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12話
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魔塔の麓には、王国の魔導騎士団が勝ち誇ったような顔で集結していた。
禁忌の呪具「魔力喰らい」が発動した今、最強の魔導師もただの男に成り下がっているはず――。
彼らはその慢心のまま、塔の門を突き破ろうとしていた。
「エリオットを連れ戻せ! 奴の新たな『共鳴魔力』は、我が国の貴重な資源となる!」
先頭に立つルカが、欲望に歪んだ顔で叫ぶ。
だが、その言葉が響き渡った瞬間、塔の周囲の空気が「停止」した。
物理的な音さえも消え去った静寂の中、塔の最上階から、一条の漆黒の雷鳴が降り注ぐ。
「……我が小鳥の羽を毟ろうとした罪、万死に値する」
地鳴りのような低い声と共に、門がゆっくりと開く。
そこには、昏い魔力を全身から立ち昇らせたヴィクトールが、ぐったりとしたエリオットを左腕で抱きかかえたまま立っていた。
ヴィクトールの紅い瞳は、もはや人間のそれではない。
愛する者を呪いの毒に晒された怒りが、彼の理性を「魔王」へと変貌させていた。
「な、なぜだ……呪いは確実に命中したはず……ひっ!?」
ルカが言葉を失った。
ヴィクトールが指先をわずかに弾くと、ルカの足元の空間が爆発し、重力場が捻じ曲げられたのだ。
「あ、が……あぁぁぁっ!!」
ルカや騎士団員たちは、目に見えない巨大な力で地面に叩きつけられ、指一本動かすことも許されない。
骨が軋む音が周囲に響き渡る。
「エリオットを資源だと? ……お前たちのような汚物と同じ空気を吸わせたことさえ、私は後悔している」
ヴィクトールは一歩、また一歩と、地を這う騎士たちへ近づく。
彼が歩くたびに、周囲の草木は枯れ果て、石畳は粉々に砕け散った。
「ヴィクトール……様……もう、いい……です……」
腕の中で、エリオットが微かに目を開け、主の服の裾を掴んだ。
呪いの残滓で青ざめた顔を、ヴィクトールは痛ましげに見つめ、その額に深い接吻を落とす。
「……安心しろ。お前を傷つけた連中の悲鳴で、今夜の子守唄を奏でてやろう」
「ひ、ひぃぃっ! 助けてくれ! 悪かった、エリオット、助けて……!」
命乞いをするルカに対し、エリオットの瞳に慈悲はなかった。
かつて親友だと思っていた男は、最後まで自分を「モノ」としてしか見ていなかった。
「さようなら、ルカ。……あなたの声は、もう届きません」
エリオットが静かに告げると、ヴィクトールの指先から漆黒の炎が放たれた。
それは対象の命を奪うのではなく、彼らが誇りとしていた「魔力」と「地位」を永久に焼き尽くす、残酷な剥奪の炎。
絶叫が響き渡り、王国最強と謳われた騎士団は、一瞬にしてただの無力な群衆へと成り下がった。
彼らに残されたのは、二度と癒えぬ恐怖と、すべてを失った絶望だけだ。
「これでお前の過去は、完全に灰になった」
ヴィクトールは、エリオットをさらに強く抱きしめた。
背後に広がる惨状など目にも留めず、彼はただ、自分の腕の中で震える愛しい存在だけを見つめている。
「戻ろう、エリオット。お前の傷を癒すのは、私の役目だ。……一生をかけて、お前を甘やかしてやろう」
ヴィクトールは塔の中へと翻り、門は再び固く閉ざされた。
王国という光の世界を完全に決別し、二人は永遠に解けない愛の呪いへと、深く沈んでいくのだった。
禁忌の呪具「魔力喰らい」が発動した今、最強の魔導師もただの男に成り下がっているはず――。
彼らはその慢心のまま、塔の門を突き破ろうとしていた。
「エリオットを連れ戻せ! 奴の新たな『共鳴魔力』は、我が国の貴重な資源となる!」
先頭に立つルカが、欲望に歪んだ顔で叫ぶ。
だが、その言葉が響き渡った瞬間、塔の周囲の空気が「停止」した。
物理的な音さえも消え去った静寂の中、塔の最上階から、一条の漆黒の雷鳴が降り注ぐ。
「……我が小鳥の羽を毟ろうとした罪、万死に値する」
地鳴りのような低い声と共に、門がゆっくりと開く。
そこには、昏い魔力を全身から立ち昇らせたヴィクトールが、ぐったりとしたエリオットを左腕で抱きかかえたまま立っていた。
ヴィクトールの紅い瞳は、もはや人間のそれではない。
愛する者を呪いの毒に晒された怒りが、彼の理性を「魔王」へと変貌させていた。
「な、なぜだ……呪いは確実に命中したはず……ひっ!?」
ルカが言葉を失った。
ヴィクトールが指先をわずかに弾くと、ルカの足元の空間が爆発し、重力場が捻じ曲げられたのだ。
「あ、が……あぁぁぁっ!!」
ルカや騎士団員たちは、目に見えない巨大な力で地面に叩きつけられ、指一本動かすことも許されない。
骨が軋む音が周囲に響き渡る。
「エリオットを資源だと? ……お前たちのような汚物と同じ空気を吸わせたことさえ、私は後悔している」
ヴィクトールは一歩、また一歩と、地を這う騎士たちへ近づく。
彼が歩くたびに、周囲の草木は枯れ果て、石畳は粉々に砕け散った。
「ヴィクトール……様……もう、いい……です……」
腕の中で、エリオットが微かに目を開け、主の服の裾を掴んだ。
呪いの残滓で青ざめた顔を、ヴィクトールは痛ましげに見つめ、その額に深い接吻を落とす。
「……安心しろ。お前を傷つけた連中の悲鳴で、今夜の子守唄を奏でてやろう」
「ひ、ひぃぃっ! 助けてくれ! 悪かった、エリオット、助けて……!」
命乞いをするルカに対し、エリオットの瞳に慈悲はなかった。
かつて親友だと思っていた男は、最後まで自分を「モノ」としてしか見ていなかった。
「さようなら、ルカ。……あなたの声は、もう届きません」
エリオットが静かに告げると、ヴィクトールの指先から漆黒の炎が放たれた。
それは対象の命を奪うのではなく、彼らが誇りとしていた「魔力」と「地位」を永久に焼き尽くす、残酷な剥奪の炎。
絶叫が響き渡り、王国最強と謳われた騎士団は、一瞬にしてただの無力な群衆へと成り下がった。
彼らに残されたのは、二度と癒えぬ恐怖と、すべてを失った絶望だけだ。
「これでお前の過去は、完全に灰になった」
ヴィクトールは、エリオットをさらに強く抱きしめた。
背後に広がる惨状など目にも留めず、彼はただ、自分の腕の中で震える愛しい存在だけを見つめている。
「戻ろう、エリオット。お前の傷を癒すのは、私の役目だ。……一生をかけて、お前を甘やかしてやろう」
ヴィクトールは塔の中へと翻り、門は再び固く閉ざされた。
王国という光の世界を完全に決別し、二人は永遠に解けない愛の呪いへと、深く沈んでいくのだった。
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