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11話
「……ユキを、救う方法だと言ったな。セルディク、吐け。出し惜しみはさせんぞ」
ヴォルフ陛下の声は、地を這うほどに低く、危うい均衡の上に立っていた。
腕の中の僕を、壊れ物を扱うように、けれど逃がさないように強く抱きしめている。
セルディク様は、月明かりを浴びながら、残酷なほど美しい笑みを深めた。
「方法は至って単純だよ、兄上。……ユキ君の体内に溜まりすぎた、その『神の魔力』を、物理的に外へ排出し続ければいい。結晶が実体化する前に、器を空にするんだ」
「排出……? 祈りや魔法でどうにかなるのか?」
「いいや、無理だね。この呪印は『情愛』に反応して魔力を精製する。ならば、逆もまた然りだ。……兄上の魔力を、ユキ君の身体が受け止めきれないほど注ぎ込み、中から強制的に循環させる。……つまり、ユキ君の意識が混濁し、身体が限界を迎えるまで、兄上が彼を『抱き潰す』しかない」
その言葉に、寝室の空気が凍りついた。
「……抱き潰す、だと……?」
「そう。一晩や二晩じゃない。結晶が消えるまで、文字通り、寝食を忘れて彼を愛し続けるんだ。……ただし、ユキ君の身体は、兄上のあまりにも強大すぎる魔力に耐えられず、本当に壊れてしまうかもしれない」
セルディク様は僕の顔を覗き込み、囁くように続けた。
「死ぬか、あるいは、一生……兄上の魔力なしでは呼吸すらできない、真の意味での『依存体』になるか。……どっちにしても、まともな人間には戻れないよ。どうする、ユキ君?」
「っ……、ぁ……」
僕は震える唇を噛みしめた。
ヴォルフ陛下に一生、飼われるだけの存在になる。
自由を奪われ、彼の熱なしでは生きていけない「器」として堕ちていく。
けれど――。
(陛下に捨てられるくらいなら……彼に抱かれて壊れる方が、ずっと幸せだ)
僕は、ヴォルフ陛下の軍服の胸元を、ぎゅっと握りしめた。
「……陛下。……お願いします。僕を、陛下の手で……壊して、ください……」
「ユキ……! 何を言っている。私が、お前をそんな目に遭わせられるわけが――」
「陛下がいなきゃ、僕はどっちにしろ教国の道具になるだけです。……それなら、大好きなあなたの色に染まって、壊れたい……っ!」
涙が溢れ、陛下の胸に吸い込まれていく。
ヴォルフ陛下は、苦悶に満ちた表情で僕を抱きしめた。
狂犬皇帝と呼ばれ、数多の敵を屠ってきたその手が、今、愛する一人の少年を守るために、震えている。
「……くそっ、……ああ……っ!!」
ヴォルフ陛下は咆哮にも似た呻き声を上げると、僕を乱暴にベッドへと押し倒した。
その碧眼は、もはや理性ではなく、僕を救うための「狂気」の色に染まっている。
「セルディク、失せろ! ……ここから先は、私の聖域だ。誰一人として近づかせるな!!」
「……健闘を祈るよ、兄上」
セルディク様が姿を消すと同時に、ヴォルフ陛下の手によって、寝室のすべての結界が閉じられた。
完全な密室。
逃げ場のない、熱い、熱い檻の中。
「ユキ……。……許せとは言わぬ。……だが、地獄の果てまで、私がお前を連れていく」
陛下の荒々しい指が、僕のシャツを、ズボンを、すべて引き裂いていく。
露わになった僕の肌は、恐怖と、それ以上の期待に震えていた。
背中の結晶が、ドクドクと脈打ち、熱を放っている。
「ぁ……あ、ぁぁっ……!」
ヴォルフ陛下の唇が、僕の鎖骨に、胸元に、下腹部に、痛いほどの熱を刻みつけていく。
それは愛撫などという生易しいものではなく、僕の中に溜まった毒を、自分の力で無理やり押し流そうとする「侵略」だった。
「ひ……っ、あ……陛下、陛下ぁっ!!」
彼が僕の奥深くに、自身のすべてを叩きつけた瞬間。
視界が火花を散らしたように白濁した。
身体の芯まで突き抜けるような、暴力的なほどの魔力の奔流。
結晶が悲鳴を上げ、僕の体内を駆け巡っていた教国の呪いが、陛下の緋色の魔力によって、一気に焼き払われていく。
「はぁ、っ、……ユキ、私を見ろ! ……私以外のすべてを忘れろ!」
「んんぅぅっ……! ぁ、あ、あ……あぁぁぁっ!!」
快楽なのか、痛みなのか、もう分からない。
ただ、ヴォルフ陛下の熱が、僕の細胞一つひとつを彼の支配下に置いていくのが分かる。
僕の魔力は、彼の激しい揺さぶりに呼応するように、汗と共に、涙と共に、身体の外へと溢れ出していった。
離宮の壁が、これまでで最も激しく、血のような紅に輝き続ける。
夜が明けようとしても、ヴォルフ陛下は僕を離さなかった。
何度も、何度も、僕が意識を失いかけても、彼は僕を呼び戻し、その身体を自分の一部にするように、愛し続けた。
こうして、二人の「壊れゆくための儀式」が始まった。
それが、真実の救済なのか、それとも、永遠の監禁への入り口なのかは、まだ誰も知らなかった――。
ヴォルフ陛下の声は、地を這うほどに低く、危うい均衡の上に立っていた。
腕の中の僕を、壊れ物を扱うように、けれど逃がさないように強く抱きしめている。
セルディク様は、月明かりを浴びながら、残酷なほど美しい笑みを深めた。
「方法は至って単純だよ、兄上。……ユキ君の体内に溜まりすぎた、その『神の魔力』を、物理的に外へ排出し続ければいい。結晶が実体化する前に、器を空にするんだ」
「排出……? 祈りや魔法でどうにかなるのか?」
「いいや、無理だね。この呪印は『情愛』に反応して魔力を精製する。ならば、逆もまた然りだ。……兄上の魔力を、ユキ君の身体が受け止めきれないほど注ぎ込み、中から強制的に循環させる。……つまり、ユキ君の意識が混濁し、身体が限界を迎えるまで、兄上が彼を『抱き潰す』しかない」
その言葉に、寝室の空気が凍りついた。
「……抱き潰す、だと……?」
「そう。一晩や二晩じゃない。結晶が消えるまで、文字通り、寝食を忘れて彼を愛し続けるんだ。……ただし、ユキ君の身体は、兄上のあまりにも強大すぎる魔力に耐えられず、本当に壊れてしまうかもしれない」
セルディク様は僕の顔を覗き込み、囁くように続けた。
「死ぬか、あるいは、一生……兄上の魔力なしでは呼吸すらできない、真の意味での『依存体』になるか。……どっちにしても、まともな人間には戻れないよ。どうする、ユキ君?」
「っ……、ぁ……」
僕は震える唇を噛みしめた。
ヴォルフ陛下に一生、飼われるだけの存在になる。
自由を奪われ、彼の熱なしでは生きていけない「器」として堕ちていく。
けれど――。
(陛下に捨てられるくらいなら……彼に抱かれて壊れる方が、ずっと幸せだ)
僕は、ヴォルフ陛下の軍服の胸元を、ぎゅっと握りしめた。
「……陛下。……お願いします。僕を、陛下の手で……壊して、ください……」
「ユキ……! 何を言っている。私が、お前をそんな目に遭わせられるわけが――」
「陛下がいなきゃ、僕はどっちにしろ教国の道具になるだけです。……それなら、大好きなあなたの色に染まって、壊れたい……っ!」
涙が溢れ、陛下の胸に吸い込まれていく。
ヴォルフ陛下は、苦悶に満ちた表情で僕を抱きしめた。
狂犬皇帝と呼ばれ、数多の敵を屠ってきたその手が、今、愛する一人の少年を守るために、震えている。
「……くそっ、……ああ……っ!!」
ヴォルフ陛下は咆哮にも似た呻き声を上げると、僕を乱暴にベッドへと押し倒した。
その碧眼は、もはや理性ではなく、僕を救うための「狂気」の色に染まっている。
「セルディク、失せろ! ……ここから先は、私の聖域だ。誰一人として近づかせるな!!」
「……健闘を祈るよ、兄上」
セルディク様が姿を消すと同時に、ヴォルフ陛下の手によって、寝室のすべての結界が閉じられた。
完全な密室。
逃げ場のない、熱い、熱い檻の中。
「ユキ……。……許せとは言わぬ。……だが、地獄の果てまで、私がお前を連れていく」
陛下の荒々しい指が、僕のシャツを、ズボンを、すべて引き裂いていく。
露わになった僕の肌は、恐怖と、それ以上の期待に震えていた。
背中の結晶が、ドクドクと脈打ち、熱を放っている。
「ぁ……あ、ぁぁっ……!」
ヴォルフ陛下の唇が、僕の鎖骨に、胸元に、下腹部に、痛いほどの熱を刻みつけていく。
それは愛撫などという生易しいものではなく、僕の中に溜まった毒を、自分の力で無理やり押し流そうとする「侵略」だった。
「ひ……っ、あ……陛下、陛下ぁっ!!」
彼が僕の奥深くに、自身のすべてを叩きつけた瞬間。
視界が火花を散らしたように白濁した。
身体の芯まで突き抜けるような、暴力的なほどの魔力の奔流。
結晶が悲鳴を上げ、僕の体内を駆け巡っていた教国の呪いが、陛下の緋色の魔力によって、一気に焼き払われていく。
「はぁ、っ、……ユキ、私を見ろ! ……私以外のすべてを忘れろ!」
「んんぅぅっ……! ぁ、あ、あ……あぁぁぁっ!!」
快楽なのか、痛みなのか、もう分からない。
ただ、ヴォルフ陛下の熱が、僕の細胞一つひとつを彼の支配下に置いていくのが分かる。
僕の魔力は、彼の激しい揺さぶりに呼応するように、汗と共に、涙と共に、身体の外へと溢れ出していった。
離宮の壁が、これまでで最も激しく、血のような紅に輝き続ける。
夜が明けようとしても、ヴォルフ陛下は僕を離さなかった。
何度も、何度も、僕が意識を失いかけても、彼は僕を呼び戻し、その身体を自分の一部にするように、愛し続けた。
こうして、二人の「壊れゆくための儀式」が始まった。
それが、真実の救済なのか、それとも、永遠の監禁への入り口なのかは、まだ誰も知らなかった――。
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