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8話
湊の強引な「引っ越し」から数日。今日は湊のマンションで、彼が担当した新プロジェクトの成功を祝う二人だけの打ち上げをしていた。
遥の家も湊の色に染まりつつあったが、やはり本拠地であるこのタワーマンションは、湊の重厚な独占欲をより色濃く映し出している。
「……湊、もうこんな時間。明日も早いし、そろそろ帰らなきゃ」
遥が時計を気にすると、ソファの隣に座っていた湊が、手に持っていたクリスタルグラスを静かにテーブルへ置いた。
「……外は酷い雨だ。タクシーも捕まらないだろう」
「え? でも、地下鉄ならまだ……」
「……終わったよ。終電は三分前に出た」
湊は淡々と言い放ったが、その瞳には計画通りだと言わんばかりの冷徹な光が宿っている。
「……今夜はここに泊まれ。代えのパジャマは用意してある」
逃げ道を完全に塞がれた遥は、高鳴る鼓動を抑えきれず、促されるままに浴室を借りた。
シャワーを浴び、湊から渡されたシルクのパジャマに袖を通す。湊のサイズなのか、遥の体には少し大きく、襟ぐりから鎖骨が覗いてしまう。
脱衣所を出ると、リビングの照明は落とされ、間接照明の柔らかな光だけが部屋を照らしていた。
「……洗面所にタオルを置いておいた。使え」
キッチンカウンターでワインを飲んでいた湊が、振り返る。その視線が、遥の露わになった首筋や手首をねっとりと這った。
「あ、ありがとう……。湊も、もう寝る?」
「……そうだな」
湊はグラスを置くと、音もなく遥の背後に立ち、濡れた髪に指を通した。
「ひゃ……っ」
「……冷えているな。風邪を引かれたら困る」
湊の手のひらが、遥のうなじを包み込む。熱い。氷の貴公子と呼ばれているはずなのに、触れられる場所が火傷しそうに熱を帯びていく。
そのまま、湊は遥を抱きかかえるようにして、ベッドルームへと誘った。
「湊、あの、僕……ソファで寝るよ?」
「……俺がお前を、そんな場所に寝かせると思うか?」
湊は遥を広いベッドの上に押し倒し、覆い被さるようにして両腕で囲い込んだ。
「……遥。十年間、俺がどれだけの想いで、お前を隣に置いてきたか……想像したことはあるか」
湊の低い声が、至近距離で鼓膜を震わせる。
「……お前が他の男と笑うたび、その喉を潰してしまいたかった。誰の手にも触れさせたくなくて、俺だけの部屋に閉じ込めてしまいたかった」
「湊……」
告げられた独占欲の正体は、あまりに重く、昏い。
けれど、その歪んだ情熱にこそ、遥は救いを感じていた。自分だけが、この完璧な男の狂気を受け止められるのだという悦び。
湊は遥の髪を指で掬い、祈るように口づけを落とした。
「……もう、限界なんだ。遥、お前を俺の色だけで塗り潰させてくれ」
眼鏡を外した湊の瞳が、熱い欲望を剥き出しにして遥を射抜く。
わずかな体温の変化も見逃さないような至近距離で、二人の吐息が重なり合った。
遥の家も湊の色に染まりつつあったが、やはり本拠地であるこのタワーマンションは、湊の重厚な独占欲をより色濃く映し出している。
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そのまま、湊は遥を抱きかかえるようにして、ベッドルームへと誘った。
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けれど、その歪んだ情熱にこそ、遥は救いを感じていた。自分だけが、この完璧な男の狂気を受け止められるのだという悦び。
湊は遥の髪を指で掬い、祈るように口づけを落とした。
「……もう、限界なんだ。遥、お前を俺の色だけで塗り潰させてくれ」
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