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2話 現世へ
しおりを挟む「冷静になれ赤柱鬼(せっちゅうき)お前らがまとめて現世に行く必要などないだろ!連れ戻すくらい一人か二人行けばよい話だ!」
「黙れ青鎧(せいがん)!!払い屋の所に行ったのなら、一人や二人行ったくらいじゃ太刀打ちできんだろ!」
「そこを冷静に分析できるなら、なおの事手下を危険な目に合わせてどうする!お前は赤五郎(せきごろう)の父親だが、赤鬼組の組頭だろ!それを忘れるな!」
「だったらなんだ!!息子を見捨てろと言うのか!!」
互いの両の手を合わせて押し合いをしている2.5mの赤鬼と青鬼のその周りでも、手下の鬼たちと烏天狗達も押し合いへし合いしながら、ギャーギャーと鳥居の前が大騒ぎとなっており、鳥居付近に住む幽世の商店街の2階から妖怪達が何事かと顔をのぞかせている。
そんな状況を白の背中から見下ろすと、めんどくさいなーと思わず盛大なため息が漏れる。 此方のため息とは違い、巨大化して私を乗せてくれている白月からは大あくびが漏れる。
「あぁー、眠い…」
巨大化した白月は狐の姿をしているが、その真っ白な毛並みには化粧をしたように赤い毛が模様のように所々浮かび上がっている。かっこよくて綺麗な私の相棒の白月、その隣で翼で風を打って飛んでいる、風雪が「頼むからやる気出してくれよ二人とも」と、ヤレヤレと言わんばかりの声を出している。
「ハイハイ、ちゃんとやりますよー」
そう言って白に下に降りるように頼むと「はーい」と間延びした返事をしながら白が地上へと降下していく、その降下している最中に1枚のお札をヒラリと投げると、揉みあっている妖達のちょうど中心近くに待って行ったところで、白の耳を押さえると
ドォ――――ン!と花火のような大きな音がして札が爆ぜた。
「なっ…何ごとだぁ!?」「なんだ!」
押し合いへし合いしていた者達が一斉に動きを止めて上空を見上げる。
「ハイハイ、皆さま朝っぱらかご苦労様です。解散解散!」
そう言って、地上に降り立った白からするりと降りると手を叩いた。
「涼音やっと来てくれたかー!」と、烏天狗の一人から泣きそうな声が漏れる。
「涼音じゃないか!もしかして加勢しに来てくれたのか!」
「何言ってやがる青鬼!涼音は現世の払い屋をとっちめる為に来てくれたんだ!なぁ涼音!」
赤鬼の言葉に、目的は五男を連れ戻すだけでは?と言いたいのを飲み込んで「断じて違いますから」とため息をつきながら応えつつ、組頭の二人の元へと歩みを進める。
「涼音!お前が来てくれるなら正に鬼に金棒だ!ガハハハ!!」
大笑いする赤鬼を、オヤギャグ?と冷めた目で見つめつつ、青鎧を見上げる。
「私が現世に行って連れ戻してくるよ、それなら向こうもこっちも双方穏便に済むでしょ」
「すまんな涼音、それが一番よい方法だろう。
それで良いな赤柱鬼!」
「なんだ。涼音が現世の払い屋をボコボコにするさまを見たかったんだがなー、残念だが引き際は弁えんといかんか………仕方ない。 バカ息子を頼んだ涼音、礼は弾む」
そう言って頭を下げる赤柱鬼に倣う様に、手下の赤鬼達も頭を下げる。
「勿論!お礼はキッチリカッチリ頂きますからねー。期待してるよー」
そういって手を振りながら大鳥居へと歩き出すと、後ろからボンッと音がしたと思うとカチカチカチと石畳の上を爪を鳴らしながら白が駆けてくる音がする。
「私も行くー、ファミチキ買ってよ涼音!今日の朝ご飯はそれが良い」
「お買い物しに行くんじゃないんだよ白月…あぁー、でもジャムが切れそうなんだった。せっかく現世行くし買い物して帰るか」
そう言いながら歩みを進めれば、鳥居の先に濃い霧のかかった森が見え始める。そのまま鳥居をくぐれば、軽いめまいのようなグワンとした感覚が一瞬するが、倒れこむほどではなくすぐに何事もなくなる。
鳥居の先は深い森の中で、雨に濡れた土の匂いが立ち込めザワザワと不気味に木々が揺れている。時の流れは此方も向こうも同じなので、こちらも早朝だ。
「さて、まずはバカ息子事、赤五郎を探さないとね。
にしても、なんで急に払い屋に喧嘩売りに行くような真似をしたんだろ?」
「さぁー、馬鹿だからじゃない?」
「白月ちゃんたら辛辣」
そんな話をしながら、地面に目を凝らす。 昨晩雨が降ったのだろう。柔らかい土には真新しい人の物とは思えぬ大きな足跡が道なりにまっすぐ残っていた。
「わかりやすくて助かる。」
そう言いながら半ズボンのベルトに下げている小さな革鞄から、一枚の白い人型の紙を取り出すとその足跡の上に置く、雨の日でも使用できるように防水スプレーをかけてあるが、流石に泥はつくので人型が茶色く汚れる。スマン…と心の中で謝りつつも術を発動させれば人型がフワリ…というより泥で重いのか、ヨロりと浮き上がり足跡を追うようにヨレヨレと飛んでいく
「なんか今にも力尽きそう」
白月の言葉に苦笑いしつつ歩みを進めようとするが、ヌチャっという感覚に足元を見ればお気に入りの青いスニーカーが泥に沈んでいた。
「あ゛ぁぁぁぁぁ…」
「帰ったら私も洗わなきゃ」
低い悲鳴を上げる私の横で、白月が自分の右前足を挙げて茶色い靴下のようになった足を見つめて呟いていた。
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