目が覚めたら【呪いの首輪】と【呪いのおパンツ】をつけられていたけど、これをやった犯人は誰ですか?

くったん

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2章 呪いの首輪と呪いのおパンツ

拾われたネコと呪いのおパンツ②

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ゾンビ少年に連れていかれた先は、古い宿だった。木造の二階建てで、一階に受付がある。その受付を横切ると、宿の店主が声をかけてきた。

「宿泊なら受付を済ませな」

いや、無一文です。泊まれません。とも言えないし、どうしようとゾンビ少年に目をやると、「ギュスターの連れだよ」と答えた。でも店主には聞こえなかったらしく、声を荒らげて「受付」を急かす。

「えっと、ギュスターの連れです」
「……ああ、あれの」

納得したらしく、先程まで読んでたらしい新聞を広げて手で追い払う仕草をした。大変失礼な店主だ。

「こっちだよ」

ゾンビ少年の後ろをついていく。二階に上がる階段を進み、一番奥の部屋の扉を開けた。

「ただいま」
「おう、おかえ……」

中にいたのは、ゾンビ少年と変わらない年くらいの黒髪の少年。私を見るなり固まった。

「ネコ、拾っちゃった!ね、かわいいでしょ?」

ゾンビ少年は楽しそうに私の後ろに立つと肩に手を置いて、黒髪少年の前にずずっと私を差し出した。

「……ネコ?」
「ネコ」
「……これが?」
「ネコ」
「……人間と?」
「ネコ」

黒髪少年が私を見る。その【あり得ないモノを見る目】に肩をすくませた。

「いや、いやいやいやいや!だって、これ!これぇぇ!」

お猫様を指差してこれ呼ばわりにイラッとした。多分、お猫様は失礼なことをしたことはあっても、されたことがないんだと思う。

「路地裏にいたんだよ。しかも記憶がないんだって。かわいそうに……」
「……で、拾ってきたと?」
「うん!」
「元のところに戻してきなさい!」
「リビアの悪魔!」
「だってこれだぞ!?半猫半人間なんて見たことも聞いたこともねぇし、絶対にヤバイって!関わらないが吉!捨ててこい!」
「絶対にいやっ!この子を捨てるならぼくも出ていくからね!」
「あー、もー、こんな化け物を拾ってどうすんだよ……」

黒髪少年の言い分も分かるが、さっきからの物言いに、心にくるものがある。多分お猫様はキャーキャーと崇められることはあっても、化け物と呼ばれたことはないんだと思う。

「つーか、それ本物?」
「本物だよ。ふわふわしてかぁわいい」

ゾンビ少年が耳を撫でると、ノドがゴロゴロ鳴った。ゾンビのくせにネコをあやすのが上手い。

「ゴロゴロもかぁわいい」
「んにゃう」
「っっ!ああーっ!」

リミットブレイクしたゾンビ少年が私の頭に頬すりをしてきた。そう、これなのだ、お猫様に対して、世界中の誰しもが、こうでなければならないのだ。

「へー、そう。んで、そいつを飼うとしてこれからどうすんの?」
「どうって?」
「記憶が戻るまで一緒にいるつもり?一生戻んなかったら?仮にお前に彼女が出来たとして、その化け猫をどうすんの?もう面倒は看られないってのは通じねぇよ。化け猫が年老いて死ぬまで責任はとらねぇとな。それまでの生活費とかは?お前が稼ぐの?そこんところちゃんと考えてんの?」

黒髪少年の言い分にゾンビ少年が撃沈した。もっと粘って欲しかったけど、これが現実だ。つーか誰が化け猫だ。

「あの」
「!?」

黒髪少年が肩を揺らして【あり得ないモノを見る目】で私を見た。

「しかも喋れるのかよ」

あちゃーと言わんばかりに顔を押さえたくすんだ黒髪少年。さっきからこいつの態度がかーなーり失礼過ぎるが、私は優しいお猫様なので我慢してあげよう。

「私は大丈夫です。何とかします」
「あ、そう?」

黒髪少年の顔色がパァっと良くなる。あまりにも分かりやすい態度に怒りマークが浮かぶけど、化け猫を拾う方が珍しいと思うから気持ちは分かる。ただ少し、思うことがあるだけ。私の勝手だ。

「行く前にお手洗いを貸してください」
「どうぞどうぞ。んで、さっさと出ていけよ、化け猫め」

いちいち一言多い黒髪少年にひきつった笑みを浮かべて、「あそこの扉」と指をさした場所へ向かう。

ゾンビ少年が「何でそんなにひどいことを言うの!?リビアは悪魔なの!?悪魔と何かの契約でもしちゃったの!?」と怒鳴ってるが、気にすることもなく扉を開ける。

「だーれーがー悪魔だ!そもそもお前が化け猫を拾ってくるからだろ!?猫をやめた人間を一体どうすりゃいいんだよ!俺たちは一般人でまだ子供だぞ!?手に余る問題だっつーの!」
「うわ、普段は子供扱いを嫌がるのにいざとなれば子供という立場を使うんだ。ほんっと情けない男だね」
「俺のプライドと化け猫の存在、どっちも別の話だろ!?つーか、今の生活費を稼いでるのは俺だぞ!お前と二人で精一杯だっつーのに、もう一人分とか無理に決まってる!」
「ネコの一匹も養えないなんてっ、この甲斐性なし!」
「うえええ!?俺!?俺が悪いの!?」

まぁおっきな声でケンカだなんて元気の良い少年たちだこと。と、嫌みを心の中で思いつつ、トイレに入ってスカートをたくしあげた。

悪夢が再び訪れた。


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