51 / 55
2章 呪いの首輪と呪いのおパンツ
逃げられなかった運命②
しおりを挟む
昨日訪れたばかりのアダルト専門店へと入っていく。例のお孫さんはレジに居て、私たちを見るなりため息を吐いた。
「……逃げられないわね。これも親子揃っての宿命かしら」
「やっぱり何か知ってたな」
「知ってるわよ。そもそもその【呪いの下着】を造ったのは私の父よ。呪術的な物を造る天才だったの」
お姉さんはポケットからタバコを取り出すと、それに火をつけた。深く吸い込むそれをゆっくりと吐き出す。煙がモワッと浮かんだ。
「今日はもう店じまいね。外のプレートをクローズにしてくれるかしら」
お姉さんのいう通りに看板をクローズにすると、またタバコを深く吸い込んでゆっくりと吐き出した。まるで奥の奥まで染み込ませるように、味わうように。
「父は、とある人物に【呪いの下着】を造れと頼まれたわ。そんな物を造りたくないと拒否したけど、残念なことに相手が高貴なお方で断れなかった。だから父は造ったわ、それを」
お姉さんの指が私の股間に向かう。
「そして死んだの。依頼主に渡したその日の夜に。首が転げ落ちてたわ。警察が調べた結果、自殺と判定された。首が切られていたにも関わらず。わたしも祖父も何度も訴えた。調べ直してくれ、父は自殺ではないと。だけど権力には逆らえない。自殺のまま父は処理された」
何と声を掛けていいのか、でもかける言葉も見つからない中、お姉さんが言葉を続けた。
「それだけの話よ。それ以上は、申し訳ないけど知らないの。祖父なら知ってると思うけど。会ってないの?」
「……知らないのか?」
リビアの遠回し過ぎる問いにお姉さんは一瞬ハテナを浮かべたけど、すぐにタバコを吸った。その手が小さく震えていた。
「……それならもう誰も知らないわ。それについて詳しいのは父と祖父だけなの。わたしが唯一知ってることは」
もう一度タバコを深く深く吸い込んで、ゆっくりと煙を吐き出した。
「依頼主は金髪の男性だったらしいわ」
「金髪の男性?」
「こんな物をオーダーメイドできる高貴な身分の、ね」
「それって……」
「これ以上は本当に知らないの。聞かされなかったのよ、わたしも。何だかんだ言っても愛されてたのね。今になって分かるなんて皮肉だわ」
お姉さんが何かを慈しむように、レジの横にあるランプにを撫でる。年季の入ったそれはきっとおとうさんかおじいちゃんが与えてくれたものだと思う。似た物をおじいちゃんのお店で見た気がする。
「さぁ、帰って。今日は少し……思い出に酔いたい気分なの」
「あの」
私が口を開くとリビアが腕を掴んだ。余計なことを言わずに帰るぞのサインだ。
「……お姉さん、ありがとう」
小さくお礼を言うと、お姉さんが哀しく笑った。その哀しみの笑みの意味が分からず、会釈で返す。
その日、お姉さんも亡くなった。
「お守役も大変ね」
「これも全てはあの人のため。すまんがお前には消えてもらう」
「やっぱり父の言った通りね。あの子は悪魔だわ」
死因は自殺だった。
「……逃げられないわね。これも親子揃っての宿命かしら」
「やっぱり何か知ってたな」
「知ってるわよ。そもそもその【呪いの下着】を造ったのは私の父よ。呪術的な物を造る天才だったの」
お姉さんはポケットからタバコを取り出すと、それに火をつけた。深く吸い込むそれをゆっくりと吐き出す。煙がモワッと浮かんだ。
「今日はもう店じまいね。外のプレートをクローズにしてくれるかしら」
お姉さんのいう通りに看板をクローズにすると、またタバコを深く吸い込んでゆっくりと吐き出した。まるで奥の奥まで染み込ませるように、味わうように。
「父は、とある人物に【呪いの下着】を造れと頼まれたわ。そんな物を造りたくないと拒否したけど、残念なことに相手が高貴なお方で断れなかった。だから父は造ったわ、それを」
お姉さんの指が私の股間に向かう。
「そして死んだの。依頼主に渡したその日の夜に。首が転げ落ちてたわ。警察が調べた結果、自殺と判定された。首が切られていたにも関わらず。わたしも祖父も何度も訴えた。調べ直してくれ、父は自殺ではないと。だけど権力には逆らえない。自殺のまま父は処理された」
何と声を掛けていいのか、でもかける言葉も見つからない中、お姉さんが言葉を続けた。
「それだけの話よ。それ以上は、申し訳ないけど知らないの。祖父なら知ってると思うけど。会ってないの?」
「……知らないのか?」
リビアの遠回し過ぎる問いにお姉さんは一瞬ハテナを浮かべたけど、すぐにタバコを吸った。その手が小さく震えていた。
「……それならもう誰も知らないわ。それについて詳しいのは父と祖父だけなの。わたしが唯一知ってることは」
もう一度タバコを深く深く吸い込んで、ゆっくりと煙を吐き出した。
「依頼主は金髪の男性だったらしいわ」
「金髪の男性?」
「こんな物をオーダーメイドできる高貴な身分の、ね」
「それって……」
「これ以上は本当に知らないの。聞かされなかったのよ、わたしも。何だかんだ言っても愛されてたのね。今になって分かるなんて皮肉だわ」
お姉さんが何かを慈しむように、レジの横にあるランプにを撫でる。年季の入ったそれはきっとおとうさんかおじいちゃんが与えてくれたものだと思う。似た物をおじいちゃんのお店で見た気がする。
「さぁ、帰って。今日は少し……思い出に酔いたい気分なの」
「あの」
私が口を開くとリビアが腕を掴んだ。余計なことを言わずに帰るぞのサインだ。
「……お姉さん、ありがとう」
小さくお礼を言うと、お姉さんが哀しく笑った。その哀しみの笑みの意味が分からず、会釈で返す。
その日、お姉さんも亡くなった。
「お守役も大変ね」
「これも全てはあの人のため。すまんがお前には消えてもらう」
「やっぱり父の言った通りね。あの子は悪魔だわ」
死因は自殺だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる