【完結済】キズモノオメガの幸せの見つけ方~番のいる俺がアイツを愛することなんて許されない~

つきよの

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少し、ここで休みましょう

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 俺は東谷に支えられながら、壁へ寄り掛かるようにして地面に座った。

「一体どうしたんで……」

 言いかけて俺を見つめる東谷が、目を見開いて驚いた表情をしていた。

(あ、あれ……。なんで……)

 そのわけは、俺が涙を溢していたからだった。

「ご、ごめんな。急に……」

 何故泣いているのか、自分でも分からなかった。

 東谷が現れて嬉しかったのか、驚いたのか、悲しいのか、もう全部分からなかった。

「勇利先輩……」

 名前を呼ばれると胸が苦しくなる。

(東谷……)

 心の中でさえ、名前を呼ぶと泣きたくなる。

(どうしたら……)

 俺は必死に誤魔化そうと首を横に振るが、涙は止まらなかった。

 すると、東谷は急に自分の着ていたコートを脱ぎ、俺の頭の上からコートを被せて視界を遮った。

「少し、ここで休みましょう」

 俺の隣に腰掛けた東谷は、俺の頭をそっと自分の肩へと抱き寄せた。

 俺は黙って、微かに聞こえる東谷の呼吸する音に耳を傾けながら、目を閉じて身体を預けた。

『勇利先輩……』

 耳に今でも残る、東谷が俺を呼ぶ声。

 目を閉じていると、東谷と初めて出会ったころのことを思い出した。
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