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2章 呪いの首輪と呪いのおパンツ
拾われたネコと呪いのおパンツ⑥
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【呪いの首輪】【呪いのおパンツ】
ここまでくると平常心が保てなくてソファーの上で丸まってしくしくと泣いた。泣くことしか出来なかった。
「【呪いの首輪】に【くそエロい呪いのパンツ】に【半猫半人間】か。三つもあんぞ、お前の謎」
二つじゃなかった事実に頭を抱えた。
「まっ、俺たちも呪われてるしさ、呪われてる者同士、仲良く暮らそうぜ!」
明るく言われてもちっとも明るくなれない話題を振られて、黒髪少年の顔を見た。
「こいつが、あー……その、こいつね」
こいつと指差した相手はゾンビ少年だ。
「呪われてるんだ。だからこんな姿になっちまった」
「……呪われてる?」
呪われたってよりも、この世に未練があって死に戻ってきたって感じのお姿なんだけど。呪いのホラーそのものだよ、そのお姿。
でも【呪いの首輪】や【呪いのおパンツ】をつけた【半猫半人間】が居るくらいだもの、【呪われた人間】が居てもおかしくない。どっちかっていうと私の方が【呪われた人間】に近い気もする。……ははっ、なるほどな、そーいうことか。
「さぁ、熱い握手を交わそうではないか!我が同士よ!」
ゾンビ少年に手を差し出した。
「……同士?」
「きっと我らは、遠い昔に滅ぼされた【呪われた種族】に違いない」
「……【呪われた種族】?」
「もう、そういう設定にするの!ほら、さっさと握手するよ!」
無理やりゾンビ君の手を取って、ぐっと握手をした。ひやっと冷たい肌から【生】を感じないけど、「なにそれ変なの」と笑うゾンビ少年の顔は【死】を感じない。生きてるゾンビだ。
「改めてよろしくね、ゾンビ少年」
「こちらこそよろしくね。でもぼくの名前はジョバンニュだよ。ジョニーって呼んでくれると嬉しいな」
「ジョバンニュのジョニーね!」
「えへへ、かぁわいい」
ジョニーは間違いなくネコ好きだ。ルンルン気分でまた耳を触り始めた。さっきと違って良きよ、良き。触り方が上手いもの。ゴロゴロ鳴いちゃう。
「ってことで一緒に暮らすことが決まったし、次はルールを決めたいと思います!」
「ルールゥ?んなもん、ご主人様(仮)である俺に従え。それ以外にない」
「リビアには近づいたらダメだよ。特に夜は。あれはむっつり隠れ狼だから何をされるか分かんないよ」
「何もしねぇよ!俺だって誰でもいいわけじゃねぇんだぞ!つーか、どんだけ犯罪者に見られてんの、俺!」
「ついさっきのこと忘れた?……ギンギンだったくせに」
「あれはっ!生理現象だっつーの!」
「さっきから何を言ってるの?狼ってなに?噛みつかれるの?ギンギンって何?」
ゴロゴロ鳴きながらジョニーに質問。でもジョニーの手が止まったから、閉じてた目を開けた。真顔のジョニーがそこにいた。
「ごめんね、セクハラするつもりはないんだけど……セックスって知ってる?」
「セックス?なにそれ」
「……ペニスって知ってる?」
「ペ?ううん、知らない」
「キスは?」
「うーんと、【特別の証】だったと思う」
「赤ちゃんはどうやってできる?」
「それは知ってるよ!コウノトリさんが運んでくれるの!」
私の答えに二人が頭を抱えた。
「壊滅的だな」
「ねぇリビア、飼い主の性癖が明るみに出てほんと心苦しいんだけど」
「性的な知識は一切与えずに、くそエロいパンツを履かせて遊んでる時点で、ろくでもねえ飼い主っつーのは理解した」
「最低最悪の変態くそ野郎だね」
「ああ、同じ男として軽蔑する」
ーー違う、わたしじゃない!性的知識を与えなかったのは認めるが、それ以外はわたしじゃないんだ!信じてくれ!
耳の奥の方で何だか懐かしい声が聞こえた気がするが気のせいだろう。なんせ私は記憶喪失中だ。
「男女が同じ屋根の下に暮らすんだもの、これは絶対に教えるべきだと思う」
「俺が!?」
「ううん、ぼくが教えるよ。リビアに任せたら実技までしそうだし」
「するわけねぇだろ!俺をこいつの飼い主と一緒にするな!」
ーーあああ!違う!違うんだああ!
ーーやっぱり気色の悪いエロオヤジのやることは……心の底から軽蔑する。
また何か聞こえたけど、ジョニーがぽんぽんと頭を軽く撫でたから意識がそれた。
「待っててね」
ジョニーはおもむろにカバンを漁ると、その中から本を数冊取り出した。「な!?」と驚き焦るリビアを無視して、それを私に差し出した。
「これで勉強しようね」
「なにこれ」
「リビアが厳選したエッチな本だよ」
本の中を見ると、女の人と男の人が裸で密着している。なぜかズキンと心が傷んだ。痛くて、怖くて、でも嬉しくて。
あのとき、逞しい体に手を回したの。
溶けそうなほどの体温を感じながら、幸せいっぱいの眠りに就いたの。
誰だっけ?
ソノヒトハダレ?
「 」
喉から出た音は無だった。
呼びたいのに、名前がわからない。
わからない。
ワカラナイ。
アカニウモレル、アノヒト
「……あ、れ」
ポロポロと涙が出てくる。慌ててジョニーが涙を拭いてくれた。
「ごめんね、怖かったね」
「ちがう、の。これ、しってるの。しらないのに、しってる……」
「うん、大丈夫だよ。もう、大丈夫」
よしよしと頭を撫でてくれるジョニーの優しさに抱きついた。
これ以上、考えたくない。
これ以上、思い出したくない。
怖い。
アカイの、コワイ。
「マジで正真正銘の変態くず野郎じゃねぇか」
「これは何がなんでも返せないね」
「ったりまえだろ。……おい、猫!」
涙をそのままにリビアを見た。キッと睨んでくるから怖くてジョニーの服を握りしめた。
でも、違った。
「今日から俺たちが家族だかんな!だから安心して大いに笑え!泣かれると……なんつーか、困るんだよ!飼い主を困らすな!これは命令だかんな!」
その不器用な優しさにまた涙が出てきた。
でも涙を拭いて二人に向き合った。
「ありがとう」
感謝の言葉と笑顔とともに。
ここまでくると平常心が保てなくてソファーの上で丸まってしくしくと泣いた。泣くことしか出来なかった。
「【呪いの首輪】に【くそエロい呪いのパンツ】に【半猫半人間】か。三つもあんぞ、お前の謎」
二つじゃなかった事実に頭を抱えた。
「まっ、俺たちも呪われてるしさ、呪われてる者同士、仲良く暮らそうぜ!」
明るく言われてもちっとも明るくなれない話題を振られて、黒髪少年の顔を見た。
「こいつが、あー……その、こいつね」
こいつと指差した相手はゾンビ少年だ。
「呪われてるんだ。だからこんな姿になっちまった」
「……呪われてる?」
呪われたってよりも、この世に未練があって死に戻ってきたって感じのお姿なんだけど。呪いのホラーそのものだよ、そのお姿。
でも【呪いの首輪】や【呪いのおパンツ】をつけた【半猫半人間】が居るくらいだもの、【呪われた人間】が居てもおかしくない。どっちかっていうと私の方が【呪われた人間】に近い気もする。……ははっ、なるほどな、そーいうことか。
「さぁ、熱い握手を交わそうではないか!我が同士よ!」
ゾンビ少年に手を差し出した。
「……同士?」
「きっと我らは、遠い昔に滅ぼされた【呪われた種族】に違いない」
「……【呪われた種族】?」
「もう、そういう設定にするの!ほら、さっさと握手するよ!」
無理やりゾンビ君の手を取って、ぐっと握手をした。ひやっと冷たい肌から【生】を感じないけど、「なにそれ変なの」と笑うゾンビ少年の顔は【死】を感じない。生きてるゾンビだ。
「改めてよろしくね、ゾンビ少年」
「こちらこそよろしくね。でもぼくの名前はジョバンニュだよ。ジョニーって呼んでくれると嬉しいな」
「ジョバンニュのジョニーね!」
「えへへ、かぁわいい」
ジョニーは間違いなくネコ好きだ。ルンルン気分でまた耳を触り始めた。さっきと違って良きよ、良き。触り方が上手いもの。ゴロゴロ鳴いちゃう。
「ってことで一緒に暮らすことが決まったし、次はルールを決めたいと思います!」
「ルールゥ?んなもん、ご主人様(仮)である俺に従え。それ以外にない」
「リビアには近づいたらダメだよ。特に夜は。あれはむっつり隠れ狼だから何をされるか分かんないよ」
「何もしねぇよ!俺だって誰でもいいわけじゃねぇんだぞ!つーか、どんだけ犯罪者に見られてんの、俺!」
「ついさっきのこと忘れた?……ギンギンだったくせに」
「あれはっ!生理現象だっつーの!」
「さっきから何を言ってるの?狼ってなに?噛みつかれるの?ギンギンって何?」
ゴロゴロ鳴きながらジョニーに質問。でもジョニーの手が止まったから、閉じてた目を開けた。真顔のジョニーがそこにいた。
「ごめんね、セクハラするつもりはないんだけど……セックスって知ってる?」
「セックス?なにそれ」
「……ペニスって知ってる?」
「ペ?ううん、知らない」
「キスは?」
「うーんと、【特別の証】だったと思う」
「赤ちゃんはどうやってできる?」
「それは知ってるよ!コウノトリさんが運んでくれるの!」
私の答えに二人が頭を抱えた。
「壊滅的だな」
「ねぇリビア、飼い主の性癖が明るみに出てほんと心苦しいんだけど」
「性的な知識は一切与えずに、くそエロいパンツを履かせて遊んでる時点で、ろくでもねえ飼い主っつーのは理解した」
「最低最悪の変態くそ野郎だね」
「ああ、同じ男として軽蔑する」
ーー違う、わたしじゃない!性的知識を与えなかったのは認めるが、それ以外はわたしじゃないんだ!信じてくれ!
耳の奥の方で何だか懐かしい声が聞こえた気がするが気のせいだろう。なんせ私は記憶喪失中だ。
「男女が同じ屋根の下に暮らすんだもの、これは絶対に教えるべきだと思う」
「俺が!?」
「ううん、ぼくが教えるよ。リビアに任せたら実技までしそうだし」
「するわけねぇだろ!俺をこいつの飼い主と一緒にするな!」
ーーあああ!違う!違うんだああ!
ーーやっぱり気色の悪いエロオヤジのやることは……心の底から軽蔑する。
また何か聞こえたけど、ジョニーがぽんぽんと頭を軽く撫でたから意識がそれた。
「待っててね」
ジョニーはおもむろにカバンを漁ると、その中から本を数冊取り出した。「な!?」と驚き焦るリビアを無視して、それを私に差し出した。
「これで勉強しようね」
「なにこれ」
「リビアが厳選したエッチな本だよ」
本の中を見ると、女の人と男の人が裸で密着している。なぜかズキンと心が傷んだ。痛くて、怖くて、でも嬉しくて。
あのとき、逞しい体に手を回したの。
溶けそうなほどの体温を感じながら、幸せいっぱいの眠りに就いたの。
誰だっけ?
ソノヒトハダレ?
「 」
喉から出た音は無だった。
呼びたいのに、名前がわからない。
わからない。
ワカラナイ。
アカニウモレル、アノヒト
「……あ、れ」
ポロポロと涙が出てくる。慌ててジョニーが涙を拭いてくれた。
「ごめんね、怖かったね」
「ちがう、の。これ、しってるの。しらないのに、しってる……」
「うん、大丈夫だよ。もう、大丈夫」
よしよしと頭を撫でてくれるジョニーの優しさに抱きついた。
これ以上、考えたくない。
これ以上、思い出したくない。
怖い。
アカイの、コワイ。
「マジで正真正銘の変態くず野郎じゃねぇか」
「これは何がなんでも返せないね」
「ったりまえだろ。……おい、猫!」
涙をそのままにリビアを見た。キッと睨んでくるから怖くてジョニーの服を握りしめた。
でも、違った。
「今日から俺たちが家族だかんな!だから安心して大いに笑え!泣かれると……なんつーか、困るんだよ!飼い主を困らすな!これは命令だかんな!」
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「ありがとう」
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