魔力を失い追放された聖騎士ですが、大陸最強の魔導師に拾われて極上に甘く「再教育」されています

たら昆布

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19話

災厄が去った魔塔は、かつてないほどの穏やかな光に満たされていた。
だが、その主であるヴィクトールの過保護ぶりは、穏やかさとは程遠い、異常なまでの熱を帯びていた。


「……ヴィクトール様、あのお花、少しだけお水を……」


「座っていろ、エリオット。私が行く」


「でも、あのお茶のお代わりを……」


「指一本動かすな。私が淹れる」


エリオットは、ふかふかのクッションに埋もれたまま、苦笑いするしかなかった。
大戦の後、ヴィクトールはエリオットを「世界の宝」か何かのように扱い、一歩歩くことさえ制限しようとしていた。


「ヴィクトール様、私はもう元気ですよ。この子も、あんなに元気に魔力を放っていますし」


エリオットが自身の少しふっくらとした腹部に手を添えると、ヴィクトールは即座に彼の足元に跪き、その膨らみに耳を寄せた。
大陸最強の魔導師が、一人の元騎士の前に跪くその姿は、あまりに献身的で、官能的ですらあった。


「……聞こえる。お前の鼓動と、この子の輝きが。エリオット、私は今、かつてないほどの恐怖と幸福を同時に味わっている」


ヴィクトールの大きな手が、エリオットの手の上に重なる。
その紅い瞳には、エリオットへの狂おしいほどの情愛が揺れていた。


「お前が私を守るために光を放った瞬間、心臓が止まるかと思った。お前を失うくらいなら、世界など滅びればいいと本気で思ったのだ」


「ヴィクトール様……」


「お前はもう、私の所有物などという言葉では足りない。……お前は私の魂であり、光だ。これからは、私の全生涯をかけて、お前を甘やかし、崇め、守り抜くと誓おう」


ヴィクトールはエリオットの手の甲に、誓いの口づけを何度も落とした。
その熱い唇が触れるたび、エリオットの心はとろけるように甘い多幸感に満たされていく。


かつては、誰かに必要とされるために、傷だらけになって戦うしかなかった。
だが今は、ただここにいて、愛する人の腕の中にいるだけで、すべてが許されている。


「……私も、あなたを愛しています。ヴィクトール様。あなたが私を拾ってくれたあの日、私の本当の人生が始まったんです」


エリオットは主の髪を愛おしげになで、自ら唇を重ねた。
首元の銀の首輪が、二人の愛に共鳴して、柔らかく、温かい光を放ち続ける。


魔塔の外では、エリオットを捨てた王国が、守護を失い衰退の一途を辿っていた。
だが、この温かな部屋にいる二人にとって、それはもう、遠い異国の出来事のようにどうでもいいことだった。


二人の間に流れるのは、永遠に続くかのような甘美な時間と、まもなく誕生する新しい命への希望だけだった。
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