異世界から魔王が侵略してきた

カナカナ

文字の大きさ
1 / 1

魔王が侵略してきた

しおりを挟む
 午前6時、起床する。
 簡単な食事をすませ、シャワーを浴び、俺はスーツに身を通した。
 行くか。と、刀を持ち、重い足取りで部屋を出る。
 社員寮に住んでいるので、職場にはすぐについた。

 「おはようございます。葉之隊長。まだ6時半なのに早いですね。他の隊員誰もいませんよ。」

 俺は葉之隊長こと課長に朝の挨拶をする。
 葉之隊長は県庁に勤務するはずだったエリートだ。メンズのスーツを着こなすその姿はカリスマそのものだ。男らしいと言われると喜ぶ。不思議な人だ。俺は女らしいと言われると喜ぶ。不思議な人だ。(他人事)

 「おはよう、陸斗くん。別に誰も居ない訳ではないぞ?なんせ君がいるからね。ところで、敬語を使う必要はないよ?同期なんだから。」

 隊長には敬語を使っているが、ここの社員は全員新人だ。
 特殊な刀に認められた者だけ、この課に所属している。そして認められたのは全員新人だった。
 
 「そういう訳にもいきませんよ。隊長は上司ですし、こんな状況です。普段から油断せず、気を引き締めていかないとですから。」

 「なるほど、たしかにそのとおりだね。私も意識していこうかな。まあ、油断したくともできないから、こんな時間から職場に来ているんだけどね。」

 そう。俺達は役所に勤務してまだ1週間だが、どうしても気を緩ませることができない。いや新人だから対応できてないのかもしれない。
 
 数ヵ月前、いきなり東京に魔王が転生したと言い、侵略してきた。
 国の自衛隊や警察が侵略を食い止めようとしたが、全く歯が立たず、あっさりと日本は魔王軍の手に落ちた。
 そんなとき、いきなり刀を持った女が現れたと思ったら、中部地方を取り返した。その後は魔王軍の対策をたてたらしく、戦況は全く変わらなくなった。
 ちなみに話の中で出てきた女は行方不明らしい。
 
 それから3月まで過ぎ、俺、橘陸斗は、地方の公務員になり、適性検査を受けた。そのとき、石を触れる。という検査があった。何故行うのかすら分からなかったが、取り敢えず言われた通りに石に触れると、急に石が光り出した。
 思わず飛び退いた俺を見た博士は、なるほど。と意味深過ぎる発言を残し、他の検査官と話し出したかと思ったらさっさと帰ってしまい、残された俺は、いきなり刀を渡され、配属先が総務課から戦闘課という、聞きなれない場所にされた。なに言ってるか分からないだろうが、俺の方が分からなかった。
 その日は帰され、その翌日から、戦闘課専用の社員寮に入り、俺と同じく、いきなり連れてこられた、10人程度の社員と顔合わせをして、1週間がたった。
 同じ悲惨な新人社員どうし仲良くなり、戦闘訓練をする毎日を送っていた。任務をこなすらしい戦闘課には、全く仕事が入ってこなかった。

 「おっといかんいかん。」

 俺が考え事をしている間に皆出勤してきたらしい。

 「おはよう!陸斗!今日もおかしいくらい平和だな!」

 俺の肩に手を乗せ、元気良く挨拶してきたのは橘海斗。双璧をなすような名前なので、その話題で盛り上がり仲良くなった。双子じゃないよ?海斗は運命と言っていた。
 高校から公務員になり、戦闘課に配属された。俺と同じような生活をしてきて、この戦闘課でも一番普通の人だ。周りが個性的すぎるから逆に貴重だな。
 
 「ちょっと海斗さん。平和って、魔王軍に侵略されてる最中ですよ。さすがに平和なんてー・・・まあ、はい。別にいいじゃないですかはい。平和が一番です。」

 なんにも言えなくなってしまった。仕方ないんだ、訓練以外なんにもしてないんだから。いつなにが起こるか分からないから余計に気が抜けない。

 「そうそう、実はここ来るときにな?博士に会ったんだよ。そんで今日ここ来るからよろしくっていってた。何だろうな?」

 ガタッ!

 海斗以外の全員が立ち上がった。

 「なんでそういうこと早く言わないんですか!?そんなんだから海斗さんは海斗さんなんですよ!」

 俺は海斗に詰め寄り叫ぶ。
 
 「ちょっとまて、なにげに俺物凄くけなされてるのなんで?」

 「隊長どうしますか!?この戦闘課の初めての仕事かもですよ!」
 
  えっ無視?と悲しんでいる海斗を見てみぬふりして隊長に視線を向ける。

 「皆落ち着け、海斗くんが言うには博士が来るのだろう?それならば、適性検査の時に触れた石が関わっているのかもしれない。あの光は恐らく魔法だな。武器やら攻撃手段が出来たんじゃないか?中部地方を取り戻した女の刀みたいな・・・ああこら、山田くん、あんまり詰め寄るな怖い。」

 山田さんは訓練時のリーダーを務めている。なので自分達を強化してくれるかもしれない武器のことは気になるのだろう。特徴はでかい。体がとてもでかい。俺だと?とても小さい。155cmだ。すごいだろ?こんなんでも18才何だぜ、ああナキソ。それと山田さんはとても無口だ。

 そんな話は置いといて、武器といえば、検査の後に貰ったこの刀。結局戦闘には使わないのか?ちょっと気になるが、取り敢えず今日の予定だな。

 「隊長、今日の訓練はどうしますか?」

 こんなときでも冷静な鏡さんが隊長に予定を聞く。
 鏡さんは戦闘課のスケジュールを管理してくれている。とても頭がいい。魔王軍がいなければ難関大学に入学する予定だったらしい。戦闘課の数少ない女性だ。

 「ふむ。いつ博士が来るから分からないからな、野外での訓練はやめておいて今日は戦闘時の戦いかたなどの話し合いをしよう。ここらで陣形の組み方などを考えたかったからな、ちょうどいい。」

 「分かりました。」

 鏡さんがデスクに戻り何やらメモを取っている。スケジュールを書き直しているのだろう。

 「現在は7時か。8時に会議室に集合で大丈夫か?・・・大丈夫だな。では、皆、それまでに各自準備しておくように。解散。」
 
 各自、デスクに戻り準備を始める。
 俺はメモ帳を用意して会議室に向かい、やることもないのでお茶の用意を始める。


 
 皆が集まってきたみたいだ。

 「陸斗くん。そろそろお茶持っていこっか。」

 「そうですね、桃歌さん。じゃあお茶入れますね。」

 一緒にお茶を用意してくれるのは、戦闘課でも穏やかに過ごす桃歌さんだ。中学、高校と茶道部だった彼女だ、いきなり戦闘してください。と、言わんばかりに戦闘課に連れてこられ、とても心ぼそかったらしい。でも、皆さんがとても良くしてくれて安心出来たと言っていた。特に始めに関わった俺と仲が良く、桃歌さん曰く、一番子供っぽくて優しそうだから。と言う。他の皆さんもとても優しいですよ!と、俺しか居なかったがフォローしていた。

 俺達は皆のところにお茶持っていく。

 「春樹さん、お茶どうぞです。」

 お茶を1つ春樹さんのところに置いていく。

 「あっ、海斗くん、それと桃歌さんも、いつもありがとうね。頂くよ。」

 春樹の爽やかスマイル。こうかはばつぐんだ。

 「「いえいえ、好きでやってることですから。」」

 ふふ、そうか。とにっこり。
 
 かっこいいよねー。
 ねー。
 と桃歌さんと話す。

 春樹さんは簡単に言うとイケメンだ。本人にかっこいいと言ったら、
 「別にイケメンでもなんでもないさ、僕はただ、かっこよくありたいと思ってるだけ。本当にイケメンな人は他に居るよ。」
 といっていた。イケメンだぁ。もう惚れちゃう。 

 「いつも思うんだがなぁ、桃歌ちゃんはともかく海斗も女の子らしいよな。それが長所といえばそれまでだが。おっと、お茶サンキューな。」

 「まあ、男らしいより女らしくありたいって思う男もいますよ。」

 「私も海斗くんがこういう性格で良かったって思いますよ。大蔵さん。」

 「ハッハッハッ、確かにそれはあるかもな。」

 大蔵さんが物凄い笑顔で俺の肩に手をのせる。
 
 大蔵さんは工業系の高校に居たらしい。戦闘課でも一番大人らしい。身体は横も縦もどちらも大きい。色々と作れるので戦闘に使えるものから娯楽の道具まで作ってくれる。親戚の叔父さんの様な雰囲気がある。 

 「そろそろ会議を始めるぞ。」

 隊長が声をかけたので俺と桃歌さんは自分の席に座り、会議を始まった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

処理中です...