騎士の資質～エリシス編～

第0章 忘れ去った記憶

プロローグ1 昔話

少年は冒険の話や英雄の伝説が大好きだった

だから時間あればいつも本を読んでいた、本を読んでいるとまるで自分が作者の世界に旅するような感覚だった。自分だけの妄想の世界で主人公になり数奇の出会いをし、不思議な生き物と戦い、終わりのない冒険の満喫していると、突然大きな声がした

「こら、アーウィン、いつまで本を読んでいるの！寝る時間とっくに過ぎてるよ！明日鍛冶屋の弟子入りという大事な日だぞわかってるの！？」

突然の大きな声だったが、少年の反応は意外にも冷静であった。おそらくこれは初めてではないだろう。慣れた手つきで本に素早く標を付け、机に置くと何も言わずにあっさり布団の中に入って目を閉じた

「まったくどうしようもない子ね......」

声の主がいなくなると、少年は目を開け、顔みるみるうちに紅潮し、どうやらついさっきまでしていた冒険の興奮を隠せなかったようだ

「いつかぼくもこんな冒険してみたいな」

少年は誰にも聞こえないよう、小声で自分の心に聞かせ、そしてやっと眠りについた

翌日、エウシュリスの伝統の式典を終え、さらに鍛冶屋への弟子入りも無事果たした。ただ今年はいつもより弟子が増えたことに喜んだ師匠(ボルドというらしい)は、まさかのいきなり刀の鍛冶を実演し、そしてそのまま教え始めた、普段あんまり運動せず本ばかり読んでる少年の体は悲鳴を上げたこと以外は.....

家に着くと、疲れ果てた肉体はすぐさま就寝の用意ができていた。

「よく頑張ったね、えらいぞ、アーウィン！」

枕元で囁いたのはいつもの大きな声ではなく優しい声だった

「はぁ、じゃあ久々昔話聴かせてよ、できればこの国の「鍛冶」以外に関する話」

どうやら少年は鍛冶のおっちゃんからこの国の鍛冶の歴史を嫌というほど教わったようだ

「うん？ならエウシュリスの名前の由来の話はどう、エウシュリスはね...」

「それも聞いたよ、エウシュリン群山に囲まれたからエウシュリスだろ！」

「あら、知ってたのね、じゃあ～～うん～～あ！偉大なる王の話はどう？」

「それがいい！早く聴かせて！！」

美しい女性はゆっくりと口を開き語り始めた

遥か昔、この大陸は人類、人類を憎む、敵視する妖魔・ヴァンパイア・邪悪な妖精・ドラゴンなどと人類との共存を目指した善良な生物の3つによって微妙なバランスを保ちながら支配されていた。しかし時が経つに連れ、人間の人口がどんどん増加し、ついには邪悪 な生物の住む領域まで侵入し、人間と他生物の争いが絶えなかった。ある年(新世紀)、名もなき王は人類の平和と住まう場所を求め、各地に生息する様々な種族の人間逹を集め膨大な軍隊を組織して、邪悪な生物に挑んだ。戦いは数十年も続き、人類は多くの犠牲を払って、やっと邪悪な生物逹を追い出し大陸の半分近くな領域を持つようになったが王は悩んでいた、そういずれくるかも知れない復讐に.......

「あら、もう寝たのね、よほど疲れていたでしょ...」

美しい女性はゆっくり微笑んで、机の上に置いた蝋燭を消し、静かに去っていた