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16話
視察旅行から魔王城へ帰還した僕たちを待っていたのは、山のような書類と、そして――招かれざる客だった。
謁見の間には、禍々しい角と巨大な翼を持つ、いかにも「魔族」といった風貌の使者たちが並んでいた。その中央に座っているのは、燃えるような赤い髪を持つ、高慢そうな美貌の魔族女性だ。
彼女は、ゼノス様と同じく「古の魔族」の血を引く、隣国の公女だという。
「ゼノス陛下。いい加減、その弱々しい人間を弄ぶのはおやめなさい。純血の魔族である私こそが、貴方の隣に立つに相応しい」
公女――ベアトリクスは、僕を汚物でも見るかのような目で一瞥した。
ゼノス様は僕を自分の膝の上に乗せたまま、欠伸を噛み殺して冷淡に言い放つ。
「断る。俺の隣は、このエルヴィン以外には空いていない。貴様のような魔力だけが自慢の女など、一秒たりとも視界に入れたくない」
「……っ! 陛下、正気に戻ってください! そんな平民上がりの供給体、魔力を絞り出すだけの道具ではありませんか。私ならば、貴方にさらなる高みを見せられる。その男にできることが、私にできないはずがないわ!」
ベアトリクスの言葉に、僕の胸の奥がチリリと焼けるような感覚に陥った。
平民上がり、供給体、道具。
前の国で散々言われてきた言葉なのに、どうしてだろう。今は、ゼノス様の隣に僕以外の誰かが座ることを想像しただけで、心臓を直接握りつぶされたように痛い。
(……これって、僕、嫉妬してるの?)
自分の気持ちに気づいた瞬間、僕はゼノス様の胸板にギュッと縋り付いていた。
ゼノス様は僕の反応に一瞬目を見開いたが、すぐに口角を吊り上げ、僕の腰を抱く腕に力を込めた。
「ベアトリクス。……お前は『道具にできることは自分にもできる』と言ったな?」
「ええ、当然ですわ。魔力供給など、魔族の私の方が遥かに高純度で行えます!」
「……ならば見せてやろう。エルヴィンにしかできず、お前には天地がひっくり返っても不可能なことをな」
ゼノス様はそう言うと、大勢の使者たちの前で、僕の細い首筋を優しく、だが執拗に愛撫し始めた。
僕の体は、彼の指先が触れるだけで敏感に反応し、甘い吐息が漏れてしまう。
「ひゃ、ゼノス様……っ、みんなが見て……」
「見せてやるのだ。お前のこの『魔力の甘さ』は、愛を知らぬ者には決して再現できん。……エルヴィン、供給だ。たっぷりとな」
ゼノス様は僕の唇を奪い、深い、深い口づけを交わした。
ただの魔力の移動ではない。そこには、互いを想い合う熱情が、濁流となって流れ込んでいた。
僕がゼノス様の首に腕を回し、自ら舌を絡めて「おかわり」をねだると、ゼノス様の瞳は歓喜に震えた。
「ん……ぁ、ふ……っ、ハァ……ゼノス、様……」
僕がとろけた表情で彼の胸に顔を埋めると、部屋中に甘い、イチゴのような香りの魔力が立ち込めた。
それは、供給体が「愛されている」と感じた時にしか発しない、最高純度の魔力の薫りだ。
ベアトリクスは、その圧倒的な愛の質量に圧され、顔を真っ青にして後ずさった。
「……そんな。ただの供給体が、これほどの多幸感を伴う魔力を発するなんて……。ま、まさか陛下、本当にこの人間を……!?」
「そうだ。俺はこの男に狂っている。……下がれ、ベアトリクス。お前のような濁った魔力など、一滴たりとも俺の体内に入れるつもりはない」
ゼノス様が指を鳴らすと、使者たちは凄まじい風圧に押し出されるように、謁見の間から追い出されていった。
静かになった部屋で、僕はまだゼノス様の膝の上で、肩で息をしていた。
「……ゼノス様。僕、あんなに怒ったの、初めてです」
「フフッ……お前が俺に執着してくれるのは、実に気分がいい。エルヴィン、お前、さっき自分から舌を絡めてきたな?」
「……う。それは、あの人が生意気だったからで……っ」
「嫉妬か。可愛い奴め。……お前のその嫉妬心、俺の魔力ですべて快感に変えてやろう。さあ、今夜は一睡もさせんぞ」
「ひえぇぇっ! スカッとした代償が大きすぎる!!」
僕は再びゼノス様にお姫様抱っこをされ、猛スピードで寝室へと運ばれていくのだった。
嫉妬の後に待っていたのは、これまでで最も甘く、そして容赦のない「濃密供給」だった。
謁見の間には、禍々しい角と巨大な翼を持つ、いかにも「魔族」といった風貌の使者たちが並んでいた。その中央に座っているのは、燃えるような赤い髪を持つ、高慢そうな美貌の魔族女性だ。
彼女は、ゼノス様と同じく「古の魔族」の血を引く、隣国の公女だという。
「ゼノス陛下。いい加減、その弱々しい人間を弄ぶのはおやめなさい。純血の魔族である私こそが、貴方の隣に立つに相応しい」
公女――ベアトリクスは、僕を汚物でも見るかのような目で一瞥した。
ゼノス様は僕を自分の膝の上に乗せたまま、欠伸を噛み殺して冷淡に言い放つ。
「断る。俺の隣は、このエルヴィン以外には空いていない。貴様のような魔力だけが自慢の女など、一秒たりとも視界に入れたくない」
「……っ! 陛下、正気に戻ってください! そんな平民上がりの供給体、魔力を絞り出すだけの道具ではありませんか。私ならば、貴方にさらなる高みを見せられる。その男にできることが、私にできないはずがないわ!」
ベアトリクスの言葉に、僕の胸の奥がチリリと焼けるような感覚に陥った。
平民上がり、供給体、道具。
前の国で散々言われてきた言葉なのに、どうしてだろう。今は、ゼノス様の隣に僕以外の誰かが座ることを想像しただけで、心臓を直接握りつぶされたように痛い。
(……これって、僕、嫉妬してるの?)
自分の気持ちに気づいた瞬間、僕はゼノス様の胸板にギュッと縋り付いていた。
ゼノス様は僕の反応に一瞬目を見開いたが、すぐに口角を吊り上げ、僕の腰を抱く腕に力を込めた。
「ベアトリクス。……お前は『道具にできることは自分にもできる』と言ったな?」
「ええ、当然ですわ。魔力供給など、魔族の私の方が遥かに高純度で行えます!」
「……ならば見せてやろう。エルヴィンにしかできず、お前には天地がひっくり返っても不可能なことをな」
ゼノス様はそう言うと、大勢の使者たちの前で、僕の細い首筋を優しく、だが執拗に愛撫し始めた。
僕の体は、彼の指先が触れるだけで敏感に反応し、甘い吐息が漏れてしまう。
「ひゃ、ゼノス様……っ、みんなが見て……」
「見せてやるのだ。お前のこの『魔力の甘さ』は、愛を知らぬ者には決して再現できん。……エルヴィン、供給だ。たっぷりとな」
ゼノス様は僕の唇を奪い、深い、深い口づけを交わした。
ただの魔力の移動ではない。そこには、互いを想い合う熱情が、濁流となって流れ込んでいた。
僕がゼノス様の首に腕を回し、自ら舌を絡めて「おかわり」をねだると、ゼノス様の瞳は歓喜に震えた。
「ん……ぁ、ふ……っ、ハァ……ゼノス、様……」
僕がとろけた表情で彼の胸に顔を埋めると、部屋中に甘い、イチゴのような香りの魔力が立ち込めた。
それは、供給体が「愛されている」と感じた時にしか発しない、最高純度の魔力の薫りだ。
ベアトリクスは、その圧倒的な愛の質量に圧され、顔を真っ青にして後ずさった。
「……そんな。ただの供給体が、これほどの多幸感を伴う魔力を発するなんて……。ま、まさか陛下、本当にこの人間を……!?」
「そうだ。俺はこの男に狂っている。……下がれ、ベアトリクス。お前のような濁った魔力など、一滴たりとも俺の体内に入れるつもりはない」
ゼノス様が指を鳴らすと、使者たちは凄まじい風圧に押し出されるように、謁見の間から追い出されていった。
静かになった部屋で、僕はまだゼノス様の膝の上で、肩で息をしていた。
「……ゼノス様。僕、あんなに怒ったの、初めてです」
「フフッ……お前が俺に執着してくれるのは、実に気分がいい。エルヴィン、お前、さっき自分から舌を絡めてきたな?」
「……う。それは、あの人が生意気だったからで……っ」
「嫉妬か。可愛い奴め。……お前のその嫉妬心、俺の魔力ですべて快感に変えてやろう。さあ、今夜は一睡もさせんぞ」
「ひえぇぇっ! スカッとした代償が大きすぎる!!」
僕は再びゼノス様にお姫様抱っこをされ、猛スピードで寝室へと運ばれていくのだった。
嫉妬の後に待っていたのは、これまでで最も甘く、そして容赦のない「濃密供給」だった。
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