【R18】わたしとアイツと腐った純愛

くったん

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わたしとアイツとあの子

 4話

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 クラスメイトの女子の突撃訪問のせいで家を追い出された俺は、小学校からの腐れ縁である文也の家に訪問。事情を話せば泊めてやるってことで、名前を伏せてここぞとばかりに愚痴った。
 久しぶりの泊まりは楽しいもんで、朝方までゲームしまくって、気づいたら次の日の昼だった。雑魚寝した体が痛い。ぐぐっと伸びをしてたらスマホが鳴った。【藤森家 閣下様】と表示されたから急いで電話に出る。
「勇樹、勇樹! 大変よ! 咲希ちゃんが!」
 慌てて文也の家を飛び出した。
 家に着くなり、すぐに咲希の部屋へ。床に倒れてる咲希がそこにいた。
「咲希!?」
「動かしちゃだめよ!」
「分かってる! 救急車は!?」
「そろそろ来ると思うわ!」
「ここは俺が見てっから閣下様は準備してて!」
「ええ、よろしく頼む……かっかさま?」
 ベッドの周りに『ワイン』やら『日本酒』やらの本が散らばってる。やっぱり……と頭を抱えずにいられない。心配で電話を掛けたとき、「勉強してるから」と言っていた。高熱だってのに休むことをしてなかった。いや、できなかったんだろう。
 なんせいきなりの知らない女の突撃訪問。目的が何なのか分かんねぇから俺を遠ざけて、代わりに咲希が監視してた。
 こんなことになるなら意地でも家にいればよかった。心を鬼にしてアイツを追い出せばよかった。
 後悔しても倒れたあとじゃもう遅いっつーのに。
 病院に運ばれたけど、高熱以外、異常はなかった。医者が言うに【過労】だと。そんなの俺も閣下様も分かってるから笑うしかない。
 一応一日だけ入院することになり、閣下様はいったん家へ。俺は病院で寝てる咲希のそばにいた。
 起きたら謝ろう。元気になったら咲希の行きたいって言っていたカフェに行こう。春休みはあっという間に終わるけど、残りの日を咲希と一緒にいよう。
 そんなことを想像しながら咲希が起きるのを待ってたのに。
「【お役御免】ね」
 眠りから覚めた咲希は意味が分かんねぇことを言い放った。
「は? 何て?」
 聞き返しても寝返りを打ってシカト。納得出来ねぇから肩を掴んだけど、拒絶するように振り払われた。
「いや、いやいや! 意味が分かんねぇ! キスのことなら土下座でも何でもすっからさ! ちゃんと話を」
「めんどくさい」
 ピシャリと一言で片付けられた。
 こう見えてもワガママ悪魔の対応は手慣れてるつもりだ。小さい頃から振り回されっぱなしだし、それは今も同じ。悪魔様のためならえんやこら。
 でも、これは違うだろ。
「なんだそれ。俺と別れたいってこと?」
「そうじゃないの。一人になりたいの」
「その意味が分かんねぇっつってんの」
「察してよ。めんどくさい」
 久しぶりにバリバリバリと何かが引き裂かれる音がする。これで何度目だろ。もう慣れたもんなのに、痛い。こんなにも。
「マジで言ってんの?」
「しばらく一人になりたい」
「しばらくってなに? 何で俺がお前を待ってる前提なわけ」
「……何が」
「ふざけんな」
「……勇樹?」
 咲希の手が俺に伸びてくる。
 初めてその手を振り払った。
「もう、いい」
 そう言って俺は病室を出た。途中でおふくろに会ったけど、俺の様子を見て何か悟ったのか知らん顔してくれた。
 初めて咲希にキレた。
 家に帰っても気持ちが静まらなくて、その日に文也の家に戻った。
 何度か咲希から着信があった。
【いつ帰ってくるの?】というメールも来た。
 春休みが終わるまで、俺は家に帰らなかった。
 それでも会いたい気持ちが積もりに積もって、写真を眺めてはキスしてぇとか、どうしょうもなく好きだとか思うから、やっぱり俺の純愛は腐ってんなぁって思い知らされた。



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