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「はい、お茶をお持ちしました」
「ああ、ありがとう」
俺はカップを受け取ると、ゆっくりと口に含んだ。すると芳しい香りが広がる。
俺は紅茶が好きなので、彼女の入れる茶はいつも楽しみにしている。
少女は嬉しそうな笑みを浮かべると、こう尋ねてきた。
「美味しくなかったですか?」
「いや、すごく美味しかったよ」
「よかった……!」
そう言って、少女は安堵の息を漏らす。それから俺の顔を見上げてきた。
どうやら感想を求めているらしい。
なので俺は、率直に告げることにした。
「毎日入れてくれるから、おかげで助かっているよ」
「えへへ……」
照れたような笑みを浮かべる。
それから思い出したように言う。
「そういえば、ご主人様は今度の休日は何かご予定はありますか?」
「特にないけど……」
「もしよろしければ、一緒に街に出掛けませんか?」
「構わないよ」
断る理由もないので、俺は承諾した。
すると少女は顔を輝かせる。
「本当ですか!?」
「うん」
「嬉しいです! 私、頑張って準備してきますねっ!」
そう言うと部屋を出ていった。
(喜んでくれると俺としても気分が良いな)………………
その日の夜のこと……とある路地裏にて……。
ザッザッと足音が響いていた。複数の人間が移動している音だ。人数は全部で五人いて、いずれも武装しているようだった。彼らは狭い通路の中を突き進むと、ある場所で立ち止まる。そこには地下に続く階段があった。先頭にいた男が呟く。
「ここだな」
続いて別の男の声が聞こえてくる。
「間違いありません」
「よし、行くぞ」
男たちは慎重に降りていった。やがて広い空間に出る。そこは洞窟のような場所だった。
奥には祭壇のようなものがあって、そこに誰かが横になっている。どうやら眠っているみたいだ。
すると突然、背後から別の男が現れた。それも三人同時にだ。
それに気づいた先頭の男は慌てて振り返ろうとするが、すでに遅かった。彼の喉元にナイフが突き立てられ、そのまま倒れてしまう。他の二人も同様だった。
現れたのはいずれも覆面をした連中で、手慣れた様子で次々と仲間を倒してゆく。あっという間に全員が地面に伏してしまった。
それを確認してから、最後の一人が前に進み出る。
「ボス」
「おう」
ボスと呼ばれたのは、長身の男だった。年齢は三十代前半くらいだろうか。髪は銀色に染まっていて、瞳は赤く染まっている。全身を黒ずくめの服装に身を包んでいた。その顔つきはどこか爬虫類を思わせる。
彼は倒れる仲間たちに目を向けて、小さく嘆息する。
「まったく、こんな奴らに手間取るとは情けないな」
それから視線を戻す。すると銀髪をした男の目が赤黒く変色した。すると瞳が縦に割れてゆく。その口からは牙が覗いていて、手足には鱗が生えてきた。
そう、この男の正体は竜人だったのだ。
彼は小さく笑う。
「まぁいいさ。どうせこの程度の雑魚どもじゃ、役に立たないからな」
そして、その視線の先には少女の姿がある。
それは美しい少女だった。年齢は十歳くらいだろう。
だが、その身に纏う雰囲気は普通ではなかった。明らかに異常だと分かる。なぜなら少女の身体からは、黒いオーラが立ち上っていたからだ。その禍々しさは、まるで邪神の降臨を彷彿とさせるほどだった。
だが、それでも彼女は美しかった。
少女は虚ろな瞳で宙空を眺めている。
その姿はまるで魂が抜けてしまったかのようだ。
それを見て、銀髪の男は満足げに微笑む。
「これで儀式の準備は整った。あとは待つだけだ。ふはははははは!」
その笑い声は暗い闇の中に響き渡った。◆ それから数日後の朝……領主の館にある会議室では、緊急会議が開かれていた。出席者は領主をはじめ、主要な役職に就いている者たちである。その中には俺も含まれていた。
領主は険しい表情で言う。
「つまり、その少年が魔王軍の幹部であると……そう言いたいのか?」
俺は重々しく首肯する。
「はい、そう考えております」
領主は眉根を寄せながら言葉を続ける。
「だが、それはあり得ないはずだ」
俺はその理由を説明する。
まず第一に、魔王軍は人間族が支配していた国を滅ぼしていた。だから魔族の勢力範囲は人間の国々よりずっと広範囲に及んでいる。だから仮に幹部クラスの人物が転生者であった場合、必ず噂になるはずだったのだ。それがないという時点で結論は明らかだと思うのだが、どうやら違うらしい。
そこで今度は、俺が説明を行うことになった。
もちろん俺は嘘偽りなく話したが、どうしても信じてもらえなかったので、仕方なく映像魔法を使うことにしたのだ。そして壁に映像を映し出す。
そこには先日、俺たちを襲った刺客たちの姿が映し出された。
彼らは俺が倒した後に拘束したので、身動きが取れないように縛られている状態だった。その姿を見ても、やはり信じられないといった感じだったが、なんとか納得してくれたようだ。
そこで領主が質問を投げかけてくる。
「それで、これから君はどうするつもりなんだ?」
俺は真剣に答える。
「無論、始末します」
「……本気なのか?」
「はい」
「分かった。だが、できれば君の手は汚さないで欲しい」
「承知しております」
「それから万が一に備えて、護衛を手配しておく」
「ありがとうございます」
俺は頭を下げてから退室した。
それから数日が経過して、俺は再び街に戻ってきた。
目的は当然、襲撃者である。
あれからさらに調べたところ、例の組織は魔王軍の中でもかなり下の地位にいることが分かった。だが、そんな連中であっても、放置するのは危険である。もしも魔王軍が本格的に攻め込んできたとき、彼らの存在が大きな障害となる可能性があった。だからこそ今回の件で片づけておく必要があると考えたわけだ。
ちなみに今回の戦いに際して、俺はひとりで行動することにした。理由はいくつかあって、まずは俺が単独の方がやりやすいという点が挙げられる。俺が派手に暴れれば、それだけ敵の注意を引きつけられるので、その間に他のメンバーが潜入するという作戦なのだ。
ただ、もちろんリスクもある。敵は複数人で襲ってくる可能性が高いので、こちらが圧倒的に不利になってしまう点だ。そのため俺は保険をかけることにした。
そこで俺が頼んだのは、以前も世話になった暗殺ギルドの面々だ。今回は俺の護衛についてもらうことにしたので、報酬についても弾んでおいた。すると彼らは二つ返事で引き受けてくれたので、とても助かった。
それから数日後の夜……俺は人気のない路地裏へとやってきた。
周囲には誰もいない。俺は周囲に結界を張り巡らせると、静かに呪文を唱えた。すると地面が盛り上がってきて、そこからゴーレムが出現する。その数は全部で三体で、いずれも身長は二メートルを超えていた。
俺は念話で指示を出す。
『お前たちは周囲の警戒を行ってくれ』
すると、それぞれがバラバラの方向に向かって歩き出した。
それから俺は、ゆっくりと建物の陰から姿を現す。
すると目の前には五人の男たちがいた。全員が武装していて、その瞳は赤く輝いている。おそらく全員、竜人なのだろう。
俺は冷めた目を向ける。
「わざわざ俺の前に現れるとはな」
するとリーダー格と思われる男が答えた。
「ふん、馬鹿め! こうでもしないと貴様を殺すことができないからな!」
続いて別の男が言う。
「俺らは強いんだよ! あのクソガキとは違う!」……どうやら彼らは俺のことを見くびっているらしい。
(なら試してみるか)
俺は内心でほくそ笑みつつ、挑発するように言う。
「やってみるか?」
すると案の定、相手はすぐに乗ってきた。俺の言葉に乗せられたのだろう。その顔は怒りに歪んでいるように見えた。ただ、ここで戦うつもりはないらしく、武器を構える様子はなかった。
その代わりにリーダーらしき男は問いかけてくる。「おい、小僧! 命乞いをするチャンスを与えてやる! 今すぐ投降しろ!」
俺は鼻で笑って返す。
「はっ! 寝言は死んでから言うものだぜ」
すると男たちは激昂したように叫ぶ。
「この野郎!」
「ぶっ殺してやる!」
そう言って襲いかかってこようとした瞬間、突然、五人全員が地面に倒れ込んだ。何が起こったのか分からないといった顔をしている。
それから彼らは起き上がると、すぐに俺に攻撃を加えようとしてきた。しかし、それも途中で中断される。彼らは地面に倒れたまま動かなくなった。
その様子を確認してから、俺は口を開く。
「安心していいぞ。殺してはいない」
その言葉を聞いて、五人は安堵の息を漏らす。
「な、なんなんだよ、今のは……」
「く、くそぉ、動けねぇ」
「ちくしょう、こんなはずじゃなかったのによ」
俺は肩をすくめる。
「悪あがきはやめておけ。どうせ無駄だ」
すると男のひとりが尋ねてくる。
「な、なぁ、頼むよ。助けてくれないか? 金だって払うからさぁ」
俺は小さく嘆息する。
「残念だが、そういうのは間に合っている。それに言ったはずだ。もう遅い、と」
その言葉を聞いた直後、男の顔が絶望に染まる。
俺は小さく笑う。
「さようなら」
そう告げた後、指をパチンッと鳴らした。
次の瞬間、彼らの身体が光に包まれたかと思うと、その場から消え去った。転移魔法を使ったのだ。これは以前に使っていたのと同じ魔法だが、実は改良を加えてある。以前のものは一度しか使えなかったが、こちらは複数回使えるようになったのだ。ただし、使用回数については術者の魔力に依存する。
そして俺が使ったのは、上級レベルの魔法使いにしか使えない魔法だった。だから、たとえ相手が竜人であったとしても、逃げ切ることは難しかったはずだ。仮に運良く生き延びることができたとして、竜人たちには仲間がいるはずだ。だから俺が見逃したところで、結局は殺されることになるだろう。ならば俺の手で殺した方が後腐れがないと思ったわけだ。
(まぁ、どのみち殺すつもりだったけどな……)
俺は嘆息する。
その後、俺は街の外へ出た。そして、あらかじめ用意していた馬車に乗り込む。中にはベッドやトイレなどが設置されていて、快適な旅ができるようになっていた。この馬車で移動しながら、目的地まで向かう予定なのだ。
こうして俺は魔王軍の幹部を討伐するために出発した――
数日後、俺たちはとある村に到着した。
その村は、山間の小さな農村である。人口は五十人ほどだろうか。あまり大きくはないが、それなりに活気があるようだ。俺は村の入口に立って周囲を眺めていたが、特に変わったところは見られない。平和そのものという感じで、実に長閑な雰囲気があった。
俺は御者台で手綱を握っている女性に話しかけた。
「この村に、なにか特徴はありますか?」
女性は穏やかな口調で言う。
「特徴ですか?」
「えぇ、なんでも構いません」
「うーん、そうですね……あ、確か、温泉があるんですよ」
「ほう、それは興味深い」
俺は素直に感心した。
それから少しの間、話を聞いていたが、どうも魔王軍の気配はなさそうだ。そこで俺は、仲間たちに偵察を命じることにした。
「それでは頼みました」
俺がそう口にすると、ふたりの女性が姿を見せて、それぞれ走り去っていった。彼女たちは隠密行動が得意なので、適任だと考えたのである。
残った俺は村長の家へと向かう。
すると出迎えてくれたのは恰幅の良い男性であった。彼は俺を見るなり、嬉しそうな笑顔を浮かべて歓迎してくれる。
「よく来てくださいました。私は当家の執事を務めております、オランド・グリーブです。よろしくお願いいたします」
俺は軽く頭を下げる。
「こちらこそ、よろしく」
すると男性は微笑む。
「ご覧の通り、田舎の寂れた村でございますが、精一杯のおもてなしをさせていただきますので、どうか楽しんでいってくださいませ。ところで、失礼ながらお客様は冒険者でございますかな?」
俺は苦笑いしつつ答える。
「いえ、違います」
「左様でございますか」
「もしかしたら勘違いさせてしまったかもしれませんが、私たちは観光目的で訪れただけです」
「なるほど、確かに一見すると、そのような雰囲気でございますね」
「えぇ」
それからしばらく話した後、俺は客室に案内された。部屋の中は広く、豪華な調度品が揃っている。
俺はソファーに腰掛けると、改めて室内を見回した。すると壁に肖像画がかけられていることに気づく。そこには、ひとりの女性の姿が描かれていた。年齢は二十代半ばくらいに見える。長い黒髪に切れ長の目をした美人で、白いドレスのようなものを着ており、頭にはティアラのような装飾品をつけていた。
その美しさに思わず見惚れてしまう。
(どこかで見たことがある気がするが……)
すると、そんな俺の様子を見て、隣に座っていた男性が説明してくれた。
「そちらの肖像画は、先代の当主である私の父のものです」
俺は慌てて頭を下げた。
「申し訳ありません。不作法でした」
すると男性は笑みを見せる。
「お気になさらず。私にとっては大切な家族の肖像でしたが、今では過去のものですから」
「過去……とは?」
「実は昨年、父が亡くなりまして、今は私が家を継いでいます」
「なんですって!?」
俺は驚いた。まさか領主が亡くなっているなんて思いもしなかったからだ。
そこで俺は思い出す。先日、街で聞いた噂だ。最近、領主の体調が悪いという噂が流れており、実際に姿を見た者はいないという話だった。俺はそれを単なる体調不良だと思っていたが、どうやら亡くなってしまったらしい。
俺は男性の表情を窺いながら尋ねる。
「差し支えなければ、死因を教えていただけないでしょうか」
すると、その質問に対して、彼の顔が曇った。
「それが、分からないのです」
「分からない? どういうことですか」
「父が亡くなった時、その場には誰もいなかったのですよ。いつの間にかいなくなっていたと聞き及んでおります。おそらくは何者かに殺されたのでしょう」
俺は眉根を寄せた。
「なにか気になることでも?」
「はい。実は、この街にも同じような事件がありまして」
「なんと! もしや犯人が見つかったのですか!」
俺は首を横に振る。
「いいえ、まだ見つかってはいません」
「しかし、似たような事件が起きたのであれば、同一犯の可能性もあり得ますよね」
「はい」
「だとすれば恐ろしいことです」
俺は同意するように小さく息を吐く。
「まったく同意見です」
それからしばらくの間、事件についての話をした。
そして話が一段落ついたタイミングで、俺は本題を切り出すことにする。
「ところで、この村にある温泉というのは、どこら辺に?」
すると、その問いに答えたのは別の人物だった。「その件につきましては、わたくしめにお任せください」
声の主は、メイド服を着た若い女性で、胸元に名札を付けていたので名前を確認することができた。彼女はリリアナという名前で、この屋敷で働いているらしい。
俺は彼女の言葉に従うことにして、案内してもらうことになった。ちなみに、彼女以外の使用人たちは別室で待機しているらしく、俺が部屋を出る際に、その全員が姿を現した。「この者たちは皆、この村の出身なのですか?」
俺がそう問いかけると、執事のオランドさんが答えてくれる。
「はい。代々、この家で働いてくれています」
「そうですか。働き甲斐のある職場のようで羨ましい」
「ありがとうございます。ただ、残念なことに、最近では人手が足りなくなってきてしまいまして」
「ふむ、なにか問題でもあるのですか?」
「はい。実は近頃、魔物が頻繁に出没するようになりまして……」
俺は納得する。
「それで人手を割いているのですね」
「仰る通りです。幸い、今のところは死者は出ていないようですが、このままでは近いうちに犠牲が出る可能性もあります」
「分かりました。私たちにできることがあれば協力します」
「おぉ、それはありがたい」
「ですが、その前にひとつ確認したいことが」
「確認? どのような内容でございましょう」
「この村の近くには、何か変わったものはあるのでしょうか」
「変わったもの……と申されますと」
「例えば、洞窟があったりとか、遺跡があったりとかも」
「いえ、特には」
「そうでしたか」
俺は内心で肩を落とす。
もしかすると魔王軍の手がかりが見つかるかもしれないと期待していたのだ。だが、どうやら空振りに終わったようである。その後、俺たちは温泉に向かうことにした。
そして到着したのは、かなり立派な施設だった。
入口から続く石畳の通路の奥に脱衣所が見えていて、そこから男女に分かれて浴場へと繋がっている。さらに露天風呂まであり、なかなか凝っているようだ。
俺が真っ先に向かったのは、もちろん男湯の方だ。なぜなら女には色々と準備があるので、時間がかかるだろうと思ったからである。それに男同士なら裸の付き合いもできるし、なにより楽だ。
俺は服を脱ぐと、さっそく浴室に向かった。そしてかけ湯をして身体を流した後、まずは浴槽に浸かる。それから大きく伸びをする。
「あぁ~、気持ち良いなぁ」
自然豊かな景色を眺めながら呟いた。
(こういう時間を過ごすのも良いものだ……)
俺は目を閉じて、ぼんやりとした気分でいたのだが――
不意に声をかけられた。
「ねぇ、あなた」
俺は目を開ける。すると、そこにはひとりの少女が立っていた。年齢は十歳前後だろうか。その美しい容姿に思わず見惚れてしまう。艶やかな銀髪を長く伸ばして三つ編みにしており、肌は透けるように白く、手足は折れそうなほどに細い。まるで人形のように可愛らしい少女だった。
俺は戸惑いつつも返事を口にした。
「えっと……君は?」
すると、その子は真っ直ぐに見つめてくる。「私はアリシアよ」
「ああ、ありがとう」
俺はカップを受け取ると、ゆっくりと口に含んだ。すると芳しい香りが広がる。
俺は紅茶が好きなので、彼女の入れる茶はいつも楽しみにしている。
少女は嬉しそうな笑みを浮かべると、こう尋ねてきた。
「美味しくなかったですか?」
「いや、すごく美味しかったよ」
「よかった……!」
そう言って、少女は安堵の息を漏らす。それから俺の顔を見上げてきた。
どうやら感想を求めているらしい。
なので俺は、率直に告げることにした。
「毎日入れてくれるから、おかげで助かっているよ」
「えへへ……」
照れたような笑みを浮かべる。
それから思い出したように言う。
「そういえば、ご主人様は今度の休日は何かご予定はありますか?」
「特にないけど……」
「もしよろしければ、一緒に街に出掛けませんか?」
「構わないよ」
断る理由もないので、俺は承諾した。
すると少女は顔を輝かせる。
「本当ですか!?」
「うん」
「嬉しいです! 私、頑張って準備してきますねっ!」
そう言うと部屋を出ていった。
(喜んでくれると俺としても気分が良いな)………………
その日の夜のこと……とある路地裏にて……。
ザッザッと足音が響いていた。複数の人間が移動している音だ。人数は全部で五人いて、いずれも武装しているようだった。彼らは狭い通路の中を突き進むと、ある場所で立ち止まる。そこには地下に続く階段があった。先頭にいた男が呟く。
「ここだな」
続いて別の男の声が聞こえてくる。
「間違いありません」
「よし、行くぞ」
男たちは慎重に降りていった。やがて広い空間に出る。そこは洞窟のような場所だった。
奥には祭壇のようなものがあって、そこに誰かが横になっている。どうやら眠っているみたいだ。
すると突然、背後から別の男が現れた。それも三人同時にだ。
それに気づいた先頭の男は慌てて振り返ろうとするが、すでに遅かった。彼の喉元にナイフが突き立てられ、そのまま倒れてしまう。他の二人も同様だった。
現れたのはいずれも覆面をした連中で、手慣れた様子で次々と仲間を倒してゆく。あっという間に全員が地面に伏してしまった。
それを確認してから、最後の一人が前に進み出る。
「ボス」
「おう」
ボスと呼ばれたのは、長身の男だった。年齢は三十代前半くらいだろうか。髪は銀色に染まっていて、瞳は赤く染まっている。全身を黒ずくめの服装に身を包んでいた。その顔つきはどこか爬虫類を思わせる。
彼は倒れる仲間たちに目を向けて、小さく嘆息する。
「まったく、こんな奴らに手間取るとは情けないな」
それから視線を戻す。すると銀髪をした男の目が赤黒く変色した。すると瞳が縦に割れてゆく。その口からは牙が覗いていて、手足には鱗が生えてきた。
そう、この男の正体は竜人だったのだ。
彼は小さく笑う。
「まぁいいさ。どうせこの程度の雑魚どもじゃ、役に立たないからな」
そして、その視線の先には少女の姿がある。
それは美しい少女だった。年齢は十歳くらいだろう。
だが、その身に纏う雰囲気は普通ではなかった。明らかに異常だと分かる。なぜなら少女の身体からは、黒いオーラが立ち上っていたからだ。その禍々しさは、まるで邪神の降臨を彷彿とさせるほどだった。
だが、それでも彼女は美しかった。
少女は虚ろな瞳で宙空を眺めている。
その姿はまるで魂が抜けてしまったかのようだ。
それを見て、銀髪の男は満足げに微笑む。
「これで儀式の準備は整った。あとは待つだけだ。ふはははははは!」
その笑い声は暗い闇の中に響き渡った。◆ それから数日後の朝……領主の館にある会議室では、緊急会議が開かれていた。出席者は領主をはじめ、主要な役職に就いている者たちである。その中には俺も含まれていた。
領主は険しい表情で言う。
「つまり、その少年が魔王軍の幹部であると……そう言いたいのか?」
俺は重々しく首肯する。
「はい、そう考えております」
領主は眉根を寄せながら言葉を続ける。
「だが、それはあり得ないはずだ」
俺はその理由を説明する。
まず第一に、魔王軍は人間族が支配していた国を滅ぼしていた。だから魔族の勢力範囲は人間の国々よりずっと広範囲に及んでいる。だから仮に幹部クラスの人物が転生者であった場合、必ず噂になるはずだったのだ。それがないという時点で結論は明らかだと思うのだが、どうやら違うらしい。
そこで今度は、俺が説明を行うことになった。
もちろん俺は嘘偽りなく話したが、どうしても信じてもらえなかったので、仕方なく映像魔法を使うことにしたのだ。そして壁に映像を映し出す。
そこには先日、俺たちを襲った刺客たちの姿が映し出された。
彼らは俺が倒した後に拘束したので、身動きが取れないように縛られている状態だった。その姿を見ても、やはり信じられないといった感じだったが、なんとか納得してくれたようだ。
そこで領主が質問を投げかけてくる。
「それで、これから君はどうするつもりなんだ?」
俺は真剣に答える。
「無論、始末します」
「……本気なのか?」
「はい」
「分かった。だが、できれば君の手は汚さないで欲しい」
「承知しております」
「それから万が一に備えて、護衛を手配しておく」
「ありがとうございます」
俺は頭を下げてから退室した。
それから数日が経過して、俺は再び街に戻ってきた。
目的は当然、襲撃者である。
あれからさらに調べたところ、例の組織は魔王軍の中でもかなり下の地位にいることが分かった。だが、そんな連中であっても、放置するのは危険である。もしも魔王軍が本格的に攻め込んできたとき、彼らの存在が大きな障害となる可能性があった。だからこそ今回の件で片づけておく必要があると考えたわけだ。
ちなみに今回の戦いに際して、俺はひとりで行動することにした。理由はいくつかあって、まずは俺が単独の方がやりやすいという点が挙げられる。俺が派手に暴れれば、それだけ敵の注意を引きつけられるので、その間に他のメンバーが潜入するという作戦なのだ。
ただ、もちろんリスクもある。敵は複数人で襲ってくる可能性が高いので、こちらが圧倒的に不利になってしまう点だ。そのため俺は保険をかけることにした。
そこで俺が頼んだのは、以前も世話になった暗殺ギルドの面々だ。今回は俺の護衛についてもらうことにしたので、報酬についても弾んでおいた。すると彼らは二つ返事で引き受けてくれたので、とても助かった。
それから数日後の夜……俺は人気のない路地裏へとやってきた。
周囲には誰もいない。俺は周囲に結界を張り巡らせると、静かに呪文を唱えた。すると地面が盛り上がってきて、そこからゴーレムが出現する。その数は全部で三体で、いずれも身長は二メートルを超えていた。
俺は念話で指示を出す。
『お前たちは周囲の警戒を行ってくれ』
すると、それぞれがバラバラの方向に向かって歩き出した。
それから俺は、ゆっくりと建物の陰から姿を現す。
すると目の前には五人の男たちがいた。全員が武装していて、その瞳は赤く輝いている。おそらく全員、竜人なのだろう。
俺は冷めた目を向ける。
「わざわざ俺の前に現れるとはな」
するとリーダー格と思われる男が答えた。
「ふん、馬鹿め! こうでもしないと貴様を殺すことができないからな!」
続いて別の男が言う。
「俺らは強いんだよ! あのクソガキとは違う!」……どうやら彼らは俺のことを見くびっているらしい。
(なら試してみるか)
俺は内心でほくそ笑みつつ、挑発するように言う。
「やってみるか?」
すると案の定、相手はすぐに乗ってきた。俺の言葉に乗せられたのだろう。その顔は怒りに歪んでいるように見えた。ただ、ここで戦うつもりはないらしく、武器を構える様子はなかった。
その代わりにリーダーらしき男は問いかけてくる。「おい、小僧! 命乞いをするチャンスを与えてやる! 今すぐ投降しろ!」
俺は鼻で笑って返す。
「はっ! 寝言は死んでから言うものだぜ」
すると男たちは激昂したように叫ぶ。
「この野郎!」
「ぶっ殺してやる!」
そう言って襲いかかってこようとした瞬間、突然、五人全員が地面に倒れ込んだ。何が起こったのか分からないといった顔をしている。
それから彼らは起き上がると、すぐに俺に攻撃を加えようとしてきた。しかし、それも途中で中断される。彼らは地面に倒れたまま動かなくなった。
その様子を確認してから、俺は口を開く。
「安心していいぞ。殺してはいない」
その言葉を聞いて、五人は安堵の息を漏らす。
「な、なんなんだよ、今のは……」
「く、くそぉ、動けねぇ」
「ちくしょう、こんなはずじゃなかったのによ」
俺は肩をすくめる。
「悪あがきはやめておけ。どうせ無駄だ」
すると男のひとりが尋ねてくる。
「な、なぁ、頼むよ。助けてくれないか? 金だって払うからさぁ」
俺は小さく嘆息する。
「残念だが、そういうのは間に合っている。それに言ったはずだ。もう遅い、と」
その言葉を聞いた直後、男の顔が絶望に染まる。
俺は小さく笑う。
「さようなら」
そう告げた後、指をパチンッと鳴らした。
次の瞬間、彼らの身体が光に包まれたかと思うと、その場から消え去った。転移魔法を使ったのだ。これは以前に使っていたのと同じ魔法だが、実は改良を加えてある。以前のものは一度しか使えなかったが、こちらは複数回使えるようになったのだ。ただし、使用回数については術者の魔力に依存する。
そして俺が使ったのは、上級レベルの魔法使いにしか使えない魔法だった。だから、たとえ相手が竜人であったとしても、逃げ切ることは難しかったはずだ。仮に運良く生き延びることができたとして、竜人たちには仲間がいるはずだ。だから俺が見逃したところで、結局は殺されることになるだろう。ならば俺の手で殺した方が後腐れがないと思ったわけだ。
(まぁ、どのみち殺すつもりだったけどな……)
俺は嘆息する。
その後、俺は街の外へ出た。そして、あらかじめ用意していた馬車に乗り込む。中にはベッドやトイレなどが設置されていて、快適な旅ができるようになっていた。この馬車で移動しながら、目的地まで向かう予定なのだ。
こうして俺は魔王軍の幹部を討伐するために出発した――
数日後、俺たちはとある村に到着した。
その村は、山間の小さな農村である。人口は五十人ほどだろうか。あまり大きくはないが、それなりに活気があるようだ。俺は村の入口に立って周囲を眺めていたが、特に変わったところは見られない。平和そのものという感じで、実に長閑な雰囲気があった。
俺は御者台で手綱を握っている女性に話しかけた。
「この村に、なにか特徴はありますか?」
女性は穏やかな口調で言う。
「特徴ですか?」
「えぇ、なんでも構いません」
「うーん、そうですね……あ、確か、温泉があるんですよ」
「ほう、それは興味深い」
俺は素直に感心した。
それから少しの間、話を聞いていたが、どうも魔王軍の気配はなさそうだ。そこで俺は、仲間たちに偵察を命じることにした。
「それでは頼みました」
俺がそう口にすると、ふたりの女性が姿を見せて、それぞれ走り去っていった。彼女たちは隠密行動が得意なので、適任だと考えたのである。
残った俺は村長の家へと向かう。
すると出迎えてくれたのは恰幅の良い男性であった。彼は俺を見るなり、嬉しそうな笑顔を浮かべて歓迎してくれる。
「よく来てくださいました。私は当家の執事を務めております、オランド・グリーブです。よろしくお願いいたします」
俺は軽く頭を下げる。
「こちらこそ、よろしく」
すると男性は微笑む。
「ご覧の通り、田舎の寂れた村でございますが、精一杯のおもてなしをさせていただきますので、どうか楽しんでいってくださいませ。ところで、失礼ながらお客様は冒険者でございますかな?」
俺は苦笑いしつつ答える。
「いえ、違います」
「左様でございますか」
「もしかしたら勘違いさせてしまったかもしれませんが、私たちは観光目的で訪れただけです」
「なるほど、確かに一見すると、そのような雰囲気でございますね」
「えぇ」
それからしばらく話した後、俺は客室に案内された。部屋の中は広く、豪華な調度品が揃っている。
俺はソファーに腰掛けると、改めて室内を見回した。すると壁に肖像画がかけられていることに気づく。そこには、ひとりの女性の姿が描かれていた。年齢は二十代半ばくらいに見える。長い黒髪に切れ長の目をした美人で、白いドレスのようなものを着ており、頭にはティアラのような装飾品をつけていた。
その美しさに思わず見惚れてしまう。
(どこかで見たことがある気がするが……)
すると、そんな俺の様子を見て、隣に座っていた男性が説明してくれた。
「そちらの肖像画は、先代の当主である私の父のものです」
俺は慌てて頭を下げた。
「申し訳ありません。不作法でした」
すると男性は笑みを見せる。
「お気になさらず。私にとっては大切な家族の肖像でしたが、今では過去のものですから」
「過去……とは?」
「実は昨年、父が亡くなりまして、今は私が家を継いでいます」
「なんですって!?」
俺は驚いた。まさか領主が亡くなっているなんて思いもしなかったからだ。
そこで俺は思い出す。先日、街で聞いた噂だ。最近、領主の体調が悪いという噂が流れており、実際に姿を見た者はいないという話だった。俺はそれを単なる体調不良だと思っていたが、どうやら亡くなってしまったらしい。
俺は男性の表情を窺いながら尋ねる。
「差し支えなければ、死因を教えていただけないでしょうか」
すると、その質問に対して、彼の顔が曇った。
「それが、分からないのです」
「分からない? どういうことですか」
「父が亡くなった時、その場には誰もいなかったのですよ。いつの間にかいなくなっていたと聞き及んでおります。おそらくは何者かに殺されたのでしょう」
俺は眉根を寄せた。
「なにか気になることでも?」
「はい。実は、この街にも同じような事件がありまして」
「なんと! もしや犯人が見つかったのですか!」
俺は首を横に振る。
「いいえ、まだ見つかってはいません」
「しかし、似たような事件が起きたのであれば、同一犯の可能性もあり得ますよね」
「はい」
「だとすれば恐ろしいことです」
俺は同意するように小さく息を吐く。
「まったく同意見です」
それからしばらくの間、事件についての話をした。
そして話が一段落ついたタイミングで、俺は本題を切り出すことにする。
「ところで、この村にある温泉というのは、どこら辺に?」
すると、その問いに答えたのは別の人物だった。「その件につきましては、わたくしめにお任せください」
声の主は、メイド服を着た若い女性で、胸元に名札を付けていたので名前を確認することができた。彼女はリリアナという名前で、この屋敷で働いているらしい。
俺は彼女の言葉に従うことにして、案内してもらうことになった。ちなみに、彼女以外の使用人たちは別室で待機しているらしく、俺が部屋を出る際に、その全員が姿を現した。「この者たちは皆、この村の出身なのですか?」
俺がそう問いかけると、執事のオランドさんが答えてくれる。
「はい。代々、この家で働いてくれています」
「そうですか。働き甲斐のある職場のようで羨ましい」
「ありがとうございます。ただ、残念なことに、最近では人手が足りなくなってきてしまいまして」
「ふむ、なにか問題でもあるのですか?」
「はい。実は近頃、魔物が頻繁に出没するようになりまして……」
俺は納得する。
「それで人手を割いているのですね」
「仰る通りです。幸い、今のところは死者は出ていないようですが、このままでは近いうちに犠牲が出る可能性もあります」
「分かりました。私たちにできることがあれば協力します」
「おぉ、それはありがたい」
「ですが、その前にひとつ確認したいことが」
「確認? どのような内容でございましょう」
「この村の近くには、何か変わったものはあるのでしょうか」
「変わったもの……と申されますと」
「例えば、洞窟があったりとか、遺跡があったりとかも」
「いえ、特には」
「そうでしたか」
俺は内心で肩を落とす。
もしかすると魔王軍の手がかりが見つかるかもしれないと期待していたのだ。だが、どうやら空振りに終わったようである。その後、俺たちは温泉に向かうことにした。
そして到着したのは、かなり立派な施設だった。
入口から続く石畳の通路の奥に脱衣所が見えていて、そこから男女に分かれて浴場へと繋がっている。さらに露天風呂まであり、なかなか凝っているようだ。
俺が真っ先に向かったのは、もちろん男湯の方だ。なぜなら女には色々と準備があるので、時間がかかるだろうと思ったからである。それに男同士なら裸の付き合いもできるし、なにより楽だ。
俺は服を脱ぐと、さっそく浴室に向かった。そしてかけ湯をして身体を流した後、まずは浴槽に浸かる。それから大きく伸びをする。
「あぁ~、気持ち良いなぁ」
自然豊かな景色を眺めながら呟いた。
(こういう時間を過ごすのも良いものだ……)
俺は目を閉じて、ぼんやりとした気分でいたのだが――
不意に声をかけられた。
「ねぇ、あなた」
俺は目を開ける。すると、そこにはひとりの少女が立っていた。年齢は十歳前後だろうか。その美しい容姿に思わず見惚れてしまう。艶やかな銀髪を長く伸ばして三つ編みにしており、肌は透けるように白く、手足は折れそうなほどに細い。まるで人形のように可愛らしい少女だった。
俺は戸惑いつつも返事を口にした。
「えっと……君は?」
すると、その子は真っ直ぐに見つめてくる。「私はアリシアよ」
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