レベル99のおままごと

赤たまねぎ

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それぞれの日記(クローン1号)

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 ――――の日記(名前が消えていて読めない)

 ――月KKI日

 1/3

 俺は失敗作だ。

 それを自覚したのは、俺が超能力に目覚めてから半年が経った頃だった。

 ロボットと信号を出し合うことで会話してきた。ロボットによって生まれたロボット語という言語は原理がシンプルであり、赤子の俺でも覚えやすかった。

 常識・倫理・喜怒哀楽といった感情とその表現・科学と科学者の繋がり。多くのことをロボットから教えて貰い、俺はそれを学んだ。

 そして、それら全てがある程度俺に教えられた後、ロボットの一体が俺の生まれた理由を教えた。

 俺を創ったマスターと呼ばれている創造主は、俺をとある野望のために創った。

 だが、俺は赤子から成長しなかった。記憶にないが、俺自身の力で拒絶したらしい。

 マスターが必要だったのは、成長する人間。俺という存在は計算にない。

 なのに、俺は今まで生かされている。

 俺の代わりであるクローン2号も造られたというのに。

 なぜだ?

 2/3

 俺はまだ直接マスターを話し合うことは出来ない。

 マスターはロボット語を話せない。そして、俺は人語を話せないからだ。

 ロボットを通してなら話すことは出来るが、俺はそれを今までしたことがない。

 マスターが俺に対して放任しており、全ての世話をロボットに一任しているからだ。

 その理由を俺は怖くて聞けない。

 マスターがやろうとしていることを遠くから見る毎日だ。

 ……なにをしているのだろう?

 3/3

 ロボットを使い、俺はマスターの動向を探ることにした。

 だが、ロボットたちはマスターが何をしようとしているのか理解出来ていない。

 きっと、ロボットと人間という種としての壁が相互理解のバグとなっているのだ。

 埒が明かないと思った。

 同時に、俺が接触すべきだと思った。ベースは俺もマスターと同じ人間だ。理解できるものがあるのかもしれない。

 それに賭けることにした。

 俺は何度かロボット越しに接触してみた。

 何度か成功し、マスターを喜ばせることに成功した。

 特に水人形を人間のように動かしたときは、マスターは大きな拍手をし、俺を高い高いしてくれた。

 俺は自分の超能力で浮くことが出来るのだが、してもらうのは悪い気がしない。

 この日、俺はやっと存在意義を見つけられた気がした。

 それは本来の計画から外れたものだったのだろう。後継のクローン2号の存在がその証拠だ。

 だが、俺は恨まない。

 選択したのは俺であり、今はこうしてマスターの手伝いが出来ている。

 結果が全てだ。
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