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「うーん、やっぱり上級クラスの中でも、群を抜いて葉山と堂島が上手いな」

 小さい声で相良が呟いた。

「はい……。あんな難しい振り付けなのに……すごいです」

(一樹って本当にダンス上手いんだな)

 一樹のダンスは毎日のように見ているため上手いこと自体に驚きはしないが、やはりグループの中に入ると一際その腕前は目立ち、周りとの差は歴然だった。

 そして相良が言う通り、一樹の隣にいる伊織も違っていた。

 以前、一樹のレッスンを見学した時に睨まれていたため、あまり見ないようにしていたが、伊織も一樹と同じレベルで踊っていた。

 しかも振り付けをこなすだけでなく、たまに一樹と視線を合わせたりして、息をあわせているように見えた。

(僕と踊っている時より、一樹のダンスが映えて見える……)

 一樹と伊織は同じ有名なダンススクールに一緒に通っていたらしく、昔から二人で聖の振り付けを練習していたと聞いた。

 だが、こんなにも二人は息のあったダンスをすることを初めて知った璃玖は、胸が締め付けられた。

(しょうがないよ……。だって伊織君はずっと一樹の隣にいたんだし……)

 璃玖は心の中で何度も自分に言い聞かせた。

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