちょっ、みんな!? 恩知らずーーー!!」
「フッ……。これで、邪魔者は消えたな」
ヴォルフガングがベッドに這い上がってくる。カナデは必死に枕を盾にするが、そんなものは鋼の騎士団長の前では無力に等しい。
その時、窓の外から「待ちなさい!」と声がした。
セシルだ。彼は壁を伝い、窓枠にしがみつきながら、怪しげな瓶を差し出していた。
「カナデ、これを! 隣国に伝わる『番の契約を一時的に忘れる秘薬』です! これを飲めば、その重苦しい団長への愛着も……っ」
「……セシル。貴様、まだ生きていたのか」
ヴォルフガングの指先から放たれた極小の氷柱が、セシルの鼻先をかすめた。
「ヒィッ! また明日来ますーーー!」
セシルは真っ逆さまに庭園へと落ちていった。
「……さて。今度こそ、誰にも邪魔はさせん」
ヴォルフガングはカナデの両手首を優しく、しかし逃げ場のない力で押さえつけた。
至近距離で重なる吐息。カナデの体内の「器」が、ヴォルフガングの濃厚な魔力に反応して、勝手にトクンと跳ねる。
「……団長、あの。せめて、電気くらい消して……」
「消さん。貴様の隅々まで、この目に焼き付ける必要がある。……カナデ。貴様は、私が一生をかけて愛で、守り、そして壊さないように大切に愛で続ける……唯一無二の宝だ」
「……あ。……もう、そんな顔で言われたら、断れないじゃないですか……」
ヴォルフガングの不器用で、どこまでも真っ直ぐな、そして異常なほど重い愛。
カナデはついに、諦めたように目を閉じた。
翌朝。
昼過ぎにようやく目を覚ましたカナデは、自分の全身に、昨夜の「執着の跡(キスマーク)」が、まるで星座のように刻まれているのを見て、再び絶叫することになる。
そして隣には、世界で一番幸せそうな顔で寝息を立てる、最強の騎士団長がいた。
「……もう、スローライフなんて、単語すら忘れてやる……」
カナデの腰の痛みと共に、二人の「真の新婚生活」が、賑やかに幕を開けたのだった。
騎士団長専用、防音・防振完備の寝室。ヴォルフガングは、もはやシャツのボタンを半分以上外した状態で、ベッドの端に腰掛けていた。その琥珀色の瞳は、空腹を極めた猛獣のようにギラついている。
「『一つになろう』じゃありません! 儀式は勢いだったじゃないですか! 僕はまだ、心のシャッターがガチガチに閉まってるんです!」
対するカナデは、ベッドの反対側で、ありったけの「もふもふ」を城壁のように積み上げていた。
白銀虎のライカ、夢見羊、翼を持つ猫、そしてどこからか借りてきた軍用犬たち。
「いいか、みんな。今夜、僕の貞操を守れるのは君たちだけだ。団長が近づいてきたら、全力で甘えて足止めしてくれ!」
『……カナデよ。我を肉壁にするとは、いい度胸だな』
ライカが呆れながらも、ヴォルフガングの進路を塞ぐように横たわる。
「邪魔だ、ライカ。どけ、家畜ども。……カナデ、そんな毛玉どもの後ろに隠れて、私の愛から逃げられると思っているのか?」
ヴォルフガングが一歩踏み出すと、部屋の温度が急激に上昇した。嫉妬と情熱が混ざり合い、氷の魔力が「熱」へと変換されているのだ。
「甘いぞ、カナデ。動物たちの相手は、専門家に任せてある」
バァン! と扉が開くと、そこには死んだ目をした副団長ゼクスが、最高級の肉とマタタビを抱えて立っていた。
「団長……。明日、私は有給をいただきますよ。……さあ、もふもふ共。あっちに極上の宴が用意してある。団長の邪魔をすると、明日の朝飯は氷漬けだぞ」
『……背に腹は代えられぬな』
『メェ~(命が大事)』
裏切りは早かった。ライカを筆頭に、もふもふ防衛線は一瞬で崩壊し、動物たちはゼクスと共に去っていった。
「ちょっ、みんな!? 恩知らずーーー!!」
「フッ……。これで、邪魔者は消えたな」
ヴォルフガングがベッドに這い上がってくる。カナデは必死に枕を盾にするが、そんなものは鋼の騎士団長の前では無力に等しい。
その時、窓の外から「待ちなさい!」と声がした。
セシルだ。彼は壁を伝い、窓枠にしがみつきながら、怪しげな瓶を差し出していた。
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「……セシル。貴様、まだ生きていたのか」
ヴォルフガングの指先から放たれた極小の氷柱が、セシルの鼻先をかすめた。
「ヒィッ! また明日来ますーーー!」
セシルは真っ逆さまに庭園へと落ちていった。
「……さて。今度こそ、誰にも邪魔はさせん」
ヴォルフガングはカナデの両手首を優しく、しかし逃げ場のない力で押さえつけた。
至近距離で重なる吐息。カナデの体内の「器」が、ヴォルフガングの濃厚な魔力に反応して、勝手にトクンと跳ねる。
「……団長、あの。せめて、電気くらい消して……」
「消さん。貴様の隅々まで、この目に焼き付ける必要がある。……カナデ。貴様は、私が一生をかけて愛で、守り、そして壊さないように大切に愛で続ける……唯一無二の宝だ」
「……あ。……もう、そんな顔で言われたら、断れないじゃないですか……」
ヴォルフガングの不器用で、どこまでも真っ直ぐな、そして異常なほど重い愛。
カナデはついに、諦めたように目を閉じた。
翌朝。
昼過ぎにようやく目を覚ましたカナデは、自分の全身に、昨夜の「執着の跡(キスマーク)」が、まるで星座のように刻まれているのを見て、再び絶叫することになる。
そして隣には、世界で一番幸せそうな顔で寝息を立てる、最強の騎士団長がいた。
「……もう、スローライフなんて、単語すら忘れてやる……」
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