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君の体が見たい 前
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君の体が見たい
やや広めの背中を白い制服に包まれ、袖口からは程よく筋肉を乗せた腕が緩やかなカーブを描き、血管の浮き出た手の甲へ繋がっている。
長く白い指が、形の良い頭を支えて、
指にかかる栗色の髪が、サラリと風に少し揺れた。
細い腰に付いている臀部も座っている為、こちらからは見えないけれど引き締まってキュッと上がっている事を知っている。
こんな舐め回すように目の前の男、同級生のセキヤの後ろ姿をを見ているが、俺は別に変態じゃない。ゲイでも無い。
陽キャな妹がいる為、女の怖さは身を持って知っているが、この十六年間好きになったのは女の子だったし、セキヤは顔面が素晴らしく整っているが
、タイプってわけでも無い。
ただ、素晴らしくバランスの取れた身体をしている。
身内に外国の血が入っているとかで、足の長い八頭身。顔が小さく、手や腕が長くスラリとしている。
噂じゃモデルや芸能事務所からもよくスカウトされているらしい。
そんな完璧なスタイルと顔を持っているセキヤはそれをひけらかすわけでも無く、常に淡々としている為周りの男も女も皆「クール」「かっこいい」と逆に集まってくる。特に取り巻きみたいな連中は、いつもセキヤの周りに居て、適当にしか相槌をうっていないにも関わらず何かしら気を引こうと話し掛けている。
黙っているとずっーとぼっちの俺とは違うらしい。なぜ。
まあそれ位、素晴らしい体(と顔)をしているのだ。
そんなセキヤは今日も今日とて素晴らしい身体をしている。
何かトレーニングでもしているんだろうか?プロテインとか飲んでるのか?背中を覆う白い制服が透けないかと睨むように見つめ続けていると、不意にセキヤが振り返った。
「俺の背中、何かついてんの?」
「……え、は? 何?……」
「何、じゃなくて何で俺の背中いつもじっと見てるわけ?しょっ中見てるよね? 」
「いや……別に見てないけど……」
目をうろうろさせ分かりやすく動揺する俺に、セキヤはまっすぐと見据え、背もたれに腕をかけながら俺に問うてくる。
目を合わせられなくて、伏せた目線に入る腕も筋が入って美しい……。
実際は背中だけじゃ無く全てを見ているが、話した事も無いクラスメイトにそんな事を言うと、気味わるがられるという事くらい俺でも分かっている。が、何と返せばいいのか言葉に詰まる……。
セキヤはため息を、出しながらいう
「あのさぁ、黒板の上にあるモニターでお前がガン見してんの映ってる。分かるんだよ」
「!!」
なんてこった。
確かにいつもは消されている、俺たちの席より少し高い位置にある、全体集会用に使われるモニター。
黒い画面に反射して映っていたなんて。というか、分かっていたなら疑問形できかないでほしい。知らないって言って恥かいたじゃん。
仕様がなく、俺は少しの嘘を混ぜて言い訳した。
「……その、ごめん、セキヤの体格いいから何かトレーニングしてんのかなって思って……俺もそうなりたいなって見てたんだ。気分悪くさせた、ごめんな」
「……ふーん。体格なら斜め前にモトキがいるじゃん。あいつ水泳部だから肩とかデカイし、体も逆三角形じゃん」
そう言って、セキヤはあまり腑に落ちてない顔で綺麗な目を眇める。
確かにそう。
セキヤの隣のモトキ君はザ、マッチョ。腕とか太ももとかパツパツだし。
身長はそこそこあるが、いかにもインドアですって感じのヒョロイ身体の俺とは違い、とても高一とは思えない身体をしている。
純粋に体格憧れるならモトキ君を見ているだろうな…。
だが、違う!!セキヤ、違うんだよ!
君は何も分かってない!!
美しい身体とマッチョはジャンルが違う!
俺はバレエダンサーのような、しなやかな筋肉、豹のように動く身体が見たいんであって、
ゴツいぱんぱんに詰まった彫刻のような筋肉を見たいわけじゃ無いんだよ!
そう心の中だけでセキヤに訴えていると、黙ってしまった俺を彼は興味を無くしたように、どうでもいいけどと呟き、
「俺は特に何もしてねーし。……あんまガン見されるとやりづれーから。モトキに聞け。なあ、モトキ」
と、隣の席のモトキ君に話しかけた。
モトキ君にぶん投げる気満々じゃないか!
何も知らないモトキ君は「ん?」とセキヤを見る。
「なんか、こいつ……こいつが、お前みたいに筋肉つけたいんだと、話聞いてやって」
「え?そうなんだ。別にいいけど、俺はほとんど部活で泳いでるだけだしなぁ……クロダ、クロールとか出来る? 」
セキヤがどんどん話を進めていこうとするのを、俺は焦りながらも口を挟もうとするが、同じクラスになって3ヶ月は経つのに、俺の名前を覚えていなかった事にショックを受けてそのタイミングを逃してしまう。
それに引き換え、筋肉のモトキ君は苗字をちゃんと呼んでくれてすげーいい奴だ……。
そんなモトキ君は水泳部の見学くる?と笑顔で俺に聞いてくる。今日、顧問の先生に聞いてみるけどと、恐ろしい事を言い出した。
やばい。このままでは、入りたくもない水泳部に見学に行く事になる。
あの厳しい体育の教師が顧問を務める水泳部になんか見学に行ったら、今更入りたく無いと言えず、流されてしまう可能性大だ。俺は何か言わなくちゃと焦って大声を出した。
「ち、違う!!俺はセキヤの体が目当てなんだ! 」
途端に静まりかえる教室
遠くで鳥の囀るこえが聞こえた気がした。
シン…とした休み時間、クラスに響いた俺の声に、モトキくんは動きを止め、近くにいた奴らがこちらを勢いよく振り向いたのが視界の端に入る。その中にはセキヤに群れる、一軍の陽キャ達も含まれている。
明日から俺はクラスメイトはもとより、この一軍ギャル女子や、一軍パーリー男子達に、変態だとイジメられるかもしれない……。
入学して早々に俺は孤独に一人、これからの一年間を過ごす事を想像して戦慄する。終わった。
そして目の前のセキヤは目を見開いた後、気持ち悪いものを見るような目で俺を見ながら一言、呟いた。
「……きっも」
セキヤを初めて見たのは、高校に入学してから。
高校入学に合わせてアメリカから日本に帰ってきた帰国子女らしい。
入学式のから一人、カラスの中に混ざる白鳥みたいに目立ち、浮きまくっていた。
佇まいも何もかも、スローモーションとキラキラのエフェクトかかってるみたいに、とにかく現実離れしていた。
陽の光を受けるサラサラの栗色の髪と透き通るような肌。
くっきりした力強い目に、通った高い鼻。周りの女子や、先生達でさえ見惚れていた。
そして俺もその中の一人。
ただ、俺はセキヤの体に衝撃を受けた。
そして、セキヤと同じクラスになり身直に観察出来た奇跡。
何あの足の長さと腕の長さ!!あの優雅さを伴う体重移動!何を食べたらあの身体になれるのだろうか。数学は得意じゃ無いけど黄金比は完璧だと思う。
髪を掻き上げるその長い指。窓を向いている、頬から首にかけての完璧なライン。長すぎる足を組み直すその動き。肩から腰に至っては彫刻のような形だ。全ての動きが、神聖なものに見える。こんな人間が身直にいるなんて、なんて奇跡。
一度、購買でたまたま隣に並んだ事があった。
俺は身長が平均より高い方だが、並んだセキヤの腰の位置が俺とは全然違っていて衝撃を受けた。
認めたくないが、俺は胴長だったんだろう。
そう思ったら彼の胴の長さも俄然見たくなった。そこから流れるようにアソコやココも見たくなる。
彼の太ももはどのくらい筋肉があるんだろう?臀部は?
彼にだけ沸き起こる身体への興味。だが誰にも知られる訳にはいかず、俺は遠くからその肢体を見つめるだけ。誰に言い訳しているのか分からないが、俺は変態じゃないぞと思いながら。
そうしているうちに席替えをする事になって、セキヤの真後ろになった俺はここぞとばかりに白い制服が包む彼の体を観察し始める。
どうなっているんだろう―――。
セキヤの、体が見たい。
「……くろ、……クロダー……!聞いてるー?!」
近いところから苗字を呼ばれて回想から引き戻される。
俺がセキヤの体を見たいと言ったあの後、結果的に俺はいじめに遭う事は無かった。
一軍取り巻き軍団は、俺の事を面白いと逆に構い始めたからだ。
「セキヤの体を見たいとか欲望ダダ漏れでめっっちゃ笑うんですけどー!」
「分かる!私も見たいもーん!セキヤのからだー!」
「お前めっちゃ面白いなー!あんなデカい声で変態宣言するとかマジでいい度胸だわ~」
と、意外にも俺にも話しかけてくれるようになった。
ただ俺は変態宣言はしていないぞ。
そして、当のセキヤはというと――
「……こっち見てんじゃねーよ」
俺と目が合うとめちゃくちゃメンチ切ってくる。
偶々合っただけなんだけど向こうからしたら同級生に、しかも、同性からあんな事を言われたら不快だろう。だが、俺はあの発言を境に何かを吹っ切った。
なんだかもう、この思いを抑えなくてもよくね?と気持ちを隠さなくなった。代わりに捨てたのは羞恥心か、クラスメイトからの俺への心象か。
どっちにしろセキヤの体への好奇心に比べても小さい物だ。俺の人生だし。
休み時間、携帯をいじるセキヤの背中に向かって話しかける。ゲームが好きらしい。休み時間の度に話しかける俺を無視しまくるセキヤだが、席を離れて物理的に距離を取られる事は無い。
意外な感じがして、何故か聞いてみたら「お前がどっか行け」と言われた。
「なんでセキヤは部活に入ってるわけでもないのにそんなに体格がいいんだ?遺伝かなんか?」
「……」
「セキヤのお祖父さんて、アメリカ人なんだっけ?」
「……」
「父親も体格がいいのか?」
「……」
「えーとねぇ、セキヤの体格がいいのは母親の家系譲りで確か祖父さんがアメリカ人だったよな?そんで、セキヤのお父さんも百八十超えてたよね?」
「タニ! この変態に俺ん家の情報を教えんな!! 」
ものすごい勢いででこっちを振り向きセキヤが怒る。
俺の質問にセキヤは悉く無視するが、取り巻きの一人、タニ君が和かに答えてくれた。
タニ君はセキヤ程じゃないが、なかなかの美形で彼もよく女子に囲まれている。
飄々としていて、ピアスもバチバチに開けてる、フワッとした黒髪タレ目のイケメン。
俺のことを面白いと最初に言い出して笑ってから、他の取り巻き達も俺の事を割と好意的にみてくれる様になった。ありがとう、タニ君。
「誤解だ!親もそうならその八頭身の骨格も遺伝なのかと思っただけだ!身体を見たいのはセキヤだけだ」
「お前……なんで俺は呼び捨てなんだ……?言ってる意味も分からん……マジで怖い。もう喋んな……」
またもや虫を見るようにセキヤが俺を見ながら言う。
「俺の中でセキヤはなんか、性別を超越している感じがするから…? 」
俺は自分でも何故セキヤだけ呼びすてにしてしまうらのか分からない。
友達だからとかおがましい事は決して思ってはいないのだが。
「ま、クロはセキヤひと筋だもんねぇ~」
「その通り」
「キリッとすんなキモい……なんだそのクロって、あだ名か?お前らいつの間にそんな仲良くなったんだ」
「そ~クロダだから、クロ君。犬っぽいし可愛いでしょ? 」
なんだ犬っぽいって。
少しモヤっとするが、彼の感性に俺は助けられたところもあるから何も言わないでおく。
「セキヤも少しくらい見せてあげりゃあいいじゃん、身体くらい別に減るもんじゃないし。ほんと、焦らすよね~」
「アホか、こいつは俺のケツも見たいって言ってんだぞ。普通に嫌だわ」
「違うぞセキヤ、単純に体の筋肉のつき方とかを見てみたいだけだ。絵画を鑑賞する感覚と同じだ。想像するにセキヤの肌質だと絶対に綺麗だと思う」
一息で言った俺の言葉に、二人は少しポカンとした後、タニ君は爆笑しセキヤは走って逃げて行った。
君の体は、見られ無いかもしれん…。
やや広めの背中を白い制服に包まれ、袖口からは程よく筋肉を乗せた腕が緩やかなカーブを描き、血管の浮き出た手の甲へ繋がっている。
長く白い指が、形の良い頭を支えて、
指にかかる栗色の髪が、サラリと風に少し揺れた。
細い腰に付いている臀部も座っている為、こちらからは見えないけれど引き締まってキュッと上がっている事を知っている。
こんな舐め回すように目の前の男、同級生のセキヤの後ろ姿をを見ているが、俺は別に変態じゃない。ゲイでも無い。
陽キャな妹がいる為、女の怖さは身を持って知っているが、この十六年間好きになったのは女の子だったし、セキヤは顔面が素晴らしく整っているが
、タイプってわけでも無い。
ただ、素晴らしくバランスの取れた身体をしている。
身内に外国の血が入っているとかで、足の長い八頭身。顔が小さく、手や腕が長くスラリとしている。
噂じゃモデルや芸能事務所からもよくスカウトされているらしい。
そんな完璧なスタイルと顔を持っているセキヤはそれをひけらかすわけでも無く、常に淡々としている為周りの男も女も皆「クール」「かっこいい」と逆に集まってくる。特に取り巻きみたいな連中は、いつもセキヤの周りに居て、適当にしか相槌をうっていないにも関わらず何かしら気を引こうと話し掛けている。
黙っているとずっーとぼっちの俺とは違うらしい。なぜ。
まあそれ位、素晴らしい体(と顔)をしているのだ。
そんなセキヤは今日も今日とて素晴らしい身体をしている。
何かトレーニングでもしているんだろうか?プロテインとか飲んでるのか?背中を覆う白い制服が透けないかと睨むように見つめ続けていると、不意にセキヤが振り返った。
「俺の背中、何かついてんの?」
「……え、は? 何?……」
「何、じゃなくて何で俺の背中いつもじっと見てるわけ?しょっ中見てるよね? 」
「いや……別に見てないけど……」
目をうろうろさせ分かりやすく動揺する俺に、セキヤはまっすぐと見据え、背もたれに腕をかけながら俺に問うてくる。
目を合わせられなくて、伏せた目線に入る腕も筋が入って美しい……。
実際は背中だけじゃ無く全てを見ているが、話した事も無いクラスメイトにそんな事を言うと、気味わるがられるという事くらい俺でも分かっている。が、何と返せばいいのか言葉に詰まる……。
セキヤはため息を、出しながらいう
「あのさぁ、黒板の上にあるモニターでお前がガン見してんの映ってる。分かるんだよ」
「!!」
なんてこった。
確かにいつもは消されている、俺たちの席より少し高い位置にある、全体集会用に使われるモニター。
黒い画面に反射して映っていたなんて。というか、分かっていたなら疑問形できかないでほしい。知らないって言って恥かいたじゃん。
仕様がなく、俺は少しの嘘を混ぜて言い訳した。
「……その、ごめん、セキヤの体格いいから何かトレーニングしてんのかなって思って……俺もそうなりたいなって見てたんだ。気分悪くさせた、ごめんな」
「……ふーん。体格なら斜め前にモトキがいるじゃん。あいつ水泳部だから肩とかデカイし、体も逆三角形じゃん」
そう言って、セキヤはあまり腑に落ちてない顔で綺麗な目を眇める。
確かにそう。
セキヤの隣のモトキ君はザ、マッチョ。腕とか太ももとかパツパツだし。
身長はそこそこあるが、いかにもインドアですって感じのヒョロイ身体の俺とは違い、とても高一とは思えない身体をしている。
純粋に体格憧れるならモトキ君を見ているだろうな…。
だが、違う!!セキヤ、違うんだよ!
君は何も分かってない!!
美しい身体とマッチョはジャンルが違う!
俺はバレエダンサーのような、しなやかな筋肉、豹のように動く身体が見たいんであって、
ゴツいぱんぱんに詰まった彫刻のような筋肉を見たいわけじゃ無いんだよ!
そう心の中だけでセキヤに訴えていると、黙ってしまった俺を彼は興味を無くしたように、どうでもいいけどと呟き、
「俺は特に何もしてねーし。……あんまガン見されるとやりづれーから。モトキに聞け。なあ、モトキ」
と、隣の席のモトキ君に話しかけた。
モトキ君にぶん投げる気満々じゃないか!
何も知らないモトキ君は「ん?」とセキヤを見る。
「なんか、こいつ……こいつが、お前みたいに筋肉つけたいんだと、話聞いてやって」
「え?そうなんだ。別にいいけど、俺はほとんど部活で泳いでるだけだしなぁ……クロダ、クロールとか出来る? 」
セキヤがどんどん話を進めていこうとするのを、俺は焦りながらも口を挟もうとするが、同じクラスになって3ヶ月は経つのに、俺の名前を覚えていなかった事にショックを受けてそのタイミングを逃してしまう。
それに引き換え、筋肉のモトキ君は苗字をちゃんと呼んでくれてすげーいい奴だ……。
そんなモトキ君は水泳部の見学くる?と笑顔で俺に聞いてくる。今日、顧問の先生に聞いてみるけどと、恐ろしい事を言い出した。
やばい。このままでは、入りたくもない水泳部に見学に行く事になる。
あの厳しい体育の教師が顧問を務める水泳部になんか見学に行ったら、今更入りたく無いと言えず、流されてしまう可能性大だ。俺は何か言わなくちゃと焦って大声を出した。
「ち、違う!!俺はセキヤの体が目当てなんだ! 」
途端に静まりかえる教室
遠くで鳥の囀るこえが聞こえた気がした。
シン…とした休み時間、クラスに響いた俺の声に、モトキくんは動きを止め、近くにいた奴らがこちらを勢いよく振り向いたのが視界の端に入る。その中にはセキヤに群れる、一軍の陽キャ達も含まれている。
明日から俺はクラスメイトはもとより、この一軍ギャル女子や、一軍パーリー男子達に、変態だとイジメられるかもしれない……。
入学して早々に俺は孤独に一人、これからの一年間を過ごす事を想像して戦慄する。終わった。
そして目の前のセキヤは目を見開いた後、気持ち悪いものを見るような目で俺を見ながら一言、呟いた。
「……きっも」
セキヤを初めて見たのは、高校に入学してから。
高校入学に合わせてアメリカから日本に帰ってきた帰国子女らしい。
入学式のから一人、カラスの中に混ざる白鳥みたいに目立ち、浮きまくっていた。
佇まいも何もかも、スローモーションとキラキラのエフェクトかかってるみたいに、とにかく現実離れしていた。
陽の光を受けるサラサラの栗色の髪と透き通るような肌。
くっきりした力強い目に、通った高い鼻。周りの女子や、先生達でさえ見惚れていた。
そして俺もその中の一人。
ただ、俺はセキヤの体に衝撃を受けた。
そして、セキヤと同じクラスになり身直に観察出来た奇跡。
何あの足の長さと腕の長さ!!あの優雅さを伴う体重移動!何を食べたらあの身体になれるのだろうか。数学は得意じゃ無いけど黄金比は完璧だと思う。
髪を掻き上げるその長い指。窓を向いている、頬から首にかけての完璧なライン。長すぎる足を組み直すその動き。肩から腰に至っては彫刻のような形だ。全ての動きが、神聖なものに見える。こんな人間が身直にいるなんて、なんて奇跡。
一度、購買でたまたま隣に並んだ事があった。
俺は身長が平均より高い方だが、並んだセキヤの腰の位置が俺とは全然違っていて衝撃を受けた。
認めたくないが、俺は胴長だったんだろう。
そう思ったら彼の胴の長さも俄然見たくなった。そこから流れるようにアソコやココも見たくなる。
彼の太ももはどのくらい筋肉があるんだろう?臀部は?
彼にだけ沸き起こる身体への興味。だが誰にも知られる訳にはいかず、俺は遠くからその肢体を見つめるだけ。誰に言い訳しているのか分からないが、俺は変態じゃないぞと思いながら。
そうしているうちに席替えをする事になって、セキヤの真後ろになった俺はここぞとばかりに白い制服が包む彼の体を観察し始める。
どうなっているんだろう―――。
セキヤの、体が見たい。
「……くろ、……クロダー……!聞いてるー?!」
近いところから苗字を呼ばれて回想から引き戻される。
俺がセキヤの体を見たいと言ったあの後、結果的に俺はいじめに遭う事は無かった。
一軍取り巻き軍団は、俺の事を面白いと逆に構い始めたからだ。
「セキヤの体を見たいとか欲望ダダ漏れでめっっちゃ笑うんですけどー!」
「分かる!私も見たいもーん!セキヤのからだー!」
「お前めっちゃ面白いなー!あんなデカい声で変態宣言するとかマジでいい度胸だわ~」
と、意外にも俺にも話しかけてくれるようになった。
ただ俺は変態宣言はしていないぞ。
そして、当のセキヤはというと――
「……こっち見てんじゃねーよ」
俺と目が合うとめちゃくちゃメンチ切ってくる。
偶々合っただけなんだけど向こうからしたら同級生に、しかも、同性からあんな事を言われたら不快だろう。だが、俺はあの発言を境に何かを吹っ切った。
なんだかもう、この思いを抑えなくてもよくね?と気持ちを隠さなくなった。代わりに捨てたのは羞恥心か、クラスメイトからの俺への心象か。
どっちにしろセキヤの体への好奇心に比べても小さい物だ。俺の人生だし。
休み時間、携帯をいじるセキヤの背中に向かって話しかける。ゲームが好きらしい。休み時間の度に話しかける俺を無視しまくるセキヤだが、席を離れて物理的に距離を取られる事は無い。
意外な感じがして、何故か聞いてみたら「お前がどっか行け」と言われた。
「なんでセキヤは部活に入ってるわけでもないのにそんなに体格がいいんだ?遺伝かなんか?」
「……」
「セキヤのお祖父さんて、アメリカ人なんだっけ?」
「……」
「父親も体格がいいのか?」
「……」
「えーとねぇ、セキヤの体格がいいのは母親の家系譲りで確か祖父さんがアメリカ人だったよな?そんで、セキヤのお父さんも百八十超えてたよね?」
「タニ! この変態に俺ん家の情報を教えんな!! 」
ものすごい勢いででこっちを振り向きセキヤが怒る。
俺の質問にセキヤは悉く無視するが、取り巻きの一人、タニ君が和かに答えてくれた。
タニ君はセキヤ程じゃないが、なかなかの美形で彼もよく女子に囲まれている。
飄々としていて、ピアスもバチバチに開けてる、フワッとした黒髪タレ目のイケメン。
俺のことを面白いと最初に言い出して笑ってから、他の取り巻き達も俺の事を割と好意的にみてくれる様になった。ありがとう、タニ君。
「誤解だ!親もそうならその八頭身の骨格も遺伝なのかと思っただけだ!身体を見たいのはセキヤだけだ」
「お前……なんで俺は呼び捨てなんだ……?言ってる意味も分からん……マジで怖い。もう喋んな……」
またもや虫を見るようにセキヤが俺を見ながら言う。
「俺の中でセキヤはなんか、性別を超越している感じがするから…? 」
俺は自分でも何故セキヤだけ呼びすてにしてしまうらのか分からない。
友達だからとかおがましい事は決して思ってはいないのだが。
「ま、クロはセキヤひと筋だもんねぇ~」
「その通り」
「キリッとすんなキモい……なんだそのクロって、あだ名か?お前らいつの間にそんな仲良くなったんだ」
「そ~クロダだから、クロ君。犬っぽいし可愛いでしょ? 」
なんだ犬っぽいって。
少しモヤっとするが、彼の感性に俺は助けられたところもあるから何も言わないでおく。
「セキヤも少しくらい見せてあげりゃあいいじゃん、身体くらい別に減るもんじゃないし。ほんと、焦らすよね~」
「アホか、こいつは俺のケツも見たいって言ってんだぞ。普通に嫌だわ」
「違うぞセキヤ、単純に体の筋肉のつき方とかを見てみたいだけだ。絵画を鑑賞する感覚と同じだ。想像するにセキヤの肌質だと絶対に綺麗だと思う」
一息で言った俺の言葉に、二人は少しポカンとした後、タニ君は爆笑しセキヤは走って逃げて行った。
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