黄昏が私の生きる場所

弥生菊美

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6話 土地神

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 げんなりした白を見て、ハイハイと言いつつ食べたゴミを回収していると石段の上から涼やかな風が吹き下ろしてくる。弾かれるように3人が顔を上げて階段を見上げる。

 周りの音がまるで無音にでもなったような錯覚を覚えつつも、階段の上から真っ白な神事の服を着た男神が一人降りてくる。

 それを見て慌てて私と赤五郎は膝をつき頭を下げる。 白月は怯えたように石段に体を伏せて、耳も倒れている。

「まったく、いつ参りに来るのかと思えば…。階段で食事をとったと思ったらとっとと帰るなど、無礼千万な者どもよ。 どうしてくれようか?のう?涼音?」 

「もっ…申し訳ありません……一息ついたらご挨拶しようと…」 

「自分達は食べるだけ食べて、結局挨拶は忘れて?その上、我には何もなしとは、なんと罰当たりな…さてどうしてくれようか?」 

「ほっ、本当にもうしわけ「まぁ、冗談だがな」」 

「「「…………」」」 

冗談が本気にしか思えない!!!!と、心の中で叫ぶ 

「涼音のみ頭を上げることを許す。何、我も今し方社に来たところでな、お前達が身支度をするのが見えてちとからかってやろうと思ったがフッ…クククッ…お前は相変わらず面白いな…プッ!クククッ!」 

袖で口元を隠しながら、肩を震わせて笑う数段上に立っている神を見上げつつジト目で見つめる。 

「そんな目で見るな涼音、良いではないか!プッ!ウハハハ!」 

 遂に声を出して笑いだしたこの方は、この神社の神様であり、ここの土地神様だ。水害からも守ってくれると言う水神様でもあるそうだが、私が幼い頃からなんだかんだ言いつつ目をかけてくれる保護者のような神様だ。しかし、このように本気かウソか分らないからかい方をするので困る。 

「はぁー、笑った笑った。 
して、珍しい顔ぶれだな?何があったか聞かせてみよ」 

 暑いから帰ろうと思ったのに!という、白月の心の叫びが聞こえた気がしたが、神様の問いかけに返さないなどありえないので事の経緯を話た。 

「ほぉ…あの祓い屋はそんな事をして回っているのか」 

 男神だが中性的な顔立ちをしている土地神様は、綺麗な切れ長の目を閉じ少し考えるように顔を傾ける。見た目は20代半ばと言った感じだが、年齢は400を超えたあたりで数えるのをやめたらしい。そんな男神に「その祓い屋、よくご存じなのですか?」と問えば 

「よく、と言うほどでもないが、その祓い屋が越してきた際に社に挨拶に来たのだ。 
まぁ、我が出ていくことはしなかったが…。居る社だとは悟っていたようだったのでな、さぞ腕が立つのだろうと思ったのでよく覚えていたのだ。」 

 よく腕が立つ…それはもう身をもって痛感している。あの人は相当に強い。でも、だからこそ、なんでここに越してきたのかが気になる。ここは幽世に繋がる大門があるが、別に全国各地にあるわけだし、大門が近い方が大物の妖怪が出入りすることが多いため、幽世の目が行き届きやすく害を及ぼすような妖や悪鬼などが居付いたりできないのだ。

「ふむ、その祓い屋が今度また度を過ぎた行動をするようであれば知らせてやろう。 
涼音も気になるのであろう?」 

相変わらず、私の心を読んだかのような問いかけにビクビクしつつ 

「よろしくお願いします」と、頭を下げた。 

「なれば次は氷菓子の一つでも持ってまいれ、お前が来るなら何時でも相手をしよう」 

 そう言ってニッコリ笑うと、神様の背後から風が吹き始めその強風に思わず顔をそむけると、徐々に風が弱まっていった。 

 再び顔を上げると、そこに神様の姿はなかった。まったく、いつも突然来て突然帰るんだから…ため息をつきつつ 

「お菓子を持ってくるなら相手をしようの間違イテッ!!」 

悪態をつけば言い終わらぬうちに、脳天にコンと松ぼっくりが直撃したのだった。

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