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9話
「……湊、くん……」
名前を呼ぶ声が、自分でも驚くほど甘く震えた。
湊の両腕に閉じ込められた視界の中で、彼の整った顔がゆっくりと降りてくる。
これまで何度も見てきたはずの「氷の貴公子」の瞳。けれど、今の彼の瞳には、知的で冷静な光など微塵も残っていなかった。そこにあるのは、獲物を逃さない野獣のような、昏く、深い渇望だけだ。
湊の唇が、遥の額、鼻先、そして躊躇うように震える唇へと重なる。
「……んっ」
触れるだけのキスでは終わらなかった。湊の舌が、強引に、けれど愛惜を込めて遥の口内を侵食していく。
逃げ場を失った遥の指先が、湊の着ているシャツの胸元をぎゅっと掴んだ。
「……遥。お前、心臓の音がうるさいぞ」
唇が離れた瞬間、湊が意地悪く、けれどひどく熱っぽい声で囁く。
「それは……湊のせいで……」
「……俺のせいか。なら、もっと自覚させてやる」
湊の手が、遥のパジャマのボタンを上から順に外していく。
冷たい空気に肌が晒されるたび、遥の背筋に快感と恐怖が混じり合った戦慄が走る。湊の視線は、露わになった遥の白い肌を、隅々まで自らの領土として検分するように這った。
「……綺麗だ、遥。誰にも見せたくない。……このまま、俺の中に溶かしてしまいたい」
湊の指先が、遥の鎖骨を辿り、そのまま心臓の上を強く押さえつけた。
「ここも、お前の声も、流れる血の一滴まで……俺以外の誰にも、一瞬だって渡さない」
それは愛というにはあまりに重く、執着というにはあまりに純粋な言葉だった。
湊は遥の首筋に深く顔を埋め、跡が残るほど強く吸い上げる。
「い、痛い……湊、そこ……」
「……残らなければ意味がない。お前が鏡を見るたびに、俺を思い出すように。俺がいない時間も、お前が俺の所有物であることを忘れないように」
湊の言葉が、遥の脳内を甘い麻痺で満たしていく。
十年間、ただ「隣にいたい」と願ってきた。けれど、湊が求めていたのは、そんな生温い関係ではなかったのだ。
彼は遥を、自分という巨大な孤独を埋めるための「唯一」として、魂ごと喰らい尽くそうとしている。
遥は震える腕を湊の背中に回し、その広い背中を強く抱きしめ返した。
「……いいよ。湊なら……湊にだったら、壊されてもいい」
その言葉が最後の一線を越えさせた。
湊の理性が完全に瓦解する音が、静かな寝室に響いた気がした。
氷の仮面を脱ぎ捨てた貴公子の、激しく、独占欲に満ちた長い夜が始まろうとしていた。
名前を呼ぶ声が、自分でも驚くほど甘く震えた。
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「……んっ」
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「……遥。お前、心臓の音がうるさいぞ」
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「それは……湊のせいで……」
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それは愛というにはあまりに重く、執着というにはあまりに純粋な言葉だった。
湊は遥の首筋に深く顔を埋め、跡が残るほど強く吸い上げる。
「い、痛い……湊、そこ……」
「……残らなければ意味がない。お前が鏡を見るたびに、俺を思い出すように。俺がいない時間も、お前が俺の所有物であることを忘れないように」
湊の言葉が、遥の脳内を甘い麻痺で満たしていく。
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彼は遥を、自分という巨大な孤独を埋めるための「唯一」として、魂ごと喰らい尽くそうとしている。
遥は震える腕を湊の背中に回し、その広い背中を強く抱きしめ返した。
「……いいよ。湊なら……湊にだったら、壊されてもいい」
その言葉が最後の一線を越えさせた。
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