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好きだよ……。好きなんだ……
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カバンを手に取ると、足音を立てないようにそっと寝室の扉へ向かった。
(バイバイ、東谷……。でも最後に、最後にもう一度だけ東谷の顔を……)
そう思い、俺は東谷に向かって振り向くと、東谷の顔をじっと見つめた。
(もっと見たい。もっと、近くで……)
ほんの一瞬だけだと自分に言い聞かせながら、俺の足は無意識にベッドへと向かっていた。
そして、静かに寝息を立てている東谷の顔を、俺はそっと覗き込んだ。
(思い出をありがとう……)
初めて見る東谷の寝顔はとても綺麗で愛おしくて、本当はいつまでも見ていたかった。
会うのは最後だが、東谷が受け入れてくれた、ただそれだけで俺の心は満たされた。
満たされたはずだった。
もう触れることもない。
そう思うと、最後にもう一度だけ東谷の体温を感じたいと思ってしまう。
(本当に、これが最後だ……)
俺は東谷を起こさないようにカバンを床へ置くと、指先でそっと東谷の頬に触れた。
(好きだよ、東谷……)
決して言葉にすることは許されない気持ちを、俺は心の中で呟く。
すると、まるで溢れ出してしまったかのように、気持ちが止まらなくなってしまう。
(好きだよ……。好きなんだ……)
唇を重ねた感触を思い出し、東谷の唇にそっと人差し指の第二関節で触れる。
(愛してる……。愛してるんだ……だから、さようなら……)
(バイバイ、東谷……。でも最後に、最後にもう一度だけ東谷の顔を……)
そう思い、俺は東谷に向かって振り向くと、東谷の顔をじっと見つめた。
(もっと見たい。もっと、近くで……)
ほんの一瞬だけだと自分に言い聞かせながら、俺の足は無意識にベッドへと向かっていた。
そして、静かに寝息を立てている東谷の顔を、俺はそっと覗き込んだ。
(思い出をありがとう……)
初めて見る東谷の寝顔はとても綺麗で愛おしくて、本当はいつまでも見ていたかった。
会うのは最後だが、東谷が受け入れてくれた、ただそれだけで俺の心は満たされた。
満たされたはずだった。
もう触れることもない。
そう思うと、最後にもう一度だけ東谷の体温を感じたいと思ってしまう。
(本当に、これが最後だ……)
俺は東谷を起こさないようにカバンを床へ置くと、指先でそっと東谷の頬に触れた。
(好きだよ、東谷……)
決して言葉にすることは許されない気持ちを、俺は心の中で呟く。
すると、まるで溢れ出してしまったかのように、気持ちが止まらなくなってしまう。
(好きだよ……。好きなんだ……)
唇を重ねた感触を思い出し、東谷の唇にそっと人差し指の第二関節で触れる。
(愛してる……。愛してるんだ……だから、さようなら……)
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