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私の求めるアイドルを作るまで
05 あのときの景色
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あのときの景色――美川恵美子の最も光り輝く記憶の景色。
それは、美川恵美子が初めてフルダイブ型VRを行ったときだ。自分の分身であるキャラクターのメイキングを終わったとき、ゲーム操作サポートキャラクターの『それでは、良い旅路を』という言葉とともに、美川恵美子――『エミリー』は空中に放り出される。
地上から10キロメートル。永遠に続くとも思われた入道雲を突き抜け、目から飛び込んできたゲームの世界は――『エミリー』の魂を震わせた。
あの、まるで世界が一個人を歓迎してくれるような――『エミリー』が来るのを待っていてくれたと錯覚させてしまう美しい世界の広がりを――美川恵美子は永遠に忘れない。
それはまるでDNAのように、黒部フネの記憶に宿っていった。
◇ ◇ ◇
黒部フネは不和ミドリに語る。貴方に足りないのは、経験だと。
「経験ですか?」
「そう。人生の経験。経験には大なり小なり価値があると思うけれど、その合計値はその人の魅力に直結する。凡庸な人間が二人いて、生きている人間よりも一度死んで生き返った人の方が魅力的だ。そう答える人は一定層存在する」
「生き返った時点で凡庸ではないと思うけど……」
「揚げ足を取らない。真面目に話している」
黒部フネの打撃に不和ミドリは理不尽だと思いなが自論を出す。
「そうですね。確かに、一度死んで生き返った人間のほうが魅力的だと思います。でも、そんな人は実際にいませんし」
「いるわ」
「いるんですか!?」
「自己破産した人とか」
「比喩ですか」
項垂れる不和ミドリ。黒部フネは自分のことだと言っても面白いと思っているのだが、子どもみたいな冗談だと小ばかにされる可能性を考慮し、口をつぐむ。
「経験はその人の魅力に直結する。だとすると、稀有な経験をした人の魅力は、他とは一線を越えたものになる。肩書を必要としない、自分という一個人を社会的な財産だと主張することが出来る」
「……最後の『一個人が社会的な財産』というのが良く判らないんだけど」
「難しかった? そうね、簡単に言うと、『私が存在してあげているんだから、感謝しなさい!』ってことよ」
「ツンデレだ!」
不和ミドリの嬉しそうな声に黒部フネは鼻を高くする。所詮、プロの声優さんの真似事でしかないが、伊達に美川恵美子の記憶を引き継いでいないことを証明出来た。少なくとも、黒部フネはそう実感している。
「私は私の世界をより強いものにしたい。それこそ、現実よりも人の息遣い・命の鼓動が聞こえてきそうなリアリティーを孕んだ幻想世界を創りたい。そのためには、ミドリちゃんじゃ役不足なの」
「役不足って、酷い!」
「うるさい。だから、それを補填しようって話をしているの」
黒部フネは説明を続けた。『エンジェリング』に自分の将来性を見いだせない不和ミドリ、その原因は『エンジェリング』というアイドルグループが金原優子のコンテンツになっていると。
そこから抜ける――モブからランクアップするには、今の『不和ミドリ』の価値は低すぎると。
「フネちゃん、言葉が鬼だよ。……いや、間違っていないかもだし、私もなんとかしたいと思っているけど」
「だから、レベルアップしなくちゃいけない」
「どうやって?」
不和ミドリの言葉に黒部フネは児童教育に悪いであろう微笑みをする。
「そんなもの決まっている。ひたすら経験するしかないよ」
それは、美川恵美子が初めてフルダイブ型VRを行ったときだ。自分の分身であるキャラクターのメイキングを終わったとき、ゲーム操作サポートキャラクターの『それでは、良い旅路を』という言葉とともに、美川恵美子――『エミリー』は空中に放り出される。
地上から10キロメートル。永遠に続くとも思われた入道雲を突き抜け、目から飛び込んできたゲームの世界は――『エミリー』の魂を震わせた。
あの、まるで世界が一個人を歓迎してくれるような――『エミリー』が来るのを待っていてくれたと錯覚させてしまう美しい世界の広がりを――美川恵美子は永遠に忘れない。
それはまるでDNAのように、黒部フネの記憶に宿っていった。
◇ ◇ ◇
黒部フネは不和ミドリに語る。貴方に足りないのは、経験だと。
「経験ですか?」
「そう。人生の経験。経験には大なり小なり価値があると思うけれど、その合計値はその人の魅力に直結する。凡庸な人間が二人いて、生きている人間よりも一度死んで生き返った人の方が魅力的だ。そう答える人は一定層存在する」
「生き返った時点で凡庸ではないと思うけど……」
「揚げ足を取らない。真面目に話している」
黒部フネの打撃に不和ミドリは理不尽だと思いなが自論を出す。
「そうですね。確かに、一度死んで生き返った人間のほうが魅力的だと思います。でも、そんな人は実際にいませんし」
「いるわ」
「いるんですか!?」
「自己破産した人とか」
「比喩ですか」
項垂れる不和ミドリ。黒部フネは自分のことだと言っても面白いと思っているのだが、子どもみたいな冗談だと小ばかにされる可能性を考慮し、口をつぐむ。
「経験はその人の魅力に直結する。だとすると、稀有な経験をした人の魅力は、他とは一線を越えたものになる。肩書を必要としない、自分という一個人を社会的な財産だと主張することが出来る」
「……最後の『一個人が社会的な財産』というのが良く判らないんだけど」
「難しかった? そうね、簡単に言うと、『私が存在してあげているんだから、感謝しなさい!』ってことよ」
「ツンデレだ!」
不和ミドリの嬉しそうな声に黒部フネは鼻を高くする。所詮、プロの声優さんの真似事でしかないが、伊達に美川恵美子の記憶を引き継いでいないことを証明出来た。少なくとも、黒部フネはそう実感している。
「私は私の世界をより強いものにしたい。それこそ、現実よりも人の息遣い・命の鼓動が聞こえてきそうなリアリティーを孕んだ幻想世界を創りたい。そのためには、ミドリちゃんじゃ役不足なの」
「役不足って、酷い!」
「うるさい。だから、それを補填しようって話をしているの」
黒部フネは説明を続けた。『エンジェリング』に自分の将来性を見いだせない不和ミドリ、その原因は『エンジェリング』というアイドルグループが金原優子のコンテンツになっていると。
そこから抜ける――モブからランクアップするには、今の『不和ミドリ』の価値は低すぎると。
「フネちゃん、言葉が鬼だよ。……いや、間違っていないかもだし、私もなんとかしたいと思っているけど」
「だから、レベルアップしなくちゃいけない」
「どうやって?」
不和ミドリの言葉に黒部フネは児童教育に悪いであろう微笑みをする。
「そんなもの決まっている。ひたすら経験するしかないよ」
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