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第4部 溺れる愛
5-9 ※
しおりを挟む「腰、揺れてる。本当は此処で甘やかしたいんだが……期待しただろ」
「診察室、じゃ……」
「あ、そうか。医局で秘密のカンファでもするか」
最賀に腕を引かれるまま、医局に連れられる。掴まれた掌が熱くて、陽菜は息が止まりそうだ。欲求不満とも取れる眼差しを悟られたことが、気恥ずかしくて。
いや、それだけでは無い。
最賀と過ごせる時間が、実家の売却に向けて着実に進む程に目減りしていった。その所為で、陽菜の疲労感を気遣って最賀はキス止まりである。
今朝はやんわりと誘ったつもりだが、時間に余裕があるのにも関わらず遅刻の単語を出すくらいだ。全く、本人はそのつもりは無いだろうが陽菜は微妙に傷心モードへ突入した。
そんなこともあり、最賀が医局に陽菜を押し込むと、カーテンを念入りに閉め、鍵の施錠をした。
休憩時間は一時間。彼等が帰ってくるまでに、この熱を一度放出したい。
最賀専用のデスクに手をつかされると、纏め上げた髪から覗く頸をべろりと舌が這う。ぞわぞわと背筋を撫でた。呼吸がし易いように、ワイシャツのボタンを三つ器用に背後から外される。
タイツを下げると、まん丸い臀部が現れて、喉仏が鳴った音が聞こえた気がした。唆るなあ、と独り言を呟いて、最賀は耳朶を舐る。
「ひ、……久し振り、だから加減……ッ」
分泌した蜜液がとろりと内腿を流れる。最賀は指に塗り付けると、優しく襞を摩り始めた。ちゅぷ、ちゅぷと攪拌される淫靡な音が大きい。互いの息遣いが近く聞こえる。服の上から胸元を優しく包まれ、弾力を楽しんでいる。
腰を突き出して、腹側を不意に節々の太い指がくっと執拗に曲げられる。霰もない声が喉を潜って行く。絶頂まで目の前だった。もう駄目、と内腿がガクガクと小刻みに震えた瞬間。
あの華麗な呼び出し音が流れた。皮肉にも、電話が鳴り響く。びくりと肩が動いて、陽菜は口元を手で覆う。動いて欲しくない、と体を捩って訴える。
「悪い、外線だ。もしもし?」
剛結なものが、容赦無く陽菜の隘路へ侵入する。全身が痺れる様な気持ち良さに、酔い痴れてしまう。患者かららしく、メモを取りながら最賀は話している。嫌だと首を横に振って拒もうとするが、ゆっくりとした嵌入を続けられる。
その背徳感ある行為に膣壁が収縮して、最賀を離さない。ちぐはぐな動きを見せた陽菜に対して、受話器は未だに置かなくて。早く電話を終えて欲しい。聞こえたらどうしよう、とドクドク鼓動が轟く。
とんとん、と奥を優しくノックされて、陽菜はシャツの袖を噛んで耐え忍ぶ。骨盤が開いてぬるりと蜜液が分泌されていく。はあ、と息を吐いてから声を抑える。動きは、単調なのに確実に陽菜が好きな場所を刺激する。
いい加減に……と、陽菜は涙で潤んだ双眸で最賀を睨み付けた。最賀の白衣を弱々しく掴んで、再度訴え掛ける。
すると、そのまま肘を逆に掴まれて抵抗を無効化した。先程とは打って変わって、揺さぶり始めたからだ。手をつかないと、体勢が崩れそうで、思わず踏ん張る。口元を抑えられず、小さくくぐもった声が口端から漏れそうだ。
体が思うように快楽に耐えてはくれない。最賀が隅々まで知り尽くした体である。陽菜の抵抗は虚しく、首を横に振って衣擦れ音と声が受話器に届かないことを願うしかなかった。
「──はい、午後一でいらして下さい。保険証持参して、はい、そうです」
漸く最賀は受話器を置くと、陽菜は堰き止めていた快楽の波をやっと受け入れた。一番大きな声で啼いて、弓形に上半身を撓った。テーブルには陽菜の汗と、涙で滴り濡れている。
搾り取ろうとする無意識な反応に、最賀は陽菜のもう片方の腕を捕まえた。まだ絶頂の余韻に浸っているのに。ご褒美を食べたりないらしい。愉悦に滲んだ陽菜の顔を見て、口角を上げて笑みを浮かべられる。
「声、一生懸命堪えてたな。俺のこときゅうきゅう締め付けて、離したくなかった?」
「意地悪! いま、も……ッ、努力してます!」
「……みーんな外に出払ってるのに?」
もういっそのこと、せめて口を塞いで欲しい。陽菜は最賀の唇を食んでやる。些細な反抗に、最賀も愉しそうに舌を絡める。
夢中になり過ぎて、メガネのフレームが当たっても、互いに深い口付けは止めなかった。
「だ、だめ……ッ、私、声……ッ、は、ぁあ……あ、あ、い、く……」
二度目の絶頂に身悶える。最賀の剛結は勢いを増す。陽菜は揺さぶられるがままになって、前髪が汗で額に張り付く。汗が毛穴から噴き出して、首筋に汗が垂れる。
達したばかりで脱力した体を最賀に支えてもらう。膝に力が入らず、ガクガクと崩れ落ちそうだった。
「──早いな?」
タイツのせいで、背後からばかりだ。濡れそぼった蜜口から一度抜かれると、途端に切なくなる。
陽菜はタイツを脱がしてもらうと、椅子に座って見せた男の腿に跨る。小さな手で添え、埋めると深くてつい涙を最賀の頬に落としてしまう。
「あ、ぁ……ん……まだ、動か、ないで……くださ、い」
「さて、スタッフが帰って来るまで可愛い恋人に満足してもらわないと」
「ダメ、だめだめだめっ!!」
ぎし、と椅子が軋む音がする。二人分の体重でも何とか持ち堪えてくれている。狭隘はしっかりと奥深く埋め尽くされ、これから収斂し吸着する。臍下が煮えたぎっていて、肩口に寄り掛かってしまう。
整った白髪混じりの男の髪をくしゃりと乱し、シャツボタンの二つ目を震える指で開ける。最賀の甘美なる香りに釣られて鼻先を埋めた。気持ち良くなると、最賀の剃られた生え際上の髪を掴む癖を直したい。
でも、後頭部の髪を指に通して舌を伸ばすから、以前みたいに悪い腕は一纏めにされるべきかもしれない。
陽菜は温かい水で膣内を潤し、与えられる強烈な快楽に音を上げた。白衣やスラックスを汚しそうだったからだ。制服のスカートは腰辺りに捲れてるから問題無いものの、最賀の衣服は別物である。
腰が勝手に突き上げられる度に一番快い所に当たるようにしてしまう。隔たりがあるのは、致しがた無い。
あれから一度も最賀は避妊具を外さないし、陽菜の生理周期を正確に把握している。胸が張って、下腹部痛がするのでこれは排卵痛なのかもしれない。この0.02ミリの壁が心苦しくも思うのは、奥に放たれたことが無いからか。
最賀の答えは一つであるのは、聞くまでもない。
「──暴君外科医からこっ酷くやられたのに……。駄目なら仕方無いな」
「う……、えと…………」
「戸惑うと直ぐ視線が泳いで、可愛いくて……手加減出来なくなる」
血の気が引いて行くのを感じ取り、陽菜は腰に添えた手に力が入ったことで、諦めるしかなかった。
きっかり一時間。陽菜はどろどろに蕩け、最賀に全身全霊をかけた御褒美を授けた。あまりの疲労感に動けない。手作り弁当は最賀の箸によって口まで届けられ、めいいっぱい休憩時間を医局で費やした。
大丈夫? 顔が赤いと戻って来たスタッフに尋ねられて、問題無いです! と答える羽目になったのだった。
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