役立たずと捨てられた魔力供給者は隣国の覇王に拾われて離してもらえません ~最強の騎士たちにも囲まれていつの間にか世界を救っていた件~

たら昆布

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20話

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 星灯祭を明日に控えた夜。
 帝都の街からは、準備を終えた人々の楽しげなざわめきが、風に乗って微かに城まで届いていた。
 トアは自分の部屋の窓辺で、夜空に瞬く星を見上げていた。

「明日、晴れるといいな……」
 隣で丸まっていたキリが「キュイ」と短く返事をする。

 そこへ、ノックの音と共に三人の男たちが姿を現した。
 グレンディル、イザーク、そしてサフィエル。
 彼らは示し合わせたわけではないだろうが、皆、手に小さな箱を携えていた。

「トア、起きていたか。明日の準備に、これを渡しておこうと思ってな」
 グレンディルが最初に一歩進み出ると、黒いベルベットの箱を開いた。
 中に収められていたのは、琥珀色の宝石が嵌め込まれた、細工の細かいブローチだった。

「これは、ルベリス皇帝家の加護を宿したものだ。お前がどこにいても、私が必ず見つけ出し、守るという誓いの印だ」
「陛下……。とっても綺麗。ありがとうございます」

 トアが感激していると、イザークが少し遠慮がちに前に出た。
「トア殿。私からは、この腕輪を。……装飾は地味ですが、私の魔力を練り込んであります。人混みで気分が悪くなった時、お守り代わりになるでしょう」

 差し出されたのは、革に銀のプレートを埋め込んだ、質実剛健ながらも温かみのある腕輪だった。トアの細い手首に、イザークが自らゆっくりと装着してやる。

「そして僕からは、これだよ」
 サフィエルが差し出したのは、透き通った絹の薄衣のような、不思議なストールだった。
「夜風で冷えないように、温度を一定に保つ魔法をかけておいた。……君のすみれ色の魔力によく似合う色を選んだんだ」

 三者三様の、トアを想う心がこもった贈りもの。
 トアは、自分の胸元、腕、そして肩に触れるそれらの温かさに、胸がいっぱいになった。

「あの……皆さん、ありがとうございます。僕、こんなにたくさんもらってもいいんでしょうか」
「当たり前だ。お前を飾るためなら、帝国の宝物庫を空にしても構わん」
 グレンディルの言葉に、サフィエルがクスクスと笑い、イザークが真面目な顔で頷く。

「……トア殿。明日は、私たちがあなたの目となり足となり、この世界の素晴らしいものをすべてお見せしましょう」
「ああ。君にとって、人生で一番幸せな夜にすることを約束するよ」

 トアは、三人の顔を順番に見つめ、それから一番の笑顔で頷いた。
「はい! 僕、皆さんと一緒なら、どんな景色もきっと大好きになります」

 窓の外では、明日放たれるのを待つ数千の灯籠が、出番を待つように静かに並んでいる。
 かつて孤独だった少年の夜は、今、三つの宝石と魔法の温もりに守られ、どこまでも優しく更けていった。
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