【R18】わたしとアイツと腐った純愛

くったん

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わたしとアイツと友だち

 5話②

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 咲希の仕事先は、駅から近かった。
 路地裏にひっそりとある店で、【Lian】と書かれた小さなプレートが木の扉にあるだけで他に看板もなかった。
 店の中は小洒落てるというか、シックでレトロというか、落ち着いた大人の雰囲気がして、まだガキの俺には居心地が悪い。
「雰囲気だけよ。案外バカ騒ぎしちゃうようなお店なの」
 察してくれた咲希はそう言ってカウンター越しに立つ。そこに洗い場があるのか、カチャカチャと音を立てながら洗い物を始めた。
「ほんともう……洗い物くらい飲んだ本人がやりなさいよ」
 言ってることはいつもと同じでも、いつもの咲希と違って見える。俺はカウンターに座り、頬づえをついて咲希を見てた。
「冬馬、大丈夫かしら」
 意外と咲希も冬馬に懐いてるらしい。面倒くさいって言ってたくせに。
「さぁ、どうだろ」
「親友なのに、つめたーい」
「冬馬が決めることだもーん」
「それもそうだけど……」
「自分から突き放したくせに。心配なら残りゃよかったじゃん」
「あのまま契約になったら、保護者のサインとか確認が必要でしょ。お宅訪問の流れになったら私の性格上、絶対について行っちゃう。そんで母親にビンタしちゃう。そうなる前に撤退したの」
「大人なんだか子どもなんだか。でも行かなくて正解。ビンタどころかマジで殴りそう」
「だって腹立つじゃない! 避妊を知らないわけじゃないのに、親の都合で産んで、冬馬に責任を擦り付けて、放置って!」
「避妊するのが怖かったんじゃねーの? ほら、ゴム付けてって言えない的な」
「ゴム如きで壊れる愛ならその時点で崩壊してるわよ。つーか、ナマを要求してくる時点でクソ男決定ね。そしてクソ男をナマで受け入れるあたり、私からすれば女もクソ女だわ」
「最近は授かり婚っつーの? そーいうのが多いらしいけどなぁ」
「完全否定してるわけじゃないわよ。どういう結果であれ、お互いが責任を取って当たり前でしょ。子どもは愛し合った証なのよ。それなのにいざとなれば責任を取らずに逃げて……自分で自分のケツを拭かない感じがすごく嫌なの」
「そこまで考えてやるもんかね。理性と本能の狭間でする行為なんだぜ。相手を好きって思った時点で、この人とならどうなってもいいと思う人の方が多いと思うけど」
「つまり目先のことしか考えてない猿ってことじゃない」
「つーか、尻軽女が何か言える立場かよ」
「そうならないためにピルを飲んでるの」
「でもゴムは付けてたんだろ? 何で俺のときは初っ端からナマで中出しを許してんの? もしかして誘惑に負けたとか? うーむ、やっぱり咲希もクソ女ってことっすかねぇ」
「うっさい! コーヒー淹れてあげないわよ!」
 図星をつかれて真っ赤になりながらも、俺のためにコーヒーを淹れ始めた。口が悪いけどなんやかんやで優しい咲希が好きだ。ほんとに、こんなにも。
「好きだよ」
「あら、お客さま。当店でのナンパ行為は禁止ですよ」
「えー、今晩付き合ってよ。咲希のために頑張っちゃうからさぁ」
「何を、頑張るつもりなのかしらん」
「そりゃもう天国へと誘うようにぃ?」
「お仕事中のお姉さまを誘惑するなんて悪い子ね。今晩、お仕置きが必要かしら」
「やった! 久しぶりにいちゃいちゃ……」
 ふと思い出すのは冬馬の存在。咲希の部屋でセックスをするとしても、隣の部屋に冬馬が居るのならしたくない。この前したとき、やっぱり咲希の声が出そうだった。せっかくのお誘いなのに、またしばらくお預けだ。トホホ。
「残念そうね」
「だってお預けだし」
「冬馬なら帰って来ないわよ」
「何で!?」
「あの変態って両刀使いなの」
「は?」
「両刀使い」
「両刀……使い?」
「美女美男子が好物で、特に年下の男の子は大大大好物。ヤリチンなわけじゃないのよ。ストライクゾーンが狭すぎて出会いがなくて愛に飢えてる、でも愛に溢れた一途な男なの。犬みたいに真面目に一途だから、あのときの私には受け入れることが出来なかったけど、愛に飢えた冬馬なら受け入れることが出来ると思うの。あの変態……堺利彦なら、愛される喜びも愛する喜びも教えてくれるわ」
 絶句。
 もう絶句。
 一言も言葉にならないから、テーブルに突っ伏した。
 冬馬があの変態の餌食になる。いやでも断ればまだ……ダメだ、断る姿を想像出来ねぇ。冬馬は意外とチョロい。飢えた野良ネコと似てる。俺の場合はアイス一本与えただけで懐いた。咲希の場合はあったかい缶コーヒーとカツ丼。
 食い物と温もりに飢えた純粋な冬馬に、あの変態の誘惑を断ち切る勇気もなければ、野蛮な下心に気づくこともないだろう。
 むしろ今日は家に泊めて、ひたむきな優しさを与えて警戒心をゼロにする作戦かも。徐々に距離を詰めて、最後は……
「酷いぜ、あんまりだぜ! 美人なお姉さまならいざ知らず、男に託すなんてっ!」
 やっと声になった訴えを叩きつける。咲希は俺を見てニッコリと笑った。その笑顔は性悪どころか悪魔を表したものだった。
「美人でかわいいこの私を見ても、クソババア呼ばわりするほど、女が嫌いなんでしょう。男の方がタイプなのかなと思ったんだけど、違ったのかしら。もしそうなら悪いことをしたわ」
「……まさか、まだ怒って……」
「……」
 無言の笑顔が一番怖いけど、これ以上掘り下げるなという圧を感じて、余計なことを言いそうな口にコーヒーカップを付けた。
「あ、うまい」
「でしょ? 愛情いっぱい入ってるの」
「やーん、俺ってば幸せ。でも足りなーい」
「今晩、幸せ行為いっぱいしちゃう?」
「寝落ちするまでしちゃーう」
「んじゃ、急いで仕事を終わらせちゃう!」
 それから咲希はテキパキと動き出した。ようやく見慣れた仕事姿の咲希を隠し撮りしたついでにフォトフォルダーを開き、さっき公園で撮った世界一かわいい性悪ウサギたんの写真を確認する。
 我ながら良き写真だ。これを世界中にバラまいて俺の彼女だって言って自慢したい。
 バニーガールの衣装から溢れ出そうなおっぱいと、丸い尻尾の付いたお尻が、これまた最高のバランスで芸術的だ。
 嗚呼、早く食べたい。
 どうせならバニーガールの衣装を着たまま口でしてくれないかな。あのときみたいに「おいしい」ボイス付きで飲んでくれないかな。そしたら俺、五発はイケる。いいな、バニーガール。またおっぱいを……あぁ、勃っちまった。
「何を見てるの?」
 咲希は後ろに立って俺のスマホを覗き込んだ。バニーガールの写真を見て、これまた意地悪い笑顔を浮かべたあと、俺の股間に手を伸ばす。勃起してるそれに気づいた咲希がクスリと笑い、あれを擦りながら耳元で囁いた。
「スッキリさせてあげよっかぁ?」
 咲希がこんな所でするはずがない。どうせまたおもちゃにして遊ぶ気なんだろう。
「マジ? んならさ、四つん這いになってくれよ。後ろから食べちゃう」
 遊ばれてる、それを分かった上で対応する俺も俺だ。でも惚れた弱みっつーか、遊んでる様がかわいいから許してしまう。ほんっと咲希に甘い。甘過ぎる。
「冗談よ。おうちまでコレでお預けね」
「っす! 頑張る!」
 頬にキス一つ、子どもみてーなキスで満たされるわけがないのに、咲希は満足そうに仕事に戻った。
 やっぱり咲希は勘違いしている。俺はペットでもなければ下僕でもなく、ただ単に咲希のことが大好きな、なけなしの理性しか持ち合わさてない男だっていうのに。
「やっぱり一回鳴かせて泣かそうかなぁ」
 ポツリと呟いたあとに、咲希の淹れてくれたコーヒーを口に付ける。そういえば……と、やりたかったことを思い出して冬馬にメールを送った。

【イロイロな愛がこの世に存在すると思います。それを受け入れるかどうかは人それぞれです。どれが正しいとか、そんなもんがないのも愛なのです。何が言いたいのか自分でも分かりませんが、幸せと罪悪感に押し潰されそうです。咲希の代わりに謝ります。本当にすみませんでした。】

 その日、バニーガールになった咲希といちゃいちゃしながら待ってたけど、冬馬からの返信はなかった。
「愛に飢えた者同士、きっと仲良くしてるのよ。私って恋のキューピットね」
「悪魔の間違いだろ。復讐が残酷過ぎてマジで引くわ」
「………許してほしいピョン」
「世界中の誰もが咲希を悪魔だ何だと罵っても、俺は絶対に咲希だけの味方だ。だから、俺が許す」
「やった! 許された!」
 親友が酷いことされてたってのに、罪悪感に押し潰されそうなのに、それでも咲希が優先される。
 こんなふうに俺をおかしくさせたんだ。
「好きだよ、勇樹」
「うん、俺も! 素直な咲希が一番かわいい! めちゃくちゃ愛が伝わるぅ」
「だったら……もっと素直になるよう頑張るわ」
 やっぱりどう考えても、そうさせた咲希が一番悪いと思う。



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