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30話
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「フェ、フェンくん……っ、今の音、何かな!? 何かいたよね!?」
真っ暗な森の中、ハルは半泣きでフェンの腕にしがみついていた。
風に揺れる木の葉の音さえも、この世界の魔物の唸り声に聞こえてしまう。
「……ハル様。ただの風です。落ち着いてください」
フェンは淡々とした口調ながらも、その銀色の尾は、ハルの怯える様子に反応してそわそわと揺れていた。
いつもは「影」として一歩下がっている彼だが、今夜は「ハルを支える」という大義名分のもと、その華奢な肩をがっしりと抱き寄せている。
「だって、急に光る虫が飛んだり、カサカサって……ひゃっ!」
足元の小枝が折れた音に驚き、ハルがフェンの胸に飛び込む。
厚い胸板から伝わる、獣人特有の力強く速い鼓動。ハルは恥ずかしさよりも恐怖が勝り、フェンのシャツをぎゅっと握りしめた。
「…………」
無言になったフェンの体温が、じわりと上がる。
鼻腔をくすぐる、恐怖で少し濃くなったハルの「癒やし香」。
それはフェンの本能を「守りたい」という欲求でいっぱいにさせた。
「……怖いのなら、無理に歩かなくていいです」
「えっ?」
次の瞬間、視界がふわりと浮き上がった。
フェンがハルの膝裏に腕を通し、軽々と「お姫様抱っこ」で持ち上げたのだ。
「あ、あの、フェンくん!? 重いし、恥ずかしいよ!」
「魔物に足を掴まれたら危ないですから。……俺の腕の中にいれば、指一本触れさせません」
フェンは真面目な顔でそう言い放つが、その耳は真っ赤に染まっている。
ハルは観念して、フェンの首に腕を回した。
密着した体から伝わる安心感。銀狼の毛並みのような銀髪がハルの頬を掠め、ハーブのような爽やかなフェンの体臭が、ハルのパニックを優しく鎮めていく。
「……フェンくんの腕、すごくあったかいね」
「……っ。……黙って、捕まっていてください」
フェンはハルの顔を見ないように顔を逸らしたが、その腕の抱きしめる力は、先ほどよりも少しだけ強くなった。
結局、目的地である祠に着く頃には、ハルはフェンの胸の中で安心しきってウトウトし始めていた。
祠の影から「驚かせてハルを抱きしめる作戦」を練っていたギルバートたちが、既にフェンの腕の中で幸せそうに眠るハルを見て、歯噛みしながら悔しがったのは言うまでもない。
真っ暗な森の中、ハルは半泣きでフェンの腕にしがみついていた。
風に揺れる木の葉の音さえも、この世界の魔物の唸り声に聞こえてしまう。
「……ハル様。ただの風です。落ち着いてください」
フェンは淡々とした口調ながらも、その銀色の尾は、ハルの怯える様子に反応してそわそわと揺れていた。
いつもは「影」として一歩下がっている彼だが、今夜は「ハルを支える」という大義名分のもと、その華奢な肩をがっしりと抱き寄せている。
「だって、急に光る虫が飛んだり、カサカサって……ひゃっ!」
足元の小枝が折れた音に驚き、ハルがフェンの胸に飛び込む。
厚い胸板から伝わる、獣人特有の力強く速い鼓動。ハルは恥ずかしさよりも恐怖が勝り、フェンのシャツをぎゅっと握りしめた。
「…………」
無言になったフェンの体温が、じわりと上がる。
鼻腔をくすぐる、恐怖で少し濃くなったハルの「癒やし香」。
それはフェンの本能を「守りたい」という欲求でいっぱいにさせた。
「……怖いのなら、無理に歩かなくていいです」
「えっ?」
次の瞬間、視界がふわりと浮き上がった。
フェンがハルの膝裏に腕を通し、軽々と「お姫様抱っこ」で持ち上げたのだ。
「あ、あの、フェンくん!? 重いし、恥ずかしいよ!」
「魔物に足を掴まれたら危ないですから。……俺の腕の中にいれば、指一本触れさせません」
フェンは真面目な顔でそう言い放つが、その耳は真っ赤に染まっている。
ハルは観念して、フェンの首に腕を回した。
密着した体から伝わる安心感。銀狼の毛並みのような銀髪がハルの頬を掠め、ハーブのような爽やかなフェンの体臭が、ハルのパニックを優しく鎮めていく。
「……フェンくんの腕、すごくあったかいね」
「……っ。……黙って、捕まっていてください」
フェンはハルの顔を見ないように顔を逸らしたが、その腕の抱きしめる力は、先ほどよりも少しだけ強くなった。
結局、目的地である祠に着く頃には、ハルはフェンの胸の中で安心しきってウトウトし始めていた。
祠の影から「驚かせてハルを抱きしめる作戦」を練っていたギルバートたちが、既にフェンの腕の中で幸せそうに眠るハルを見て、歯噛みしながら悔しがったのは言うまでもない。
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