1 / 1
リア充なんて
しおりを挟む
「リア充なんて消えればいいのに」
私は周りに聞こえないよう、小さく呟く。ピアノと拍手の音にかき消された妬みの一言は心の中で留められなくなり、再び口からこぼれ落ちる。
「リア充爆発しろ」
私とアイツは小さいときから友達だった。男っぽい言動が目立っていた私と、虫一匹も殺せない性格のアイツ。正反対な二人だったけど、話してみると意外と気が合い、よく遊ぶようになった。
「それでは、新郎新婦の入場です」
後ろで扉が開く音がする。きれいに化粧をしたであろう花嫁の足音が近づいてくる。他の人は後ろを向いて大きな拍手で迎えるが、私はそんなことしない。何が楽しくて他人の結婚を祝わなきゃいけないのだ。こっちはまだ彼氏もいねぇんだよ。
「リア充なんて爆発してしまえ」
中学生になってから、アイツは成長期が来たらしい。私よりも小さかったくせに、卒業する頃には私よりも20センチも大きくなっていた。サッカー部に入ったせいか、無駄に体格も良くなった。性格は女みたいなくせに、生意気なやつだ。アイツがサッカー部でやっていけるか気になったので、私はしょうがなくサッカー部のマネージャーになり、アイツのサポートをしてやっていた。
「好きな人がいるんだけど、どうしたらいい?」
高校生活にも慣れてきた頃、アイツの部屋で漫画を読んでいたときにいきなり言われた言葉だ。さすがの私も驚きを隠せず、相手が誰なのかを問い詰めた。相手は同じクラスの女子で、学年でも1、2を争うほどの美人だ。女子力も高く、アイツにはどう考えても釣り合わない人だった。
「当たって砕けてこいよ。私が慰めてやる」
成功するわけないと思った。どうせ泣きながら私に報告しに来るに違いないと思った。
次の日の夜、私の携帯に告白が成功したという内容と二人で撮ったプリクラが送られてきた。
「久しぶりだね。用事って何?」
式場の外で缶コーヒーを飲んでいると、アイツが後ろから声をかけてきた。
「いや大したことじゃないけどさ。古くからの友人である私が特別にお世辞を述べようと思ってな」
「そっか。ありがと……ってお世辞かい!」
久しぶりの会話なのに、話始めてすぐに二人の顔には笑みが浮かぶ。相変わらず性格は正反対なのに、喋っていると落ち着く感じがするのだ。お互い何も気をつかわず素の自分でいられる、まさに友達以上恋人未満の関係だ。
「まさかあの時の彼女とここまで続くとは思ってなかったぞ」
「先に結婚しちゃってごめんな」
ニヤニヤと笑いながら謝る顔がムカついて、無言で肩を殴る。わざと痛がる素振りを見せるところがまたムカついてくる。
「そういえばさ、卒業してから連絡なかったけど何してるの?」
「なんでいちいちお前に連絡しないといけないんだよ。仕事に決まってんだろ? 小さいけど喫茶店の店長やってるんだぞ」
「喫茶店? じゃあ今度招待してよ」
「まぁ、今度な」
缶の温かさを右手に感じながら、コーヒーを一口飲む。さすがに12月ともなると寒さが厳しい。さっさと聞くこと聞いて帰ろう。
「あの花嫁さんのこと好きなんだよな?」
「突然なんだよ。そりゃ好きに決まってるよ。愛してるさ」
愛してる……か。よく堂々と恥ずかしがらずに言えるな。そんな幸せそうな顔しやがって。
「今、幸せなんだよな?」
「あぁ、幸せだよ」
よし、聞きたいことは聞いた。あとは帰るだけだ。さっさと帰ろう。
「優希、今までありがとう」
「は? なんだよいきなり」
早く帰らせてくれ。寒いんだよこっちは。
「あの時、優希が応援してくれたから今こうして幸せなんだよ」
「お……おぅ」
なに真面目な顔してそんなこと言うんだよ。
「本当に、今まで……ありがとう」
待て、そこでお前が泣くな。確かに古い付き合いだけどそこまで泣くか?
「ほら、泣いたら鼻水が服につくだろ。全く、そういうところは変わらないな」
初めて会ったときから泣き虫で、気が弱くて、1人じゃ何も出来なくて。
映画を観ただけで号泣するし、喧嘩になってもすぐに謝ってくるし。
本当に、なんでこんな奴を好きになったんだろう。
「リア充め……爆発してしまえ」
私はそう言いながらハンカチを取り出し、涙と鼻水まみれの顔に押し付ける。
「じゃ、私は帰るよ」
「ま、待って! この後の二次会には参加しないの?」
「色々用事があるんだよ」
これでやっと帰れる。まさか最後の最後にこいつの鼻水を拭くことになるとは思わなかった。
「気をつけて帰ってね」
まぁ良い思い出になったか。
「子供が産まれたら連絡するよ」
……なるべく早めに頼むよ。
「今度は時間があるときに俺の嫁さん紹介するから」
頼むから紹介するな。さすがの私でも泣くぞ。もちろん悔しくて。
「またいつか」
私は無言で頷き、駐車場へ歩きだす。
長かった片想いもこれで終わりか。なんだか呆気ないものだ。冷えきった缶をゴミ箱へ投げ入れようとしたが、缶はゴミ箱の縁に当たり、乾いた音を響かせながら地面に転がった。
「好きだよ」
拾い上げた缶に、そんなことを呟いてみる。もちろん返事はない。
「恋人にならなくてもいいから。また遊びたいよ。話したいよ」
缶を握る手に力が入る。
「なんで……なんで私なの?」
ポツリ、と缶に水滴が落ちた。缶の表面を撫でるように落ちていくそれが涙だと気づくのに時間はかからなかった。1度流れ始めた涙は、もう止めることは出来なかった。
ここまで我慢してたのに、なんで缶を相手に泣いてるんだ私は。
缶についた涙を乱暴に拭き、今度こそゴミ箱に捨てた。
雲一つない、皮肉なほどきれいな青空を見上げる。
明日からまた頑張ろう。少しでも余命を伸ばせれば、また元気な姿で会えるかもしれない。もしかしたらそのまま治るかも。
退院したらお金を貯めて喫茶店を開かないとな。アイツにあんなこと言っちゃったし。
「私は、まだ大丈夫」
そう自分に言い聞かせ、再び歩き始めた。
私は周りに聞こえないよう、小さく呟く。ピアノと拍手の音にかき消された妬みの一言は心の中で留められなくなり、再び口からこぼれ落ちる。
「リア充爆発しろ」
私とアイツは小さいときから友達だった。男っぽい言動が目立っていた私と、虫一匹も殺せない性格のアイツ。正反対な二人だったけど、話してみると意外と気が合い、よく遊ぶようになった。
「それでは、新郎新婦の入場です」
後ろで扉が開く音がする。きれいに化粧をしたであろう花嫁の足音が近づいてくる。他の人は後ろを向いて大きな拍手で迎えるが、私はそんなことしない。何が楽しくて他人の結婚を祝わなきゃいけないのだ。こっちはまだ彼氏もいねぇんだよ。
「リア充なんて爆発してしまえ」
中学生になってから、アイツは成長期が来たらしい。私よりも小さかったくせに、卒業する頃には私よりも20センチも大きくなっていた。サッカー部に入ったせいか、無駄に体格も良くなった。性格は女みたいなくせに、生意気なやつだ。アイツがサッカー部でやっていけるか気になったので、私はしょうがなくサッカー部のマネージャーになり、アイツのサポートをしてやっていた。
「好きな人がいるんだけど、どうしたらいい?」
高校生活にも慣れてきた頃、アイツの部屋で漫画を読んでいたときにいきなり言われた言葉だ。さすがの私も驚きを隠せず、相手が誰なのかを問い詰めた。相手は同じクラスの女子で、学年でも1、2を争うほどの美人だ。女子力も高く、アイツにはどう考えても釣り合わない人だった。
「当たって砕けてこいよ。私が慰めてやる」
成功するわけないと思った。どうせ泣きながら私に報告しに来るに違いないと思った。
次の日の夜、私の携帯に告白が成功したという内容と二人で撮ったプリクラが送られてきた。
「久しぶりだね。用事って何?」
式場の外で缶コーヒーを飲んでいると、アイツが後ろから声をかけてきた。
「いや大したことじゃないけどさ。古くからの友人である私が特別にお世辞を述べようと思ってな」
「そっか。ありがと……ってお世辞かい!」
久しぶりの会話なのに、話始めてすぐに二人の顔には笑みが浮かぶ。相変わらず性格は正反対なのに、喋っていると落ち着く感じがするのだ。お互い何も気をつかわず素の自分でいられる、まさに友達以上恋人未満の関係だ。
「まさかあの時の彼女とここまで続くとは思ってなかったぞ」
「先に結婚しちゃってごめんな」
ニヤニヤと笑いながら謝る顔がムカついて、無言で肩を殴る。わざと痛がる素振りを見せるところがまたムカついてくる。
「そういえばさ、卒業してから連絡なかったけど何してるの?」
「なんでいちいちお前に連絡しないといけないんだよ。仕事に決まってんだろ? 小さいけど喫茶店の店長やってるんだぞ」
「喫茶店? じゃあ今度招待してよ」
「まぁ、今度な」
缶の温かさを右手に感じながら、コーヒーを一口飲む。さすがに12月ともなると寒さが厳しい。さっさと聞くこと聞いて帰ろう。
「あの花嫁さんのこと好きなんだよな?」
「突然なんだよ。そりゃ好きに決まってるよ。愛してるさ」
愛してる……か。よく堂々と恥ずかしがらずに言えるな。そんな幸せそうな顔しやがって。
「今、幸せなんだよな?」
「あぁ、幸せだよ」
よし、聞きたいことは聞いた。あとは帰るだけだ。さっさと帰ろう。
「優希、今までありがとう」
「は? なんだよいきなり」
早く帰らせてくれ。寒いんだよこっちは。
「あの時、優希が応援してくれたから今こうして幸せなんだよ」
「お……おぅ」
なに真面目な顔してそんなこと言うんだよ。
「本当に、今まで……ありがとう」
待て、そこでお前が泣くな。確かに古い付き合いだけどそこまで泣くか?
「ほら、泣いたら鼻水が服につくだろ。全く、そういうところは変わらないな」
初めて会ったときから泣き虫で、気が弱くて、1人じゃ何も出来なくて。
映画を観ただけで号泣するし、喧嘩になってもすぐに謝ってくるし。
本当に、なんでこんな奴を好きになったんだろう。
「リア充め……爆発してしまえ」
私はそう言いながらハンカチを取り出し、涙と鼻水まみれの顔に押し付ける。
「じゃ、私は帰るよ」
「ま、待って! この後の二次会には参加しないの?」
「色々用事があるんだよ」
これでやっと帰れる。まさか最後の最後にこいつの鼻水を拭くことになるとは思わなかった。
「気をつけて帰ってね」
まぁ良い思い出になったか。
「子供が産まれたら連絡するよ」
……なるべく早めに頼むよ。
「今度は時間があるときに俺の嫁さん紹介するから」
頼むから紹介するな。さすがの私でも泣くぞ。もちろん悔しくて。
「またいつか」
私は無言で頷き、駐車場へ歩きだす。
長かった片想いもこれで終わりか。なんだか呆気ないものだ。冷えきった缶をゴミ箱へ投げ入れようとしたが、缶はゴミ箱の縁に当たり、乾いた音を響かせながら地面に転がった。
「好きだよ」
拾い上げた缶に、そんなことを呟いてみる。もちろん返事はない。
「恋人にならなくてもいいから。また遊びたいよ。話したいよ」
缶を握る手に力が入る。
「なんで……なんで私なの?」
ポツリ、と缶に水滴が落ちた。缶の表面を撫でるように落ちていくそれが涙だと気づくのに時間はかからなかった。1度流れ始めた涙は、もう止めることは出来なかった。
ここまで我慢してたのに、なんで缶を相手に泣いてるんだ私は。
缶についた涙を乱暴に拭き、今度こそゴミ箱に捨てた。
雲一つない、皮肉なほどきれいな青空を見上げる。
明日からまた頑張ろう。少しでも余命を伸ばせれば、また元気な姿で会えるかもしれない。もしかしたらそのまま治るかも。
退院したらお金を貯めて喫茶店を開かないとな。アイツにあんなこと言っちゃったし。
「私は、まだ大丈夫」
そう自分に言い聞かせ、再び歩き始めた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
四の五の言わず離婚届にサインをしてくれません?
白雲八鈴
恋愛
アルディーラ公爵夫人であるミレーネは、他の人からみれば羨ましいと思える立場にいた。
王妹の母譲りの美人の顔立ち、公爵夫人として注目を集める立場、そして領地の運営は革命と言えるほど領地に潤いを与えていた。
だが、そんなミレーネの心の中にあるのは『早く離婚したい』だった。
順風満帆と言えるミレーネは何が不満なのか。その原因は何か。何故離婚できないのか。
そこから始まる物語である。
運命の番より真実の愛が欲しい
サトウミ
恋愛
田舎娘のゾーイは龍族の王子・シャウロンの『運命の番』だった。
ロマンチックな恋を夢見るゾーイは『運命の番』であるシャウロンと会えるのを楽しみにしていた。
しかし、シャウロンはゾーイに対して素っ気ない。
運命の番だからといって、必ずしも愛し合う関係だとは限らないらしい。
それを悟ったゾーイは、シャウロンのもとから去ることを決意した。
【完結】「別れようって言っただけなのに。」そう言われましてももう遅いですよ。
まりぃべる
恋愛
「俺たちもう終わりだ。別れよう。」
そう言われたので、その通りにしたまでですが何か?
自分の言葉には、責任を持たなければいけませんわよ。
☆★
感想を下さった方ありがとうございますm(__)m
とても、嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる