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 璃玖に覆い被さるように四つん這いになった一樹は一向に口づけをやめず、璃玖は段々と呼吸が苦しくなり、一樹の背中を合図するように手のひらで叩いた。

 だが、そんな璃玖の反応を無視するように、口づけは離されないまま今度は璃玖の服の裾から一樹は手を差し入れる。

 璃玖の素肌に触れた一樹の手は上昇している璃玖の体温に反してとても冷たく、その冷え切った体温と感触に璃玖は眼が覚めるように現実に戻された。

「んーんっ!」

 璃玖は夢中で首を振ることによって、やっと一樹の口づけから解放された。

「やだっ……。一樹、ちょっと待ってってば……。僕の話をちゃんと……」

「なんだよ……。なんでさっきから嫌がるんだよ! あの、隼人ってやつならいいのか……? それとも聖さんか?」

「えっ……?」

 璃玖は一樹が何を言っているのか理解が追いつかず、驚いた顔で一樹の顔を見た。

「何言って……」

「なんで聖さんに抱きついたり、泣いたりしているんだよ……」

「それは……」

 璃玖が自ら抱きついたわけではなかったが、抱き寄せられて抵抗をしなかったことや聖の前で泣いたのは事実で、璃玖は返答に困り言葉に詰まってしまう。

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