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私の求めるアイドルを作るまで
07 ゲーム後
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人が血を流して死んでいる。
だけど、その顔は幸せそうだった。
嘘の世界で、『こうなってほしい』というエゴを押し付ける人間の、作為的なものだと判っていても。
圧迫された感情は理性を壊す。
騙されていいと思ってしまう――
◇ ◇ ◇
「……なに、これ?」
仮面を渡された。不気味な仮面だ。
不和ミドリは黒部フネから説明を受けた。曰くアイドルではなく、『不和ミドリ』個人として歌って欲しい。だから、気持ちの切り替えのスイッチとして、その仮面を付けて欲しい――。
本心を隠すのではなく、『不和ミドリ』というレッテルを外すために変装・もしくは変身だと言う。
仮面舞踏会のような目元のみを隠す仮面で、口元はマフラーで隠す。
まだ8月だと言うのに、もっとマシなものはなかったのか? そもそもマフラー越しに声が綺麗いに通るのか?
ゲームダイブする前の不和ミドリならそう言っていた。
「……ありがとう」
そう礼を言い、黒部フネが差し出したマフラーを言われた通り巻き付ける。口まででいいのに、暗く沈んだ――黒い泥のような表情を少しでも隠そうと鼻まで覆う。
エアコンがきいているとはいえ、夏にマフラーを巻き付ける行為は違和感そのもの。芸人性、もしくは突っ込み気質が高い人ならば声大きくするだろう。
だが、不破ミドリにそれはなかった。何故なら、それ以上の違和感が彼女の中にあった。
心の中にあった。
「……ねえ、フネちゃん。私、ゲームの中で人を殴ったよ」
「知ってる。サポートしていたから」
淡々と返す黒部フネを不和ミドリは無表情のまま見る。
「……今から歌ってもらう歌は、悲劇に対する慟哭みたいなものよ」
静寂の次の、黒部フネの言葉に不和ミドリは頷く。歌詞は既に渡されており、昨夜も不和ミドリは熟読して、口ずさみながら夜の景色を歩いたからだ。
「アイドルの歌とは大違いでしょ?」
「うん」
「なんでだと思う?」
不和ミドリは、バカな質問をすると思った。
「アイドルは皆が楽しいと思える歌を歌うから」
「そうね。でも、楽しくない歌がダメってわけじゃない」
黒部フネが伝えたい言葉を出す。
「ハッピーな歌は楽しさを同調させるけど、悲劇的な歌は人の気持ちに強く訴える。今の、ミドリちゃんは悲劇的な歌を歌いたい気分だと思うけど。それがダメってわけない」
「私がなりたいのはアイドルだよ……」
「知ってる」
あのときは俳優と答えてくれたが――やはり、彼女がなりたいのはアイドルだ。
確認出来て良かった――
不和ミドリとは対照的に、黒部フネは嬉しそうに微笑む。
「アイドルが悲劇的な歌を歌ったらダメなんて法律はないでしょ?」
「でも、普通は歌わない」
「じゃあ。次の歌のために歌いなさい」
次という言葉に惹かれる不和ミドリ。
「ハッピーな歌と、悲劇的な歌。その両方の良いとこ取りをした歌を歌うために、『不破ミドリ』は悲劇的な歌を歌うの」
そして、言われた通りに不和ミドリは悲劇的な歌を歌った。
だけど、その顔は幸せそうだった。
嘘の世界で、『こうなってほしい』というエゴを押し付ける人間の、作為的なものだと判っていても。
圧迫された感情は理性を壊す。
騙されていいと思ってしまう――
◇ ◇ ◇
「……なに、これ?」
仮面を渡された。不気味な仮面だ。
不和ミドリは黒部フネから説明を受けた。曰くアイドルではなく、『不和ミドリ』個人として歌って欲しい。だから、気持ちの切り替えのスイッチとして、その仮面を付けて欲しい――。
本心を隠すのではなく、『不和ミドリ』というレッテルを外すために変装・もしくは変身だと言う。
仮面舞踏会のような目元のみを隠す仮面で、口元はマフラーで隠す。
まだ8月だと言うのに、もっとマシなものはなかったのか? そもそもマフラー越しに声が綺麗いに通るのか?
ゲームダイブする前の不和ミドリならそう言っていた。
「……ありがとう」
そう礼を言い、黒部フネが差し出したマフラーを言われた通り巻き付ける。口まででいいのに、暗く沈んだ――黒い泥のような表情を少しでも隠そうと鼻まで覆う。
エアコンがきいているとはいえ、夏にマフラーを巻き付ける行為は違和感そのもの。芸人性、もしくは突っ込み気質が高い人ならば声大きくするだろう。
だが、不破ミドリにそれはなかった。何故なら、それ以上の違和感が彼女の中にあった。
心の中にあった。
「……ねえ、フネちゃん。私、ゲームの中で人を殴ったよ」
「知ってる。サポートしていたから」
淡々と返す黒部フネを不和ミドリは無表情のまま見る。
「……今から歌ってもらう歌は、悲劇に対する慟哭みたいなものよ」
静寂の次の、黒部フネの言葉に不和ミドリは頷く。歌詞は既に渡されており、昨夜も不和ミドリは熟読して、口ずさみながら夜の景色を歩いたからだ。
「アイドルの歌とは大違いでしょ?」
「うん」
「なんでだと思う?」
不和ミドリは、バカな質問をすると思った。
「アイドルは皆が楽しいと思える歌を歌うから」
「そうね。でも、楽しくない歌がダメってわけじゃない」
黒部フネが伝えたい言葉を出す。
「ハッピーな歌は楽しさを同調させるけど、悲劇的な歌は人の気持ちに強く訴える。今の、ミドリちゃんは悲劇的な歌を歌いたい気分だと思うけど。それがダメってわけない」
「私がなりたいのはアイドルだよ……」
「知ってる」
あのときは俳優と答えてくれたが――やはり、彼女がなりたいのはアイドルだ。
確認出来て良かった――
不和ミドリとは対照的に、黒部フネは嬉しそうに微笑む。
「アイドルが悲劇的な歌を歌ったらダメなんて法律はないでしょ?」
「でも、普通は歌わない」
「じゃあ。次の歌のために歌いなさい」
次という言葉に惹かれる不和ミドリ。
「ハッピーな歌と、悲劇的な歌。その両方の良いとこ取りをした歌を歌うために、『不破ミドリ』は悲劇的な歌を歌うの」
そして、言われた通りに不和ミドリは悲劇的な歌を歌った。
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