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5話
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お弁当を渡した翌日、レオは開店と同時に店にやってきた。
今日はオフなのか、いつもよりリラックスした表情をしている。
返されたお弁当箱は、新品のようにピカピカに洗われていた。
「千秋、本当においしかったよ。力が湧いてきて、昨日のダンスレッスンは今までで一番調子が良かったんだ」
レオはカウンター越しに身を乗り出して、声を弾ませた。
「それは良かった。でも、一粒残さず食べるなんて、ちょっと無理させちゃったかな?」
「まさか! むしろ足りないくらいだったよ。……それで、今日はお礼がしたくて」
お礼、と聞いて僕は首を横に振った。
「いいよ、余り物で作っただけなんだし。そんなに気を遣わないで」
「ダメだよ。僕がしたいんだ。……今日の夜、千秋のバイトが終わってから、少しだけ付き合ってくれない?」
レオの瞳は、まるで行き先を知っているワンコのようにキラキラと輝いている。
同級生で、しかもこれほどの有名人に真っ向から誘われて、断れるはずもなかった。
バイトが終わった夜、僕はレオに指定された近くの公園で待ち合わせた。
街灯に照らされたベンチには、キャップを深く被った彼が座っていた。
「お待たせ。レオ、こんなところで大丈夫? 誰かに見つかったりしない?」
「大丈夫。ここは僕の秘密の場所なんだ。……千秋、これ」
差し出されたのは、温かい缶コーヒーと、小さな包み。
「夜は少し冷えるから。……あと、お礼のケーキ。あのお店、千秋が『食べてみたい』って前に言ってたでしょ?」
驚いた。かなり前に、僕が世間話のついでに零した有名パティスリーの名前を、彼は覚えていたのだ。
「覚えててくれたんだ……。ありがとう」
「千秋が言ったことは、全部覚えてるよ」
レオは隣に座ると、ふふっと柔らかく微笑んだ。
その横顔は、夜の静寂も相まって、ひどく綺麗で、どこか懐かしい。
「レオってさ。昔から、そういうマメな性格だったの?」
何気なく尋ねると、レオは少し動きを止めて、夜空を見上げた。
「ううん。昔はもっと自分勝手で、泣き虫で……。誰かに頼ってばかりだったよ。でも、ある人に『レオは笑ってる方がかっこいい』って言われてから、変わろうって決めたんだ」
その言葉に、僕の記憶の蓋が微かに持ち上がる。
僕も昔、似たようなことを誰かに言った記憶がある。
いじめられて泣いていた、あの日の玲央くんに。
「その人……。レオにとって、大切な人だったんだね」
「……うん。世界で一番、大切な人。僕が今ここにいるのは、その人がいたからだよ」
レオの視線が、ゆっくりと僕の方へと向けられる。
サングラス越しでも分かる、熱を帯びた、吸い込まれそうな瞳。
心臓が不自然に跳ねた。
「……あ、あの! コーヒー、冷めちゃうから飲もうか」
僕は照れ隠しに慌ててプルタブを開けた。
レオはそんな僕の様子を少しだけ残念そうに見つめた後、すぐにいつもの優しい笑顔に戻った。
「そうだね。……ねえ、千秋。これからも、こうやって時々会ってくれる?」
「僕で良ければ、いつでも。……あ、でもアイドルの仕事が最優先だよ?」
「分かってる。千秋に会えると思えば、どんな仕事も頑張れるから」
同い年の男同士。
それなのに、レオから発せられる言葉の一つ一つが、まるで特別な親愛に満ちているようで。
僕は熱くなった顔を、夜の冷たい風に晒して落ち着かせるので精一杯だった。
今日はオフなのか、いつもよりリラックスした表情をしている。
返されたお弁当箱は、新品のようにピカピカに洗われていた。
「千秋、本当においしかったよ。力が湧いてきて、昨日のダンスレッスンは今までで一番調子が良かったんだ」
レオはカウンター越しに身を乗り出して、声を弾ませた。
「それは良かった。でも、一粒残さず食べるなんて、ちょっと無理させちゃったかな?」
「まさか! むしろ足りないくらいだったよ。……それで、今日はお礼がしたくて」
お礼、と聞いて僕は首を横に振った。
「いいよ、余り物で作っただけなんだし。そんなに気を遣わないで」
「ダメだよ。僕がしたいんだ。……今日の夜、千秋のバイトが終わってから、少しだけ付き合ってくれない?」
レオの瞳は、まるで行き先を知っているワンコのようにキラキラと輝いている。
同級生で、しかもこれほどの有名人に真っ向から誘われて、断れるはずもなかった。
バイトが終わった夜、僕はレオに指定された近くの公園で待ち合わせた。
街灯に照らされたベンチには、キャップを深く被った彼が座っていた。
「お待たせ。レオ、こんなところで大丈夫? 誰かに見つかったりしない?」
「大丈夫。ここは僕の秘密の場所なんだ。……千秋、これ」
差し出されたのは、温かい缶コーヒーと、小さな包み。
「夜は少し冷えるから。……あと、お礼のケーキ。あのお店、千秋が『食べてみたい』って前に言ってたでしょ?」
驚いた。かなり前に、僕が世間話のついでに零した有名パティスリーの名前を、彼は覚えていたのだ。
「覚えててくれたんだ……。ありがとう」
「千秋が言ったことは、全部覚えてるよ」
レオは隣に座ると、ふふっと柔らかく微笑んだ。
その横顔は、夜の静寂も相まって、ひどく綺麗で、どこか懐かしい。
「レオってさ。昔から、そういうマメな性格だったの?」
何気なく尋ねると、レオは少し動きを止めて、夜空を見上げた。
「ううん。昔はもっと自分勝手で、泣き虫で……。誰かに頼ってばかりだったよ。でも、ある人に『レオは笑ってる方がかっこいい』って言われてから、変わろうって決めたんだ」
その言葉に、僕の記憶の蓋が微かに持ち上がる。
僕も昔、似たようなことを誰かに言った記憶がある。
いじめられて泣いていた、あの日の玲央くんに。
「その人……。レオにとって、大切な人だったんだね」
「……うん。世界で一番、大切な人。僕が今ここにいるのは、その人がいたからだよ」
レオの視線が、ゆっくりと僕の方へと向けられる。
サングラス越しでも分かる、熱を帯びた、吸い込まれそうな瞳。
心臓が不自然に跳ねた。
「……あ、あの! コーヒー、冷めちゃうから飲もうか」
僕は照れ隠しに慌ててプルタブを開けた。
レオはそんな僕の様子を少しだけ残念そうに見つめた後、すぐにいつもの優しい笑顔に戻った。
「そうだね。……ねえ、千秋。これからも、こうやって時々会ってくれる?」
「僕で良ければ、いつでも。……あ、でもアイドルの仕事が最優先だよ?」
「分かってる。千秋に会えると思えば、どんな仕事も頑張れるから」
同い年の男同士。
それなのに、レオから発せられる言葉の一つ一つが、まるで特別な親愛に満ちているようで。
僕は熱くなった顔を、夜の冷たい風に晒して落ち着かせるので精一杯だった。
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