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17話
湊の異常な執着は、ついに彼の完璧なキャリアに影を落とし始めた。
「……湊、また電話だよ。会社の人じゃないの?」
リビングのソファで湊の腕に抱かれながら、遥はテーブルの上で鳴り続けるスマートフォンを指差した。画面には、湊の父親であり、グループの会長でもある人物の名前が表示されている。
湊はそれを一瞥もせず、遥の髪に顔を埋めて深く息を吸い込んだ。
「……放っておけ。お前以外の声を聞く必要はない」
「でも、今日は大事な役員会議があるって言ってたじゃないか。このままじゃ、湊の立場が……」
「……立場など、お前をこの腕に留めておく対価だと思えば安いものだ」
湊の声には、かつての冷徹な「貴公子」の面影はなかった。あるのは、ただ一人の男を失うことを極端に恐れる、狂おしいほどの執念だけだ。
湊は会議を欠席し、仕事の連絡もすべて遮断して、遥を自室に留め置くことを選んでいた。
その日の午後、ついに湊のマンションのチャイムが激しく鳴った。湊の秘書と、実家の使いの者たちが強引に訪ねてきたのだ。
「一ノ瀬専務! 開けてください! このような醜聞、会長が黙っていませんよ!」
ドアの向こうから聞こえる怒号。遥は恐怖で肩を震わせたが、湊は冷笑を浮かべ、遥の耳を塞ぐように両手で包み込んだ。
「……醜聞か。俺にとっては、お前を外に出すことの方がよほど耐えがたい醜悪だ」
湊はそのまま、遥を寝室へと連れて行き、ベッドに押し倒した。
「湊、もうやめて……。みんな、湊のことを心配してるんだよ。このままじゃ、本当に壊れちゃう……」
「……壊れてもいい。お前と一緒に地獄に落ちるなら、それは俺にとっての救いだ」
湊の口づけは、血の味がするほど激しかった。
地位も、名誉も、積み上げてきた信頼も。湊はそれらを、遥という名の「檻」を補強するための資材として、次々と投げ捨てていく。
遥は、自分を抱きしめる湊の腕が、悲鳴を上げているように感じた。
氷の貴公子と呼ばれた男のプライドが、一枚、また一枚と剥がれ落ちていく。
その無様なまでの愛の深さに、遥は涙を流しながら、湊の首に腕を回した。
「……いいよ、湊。全部捨てて、僕だけを見て」
二人の世界は、周囲の喧騒を置き去りにして、深く、暗い場所へと堕ちていった。
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「……放っておけ。お前以外の声を聞く必要はない」
「でも、今日は大事な役員会議があるって言ってたじゃないか。このままじゃ、湊の立場が……」
「……立場など、お前をこの腕に留めておく対価だと思えば安いものだ」
湊の声には、かつての冷徹な「貴公子」の面影はなかった。あるのは、ただ一人の男を失うことを極端に恐れる、狂おしいほどの執念だけだ。
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「……壊れてもいい。お前と一緒に地獄に落ちるなら、それは俺にとっての救いだ」
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地位も、名誉も、積み上げてきた信頼も。湊はそれらを、遥という名の「檻」を補強するための資材として、次々と投げ捨てていく。
遥は、自分を抱きしめる湊の腕が、悲鳴を上げているように感じた。
氷の貴公子と呼ばれた男のプライドが、一枚、また一枚と剥がれ落ちていく。
その無様なまでの愛の深さに、遥は涙を流しながら、湊の首に腕を回した。
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