不遇な転生聖子は冷酷皇帝に「君のご飯が一番」と胃袋から愛し抜かれる 〜自炊スキルで無自覚に無双して最強の番に指名されました〜

たら昆布

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15話

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丸一日、ヴァルさんの甲斐甲斐しい(そして少し過保護な)看病のおかげで、僕の熱はすっかり下がった。

「もう大丈夫ですよ、ヴァルさん。キッチンに立つのも問題ありません」
「ならん。あと三日は安静にしていろと言ったはずだ」

ヴァルさんは腕を組み、キッチンの入り口で門番のように立ちはだかっている。
けれど、彼が手に持っているのは、僕が頼んでおいた『新鮮な卵』と『牛乳』の入ったバスケットだ。

「どうしても作りたいものがあるんです。ヴァルさんにも、お礼をしたいですし」
「お礼……?」
「看病、ずっと付きっきりでしてくれたでしょう? 嬉しかったんです」

僕が素直に笑いかけると、ヴァルさんはバツが悪そうに視線を逸らした。
結局、彼を助手として使うという条件で、僕はキッチンに立つ許可を得た。

「今日は、熱が出た後でも食べやすい『プリン』を作ります」

僕は小鍋に砂糖と少しの水を入れ、火にかけた。
じっくりと加熱していくと、甘い香りが立ち上がり、液体が美しい褐色へと変わる。キャラメルソースだ。

「ヴァルさんは、卵を割ってください。あ、殻が入らないように慎重に」
「……任せろ」

ヴァルさんは真剣な顔で卵を割り、ボウルに落としていく。
次に牛乳と砂糖を混ぜ、温めてから卵液と合わせる。それを丁寧に濾して、型に流し込んだ。

「あとは、お湯を張った鍋で蒸すだけです」

しばらくして、甘く芳醇な香りが離宮いっぱいに広がった。
魔法で冷やし固めたプリンを、お皿の上にひっくり返す。
ぷるん、と揺れる黄金色の塊。その頂上から、琥珀色のキャラメルソースがとろりと流れ落ちる。

「……綺麗だな」
「味も最高ですよ。はい、どうぞ」

僕はスプーンですくい、ヴァルさんの口元へ運んだ。
彼は少し躊躇した後、ぱくりとそれを咥えた。

「…………っ」

彼の瞳が、驚きと感動に揺れる。
舌の上でとろける滑らかな食感と、キャラメルのほろ苦い甘さ。
ヴァルさんはゆっくりと味わい、そして深く溜息をついた。

「エリアン。……これは、罪深い食べ物だ」
「あはは、気に入ってもらえて良かったです」
「……君の看病なら、毎日でもしたいと思ってしまった。この味が待っているのなら」

冗談めかした口調だったけれど、その瞳には熱い色が宿っている。
ヴァルさんは僕の指先に付いたソースを、逃がさないようにそっと自分の唇で拭った。

「……っ」
「熱が下がって、良かった。……本当に、心配したのだ」

至近距離で見つめ合う。
プリンの甘い残り香が漂う中、僕たちの間に流れる空気は、これまでよりもずっと濃密で、逃げ場のないほどに甘やかだった。
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