婚約破棄された魔力供給令息は絶倫魔王に愛し尽くされる~「お前の魔力、美味すぎて止まらない」と夜通し搾り取られています!~

たら昆布

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20話

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「……やはり、君は僕の『片割れ』だったんだね、エルヴィン」

 隔離されていたはずの少年・ニコが、音もなく寝室に現れた。
 ゼノス様が張った最強の結界を、まるで薄い紙でも破るように容易く通り抜けて。
 彼の周囲には、ゼノス様の黒い魔力とは対極にある、冷たくて無機質な「白銀の光」が渦巻いている。

 僕を抱き潰していたゼノス様が、弾かれたように顔を上げた。
 その瞳は、これまでに見たことがないほどの殺意と、本能的な警戒心で燃え上がっている。

「……神の紛い物が。その姿、その魔力の波長……。お前、あの国が禁忌の術で作った『人造の神子』か」

「当たり。ボクはね、君たちが住むこの汚れた世界を浄化するために作られたんだ。……でも、ボク一人じゃ出力が足りなくてね。だから、ボクの核となるはずだった『最高純度の供給体』を迎えに来たんだよ」

 ニコは、子供とは思えない冷酷な微笑みを浮かべ、僕に手を伸ばした。
「おいで、エルヴィン。君はそんな魔王の慰みものになるために生まれたんじゃない。ボクと一つになって、この世界を白銀の灰に変えよう?」

 その瞬間、僕の脳裏にかつての記憶がフラッシュバックした。
 なぜ僕だけが家族の中で異質な魔力を持っていたのか。なぜ、実の親から「道具」としてしか見られなかったのか。
 ……僕は、あの国が神の力を再現するために生み出し、失敗作として捨てられた「スペア」だったんだ。

「……断る」

 僕を抱くゼノス様の腕に、さらに力がこもった。
 彼の背中から、巨大な漆黒の翼が展開され、部屋中の空気が凍りつくほどのプレッシャーが放たれる。

「エルヴィンが何者であろうと、どこから来ようと、今のこいつは俺の伴侶だ。……お前のような、感情も持たぬ操り人形に、俺の宝を渡すと思うか?」

「……ボクには感情なんていらないよ。ただ、エルヴィンの中に眠る『神の欠片』が必要なだけだ。……強制的に回収させてもらうよ」

 ニコが指を振ると、無数の白銀の鎖が魔法陣から飛び出し、僕とゼノス様を襲った。
 ゼノス様は僕を庇いながら、黒い炎で鎖を焼き切っていく。だが、ニコの放つ光は、魔族の魔力を中和し、分解する特異な性質を持っていた。

「ぐっ……!? この、光……!」

 ゼノス様の腕から、力が抜けていくのがわかった。
 最強の魔王といえど、神の力を模した「天敵」には苦戦を強いられている。
 鎖がゼノス様の四肢を捕らえ、彼を僕から引き離そうと壁に叩きつけた。

「ゼノス様!!」

「……エルヴィン、逃げろ……っ! こいつの狙いはお前だ……!」

 血を吐きながらも、ゼノス様は僕を必死に守ろうとしている。
 いつもは強引で、僕を振り回してばかりの彼が、今はボロボロになりながら、僕に「逃げろ」と言っている。

(嫌だ……。そんなの、絶対に嫌だ!)

 僕の中で、何かが弾けた。
 悲しみでも、恐怖でもない。
 僕を愛し、僕に「居場所」をくれたこの男を、誰にも傷つけさせたくないという、強烈な――「愛」だ。

「……ニコ。君の言う『神の欠片』なんて、僕には必要ない」

 僕の体から、黄金色の光が溢れ出した。
 それはこれまでの「供給」で放っていた魔力とは比較にならない、太陽のように暖かく、すべてを包み込むような光。

「なっ……!? バカな、適合もしていないのに、自らの意志で魔力を臨界突破させたというのか!?」

 ニコが驚愕に目を見開く。
 僕は立ち上がり、倒れているゼノス様の手を握りしめた。

「ゼノス様。……僕の魔力を、全部使ってください。……僕たちを邪魔するものは、神様だって許さない!」

 僕がゼノス様に口づけをすると、僕の体内の魔力が、濁流となって彼の中へ流れ込んだ。
 僕の「愛」を燃料にした魔力は、ゼノス様の黒い魔力と混ざり合い、美しくも禍々しい「混沌の紫炎」へと昇華した。

「――おおおおおおぉぉぉッ!!」

 ゼノス様が咆哮すると共に、部屋を覆っていた白銀の鎖が一瞬で灰に帰した。
 圧倒的な魔力の波動が、ニコを吹き飛ばし、城の塔の一部を消し飛ばした。

「……くっ、あはは! 面白い、本当に面白いよ! 『供給体』が自分の意志で魔王を強化するなんて、計算外だ!」

 ニコは空中で体勢を立て直すと、不敵な笑みを残して消えていった。
「また来るよ、エルヴィン。君がボクのものになるまで、何度でもね」

 静寂が戻った部屋で、僕は魔力を使い果たし、崩れるように倒れ込んだ。
 それを、ゼノス様が優しく、壊れ物を扱うように抱きとめた。

「……エルヴィン。……お前という奴は、本当に……」

 ゼノス様の瞳からは、先ほどまでの狂気は消え、ただ深い愛しみと後悔、そして決意が滲んでいた。
 彼は僕の額に、静かな口づけを落とした。

「お前が俺を愛してくれるなら、俺は神にさえ牙を剥こう。……二度とお前を、悲しみの中に一人にさせはしない」

 エルヴィンの隠された過去と、動き出した「神子」の陰謀。
 二人の溺愛生活は、世界を巻き込む大きな戦いへと飲み込まれていく。
 だが、その腕の中にいる限り、僕は何も怖くない。

 こうして、魔王城での激動は幕を閉じた。
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