異世界転生した俺のフェロモンが「全種族共通の特効薬」だった件 ~最強の獣人たちに囲まれて、毎日代わりばんこに可愛がられています~

たら昆布

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28話

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「兄ちゃん、今日は二人だけで見てほしいものがあるんだ。……あの人たちには、内緒だよ?」

ヨシュアがハルの服の裾をぎゅっと掴み、潤んだ瞳で見上げる。ハルはその可愛らしいおねだりに抗えず、ギルバートたちが騎士団の会議に出席している隙に、王立アカデミーの最奥にある「月の温室」へと足を運んだ。

そこは神聖種の魔力を持つ者しか入れない、白銀の霧に包まれた禁足地。ヨシュアは、自分を救ってくれたハルと二人きりの思い出を作り、守護者たちに「差」をつけたかったのだ。

温室の中央には、水晶のように透き通った巨大な樹木が、静かに眠りについていた。

「これは『月光樹』。この国の守護樹だけど、もう何百年も花を咲かせていないんだ。……でも、兄ちゃんなら、この子を目覚めさせられる気がして」

「……わぁ、綺麗。でも、なんだか喉が渇いてるみたいだね」

ハルが吸い寄せられるように、その冷たい幹にそっと両手を触れた。
その瞬間、ハルの中から無意識に、最大級の「癒やし香」が溢れ出した。ヨシュアの特製茶によって活性化していた魔力が、枯死寸前の古樹へと一気に注ぎ込まれたのだ。

ズズズズッ……!!

「えっ……きゃあっ!?」

温室全体が、悲鳴を上げるように激しく震動した。
ハルのあまりに強大で清らかなエネルギーを吸収した月光樹が、数千年の眠りから暴走気味に覚醒したのだ。樹木は「もっとこの光が欲しい」と飢えた獣のように、白銀のツタを触手のように伸ばし、ハルの体を天高く持ち上げ、繭のように包み込もうとする。

「兄ちゃんを放せ! この……出来損ないの古木がっ!」

ヨシュアが顔色を変え、額の角を輝かせて雷撃を放つ。だが、覚醒した神話級の植物には、まだ未熟な麒麟の魔力では歯が立たない。

「ハル……っ! 下がっていろ、ヨシュア!」

その時、温室の強化ガラスが爆音と共に粉砕され、黄金の閃光が飛び込んできた。
会議を途中で放り出してきたギルバートだ。さらに影からは殺気を帯びたジークが、壁を破壊してタイガが、怒濤の勢いで駆けつける。

「俺の番(つがい)に、枝一本触れさせるとでも思ったか……!」

ギルバートが咆哮と共に大剣を振り抜き、ハルを拘束していたツタを一瞬で微塵切りにする。タイガは剥き出しの腕で太い幹を強引に押さえ込み、その怪力で樹木の動きを封じ込めた。

「ジーク、ハル様を確保しろ! 傷一つ付けるな!」

「承知。……お覚悟を、愚かなる古樹よ」
ジークの影が巨大な鎌となり、ハルを飲み込もうとした残りのツタをすべて刈り取った。

宙に放り出されたハルを、ギルバートが空中でガッシリと抱きとめる。その逞しい腕の中に収まった瞬間、ハルは安堵から小さく震えた。

「……みんな……ごめんなさい、勝手なことして……」

「……説教は後だ。今は、お前の無事を確かめさせてくれ」

ギルバートはハルの首筋に深く鼻を寄せ、その香りが無事であることを確認するように強く抱きしめた。

一方で、ハルを危険にさらしてしまったヨシュアは、地面に膝をつき、悔しさと情けなさで拳を震わせていた。

「……ボクが、一番近くにいたのに。……ボクが、守らなきゃいけなかったのに……っ」

「小僧。独占欲を持つのは勝手だが、守る力のない独占はただの自惚れだ」

ジークの冷徹な言葉がヨシュアに突き刺さる。
少年麒麟の心に、守護者たちへの対抗心ではなく、「対等になりたい」という真の強さへの渇望が芽生えた瞬間だった。
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