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(昨日は色々あったな……)

 璃玖はふと、昨日の出来事を思い返した。

(僕が作らなければいけない曲……。榛名さんが伝えたかった思い……)

 璃玖は目を閉じると、榛名のように自分が死んでしまうとしたら、最後にどんな曲を作るかと考えてみた。

 しかし浮かんでくるのは、忘れないで欲しい、ずっと好きでいて欲しいなど、自分という存在が消えてしまうことへの恐怖に対して相手に求める感情ばかりだった。

(榛名さんが伝えたかったことは、きっと違う気がする……。そんな感情なら自分で書けばいいし、わざわざ聖さんに続きを託す意味がない。やっぱり、榛名さんと相良先生の話、もう少し詳しく聞きたいな……)

「おーい、璃玖君。大丈夫?」

 戻りが遅い璃玖を心配して、聖がバスルームのドアをノックする。

「あっ、大丈夫です。今、行きます」

 いつのまにか湯船には七割ほどのお湯が溜まっていた。

 璃玖は蛇口を捻って湯を止め、バスルームのドアを開けた。

「戻ってこないから心配したよ」

 ドアを開けると、そこには聖が心配そうな顔で立っており、その後ろには隼人もいた。

「よっ! おはよう、璃玖」

「隼人さん、おはようございます。どうしたんですか?」

「ほら、璃玖にプレゼント」

 隼人から急に差し出されたのは、大小様々なブランド紙袋の束で、璃玖は思わず反射で受け取ってしまう。

「えっ……! これは?」

「璃玖はもう、俺の作品と一緒だからな。服もまともなの着てもらわないと」

 そう言われて璃玖は紙袋の中身を覗き込むと、それぞれ服が何着も入っていた。

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