【朗報】無能と蔑まれ追放された俺、実は「聖獣に愛されすぎる体質」でした ~最強の騎士団長が毎日モフモフを口実に抱きついてくるんだが?~

たら昆布

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18話

魔導師団の跡地から帰還した数日後のこと。
騎士団の庭園が、突如として眩い黄金の光に包まれた。

「……なんだ、この神々しい気配は。もふもふ……なのか?」

カナデが目を細めると、そこには空を泳ぐ巨大な鯨のような、それでいて全身が白銀の毛に覆われた不思議な生き物が浮遊していた。
それは、この世界の魔力の源流とされる神獣『エテルナ』。

『器の少年よ。お前の清らかな魂と、底なしの器に感銘を受けた。お前はこの汚れた地上にいるべき存在ではない。我が背に乗り、天界で永遠の安寧を得るがよい』

エテルナの声は、直接脳内に響くほど慈愛に満ちていた。
天界――そこに行けば、もう誰かに利用されることも、争いに巻き込まれることもない。
カナデが呆然と一歩踏み出しそうになった、その時。

ドォォォォォォォン!!

空が割れるような衝撃と共に、エテルナとカナデの間に、巨大な黒い氷の剣が突き立てられた。

「…………誰の許可を得て、私のカナデをスカウトしている」

現れたのは、全身から「神をも殺す」という狂気的な殺気を放つヴォルフガングだった。
その瞳は琥珀色から完全な紅へと変色し、溢れ出す魔力が周囲の草木を一瞬で凍らせ、結晶化させていく。

「閣下! 相手は神獣ですよ! 手を出したら天罰が――!」
「天罰だと? 笑わせるな」

ヴォルフガングはエテルナを冷酷に見据え、剣を正眼に構えた。

「この男は、地獄の果てまで私が独占すると決めた。神であろうと、理であろうと、カナデを奪おうとするなら、その喉笛を食いちぎってでも引き摺り下ろす。……カナデ、そいつから離れろ。貴様が天界に行くというなら、私は天を叩き落として、そこを二人の寝室にしてやる」

「団長……発言がもう、不敬を通り越して魔王ですよ……!」

『愚かな人間よ。お前の愛はあまりに重く、淀んでいる。それは少年を縛る鎖に過ぎぬ』

「鎖で結構。その鎖を、私自身の魂で編み上げてやった。……カナデ、こいつの背中(もふもふ)がそんなに魅力か? 私の方が、貴様を何万倍も『可愛がって』やれるぞ」

ヴォルフガングは、エテルナの放つ神聖な光を、己の漆黒の執着魔力で塗り潰しながら突進した。
最強の騎士 vs 神の化身。
世界が震えるほどの激突。だが、ヴォルフガングの力は異常だった。

(……この人、僕を失うのが怖くて、自分の命を魔力に変換して燃やしてる……!?)

カナデは気づいた。ヴォルフガングの肌が、魔力の過負荷でパキパキとひび割れ始めていることに。
このままでは、神を追い払う前にヴォルフガングが壊れてしまう。

「やめて、ヴォルフガング様! 僕はどこにも行かない! 神様、ごめんなさい! 僕は天界のスローライフより、この重すぎる大型犬の隣がいいんです!」

カナデは、ヴォルフガングの背中に飛びつき、その首筋を全力で抱きしめた。
「……器」の力が最大に発動する。
ヴォルフガングの暴走する殺意と悲しみを、カナデがすべて自分の中に吸い込み、浄化していく。

「団長……落ち着いて。僕は、ここにいます。あなたの腕の中にしか、僕の居場所はないんですから」

「…………カナデ。……貴様……本当に、行かないんだな?」

「行きませんってば。こんな手のかかる人、置いていけるわけないじゃないですか」

ヴォルフガングの紅い瞳が徐々に元に戻り、彼は崩れ落ちるようにカナデを抱きしめた。
神獣エテルナは、二人の間に流れる「異常なほど濃密な絆」をしばらく見守った後、小さく鼻を鳴らした。

『……よかろう。これほどまでに重き愛の鎖、神の理をもってしても断ち切ることは叶わぬようだ。……少年よ、精々その男の重さに押し潰されぬよう、励むが良い』

エテルナは黄金の羽毛を一枚、カナデの頭上に落とし、空へと消えていった。

静まり返った庭園。
ヴォルフガングはカナデを離そうとせず、その服の中に顔を埋めて、子供のように何度もカナデの匂いを嗅いだ。

「……もう、心臓が止まるかと思ったぞ。……カナデ、罰だ。今夜は天界の神ですら赤面するような、濃厚な愛の教育を受けてもらう」

「神様関係ないし、教育って言えば何でも許されると思わないでください!!」

「許されなくていい。貴様に嫌われても、私は貴様を離さない」

カナデは、ため息をつきながらも、ヴォルフガングの頭を優しく撫でた。
神様すら呆れさせて追い返す、この世界で一番「重すぎる」居場所。
それが、カナデが選んだ究極のスロー(?)ライフの形だった。

しかし、エテルナが残した「羽毛」には、カナデの器をさらに進化させる驚くべき力が秘められていた。
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