木こり無双~愛する者のためならば、勇者も神も切り倒す!~

にゃーにゃ

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第5話『港町』

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 朝一に俺とソフィは野営地から移動して、
 空が明るく成る頃には、右手に海の水平線が見えてきた。
 俺とソフィは海を見ながら街道を歩く。

 馬車や人の往来が増えてきたことからも、
 港町が近くなるに連れて道が整備されていて、
 歩きやすくなっていた。

 また、すれ違う人や馬車の数も増えていった。
 そして、昼すぎには港町についた。


 朝、ソフィが目を覚ましたときに、
 俺が見張り番の交代を申し出なかったことについてソフィは怒っていた。
 
 だが、さすがにいろいろな事があって心身ともに相当キツイだろう。
 ソフィに無理はさせたくなかった。

 心身ともにキツイときはよく食べてよく寝るのが一番だ。
 俺が木こりを続けていて学んだことの一つだ。

 それと幼い頃からソフィを見ていて気づいたのだが、
 ソフィは限界まで自分のなかで抱え込もうとするクセがある。
 ソフィは真面目過ぎるのと我慢しすぎるクセがあるのだ。

 俺は頭をかきながら『交代制だったけ、忘れていた』とすっとぼけた。
 そうしたら『もう。本当ケネスらしいわね』と笑っていた。

 すぐに納得されるあたり痴呆老人か何かだと思われていないか心配だ。
 どこかで誤解を解かないといけないかもしれない。


 そうこうしているうちに港町の中に辿り着いた。
 港町の中に入ると、あちこちから威勢のよい声が飛び交っていた。

 人族だけでなく、いろんな亜人種が街の中を歩いていた。
 一言に人族と言っても、まったく服装が異なる人達も居て、
 いろんな地域から人々が集まっていることが分かった。
 
 街に入って数分もすると、この港町が活気のある
 街だということが理解できた。

 王都ほどではないが様々な地域の交易の中心地になっていることから、
 この港町はかなり栄えているようだ。

 祭りのようで歩いているだけで楽しい。

 港にはいろいろな形の船が止まっている。
 あの船のなかには東の大陸に渡る船もあるのだろう。 

 
「まずは宿屋を探そう、荷物を置いて街を散歩しよう」


「ケネス、あなた今日は徹夜でしょ。寝なくても大丈夫なの?」


「大丈夫だ。オフクロに訓練されているからな。7日間までは寝ずの見張りが可能だ」


「ママ……ケネスにそんなことをしていたの?! 全然知らなかった。ママは無口だけどいつもにこにこしていて優しいママという印象しかなかったわ」


「はは。ソフィのその印象も間違ってないよ。オフクロはさ、木剣の稽古とか、野営の見張りの訓練とか、そういう戦闘訓練になるとちょっと雰囲気が変わるんだよ」


「ママ……やっぱり私が連れ子だから、私には気を遣っていたのかな……」


「絶対にそんな事はないよ。オフクロはいつもソフィのことを自分の娘と思って接していたんだ。俺は男だったから強くなって欲しかったんだろう。だから、オフクロのことは信じて欲しい。ソフィがそんな風に思っていると知ったら悲しむぞ」


「うん、そうね。ママは……私のママよね!」


「ああ、そうだ」


 しばらく石畳の外道を歩いていると宿の前にたどり着く。
 木こりとして稼いできたお金があるから暫くはお金に苦労しないとはいえ、
 リーズナブルな宿屋にした。お金は大事である。


「ほぼ満室ですか。今は相部屋しかないのですか?」


「ケネスいいじゃない。家では相部屋で一緒の部屋で寝ていたんだし」


「まあそりゃそうだが。うーん。それじゃ、相部屋でお願いします」


 宿屋の人に部屋の前まで案内され部屋の鍵を渡される。
 荷物を置き、窓から外の景色を眺める。


「さすが港町。絶景だな」


「私、海なんて初めてみたわ。とっても広いのね」


「俺も初めてだが想像以上に大きいな。果てが見えない」


 俺とソフィは貴重品以外、部屋に荷物を置いて出かけた。
 旅人が多く泊まる宿屋だから問題はないだろう。
 

「ソフィのお楽しみの海鮮料理を食べにいくか! 港町だから、きっと王都で食べるのより新鮮でうまいぞ!」


「なによ~。私だけ、食い意地がはっているみたいな言い方」


「ははっ。でもお腹は正直だぞ。さっき『くぅ』って鳴いていたぞ」


「気のせいよっ」


 宿を出て街に繰り出す。港町はどこも活気に満ちていた。
 どこもかしこも人で賑わっていた。

 王都の生活で人の多さには慣れていたが港町は、
 いろいろな地域の人種や種族が集まるせいか活気があった。

 海が見える料理屋に入り、注文をする。
 その料理屋では王都では見たことのない、
 貝やタコがたくさん入ったスープや、
 揚げたエビなどたくさん出てきた。


「お魚の形をしていない海鮮料理がいっぱい出てくるわね。このタコっていうのはコリコリしていて美味しいわ」


「王都で食べていたのは川魚だったり、天日干しされた魚とかが多かったからな。外の街にはいろんな料理があるんだな」


「この海老を揚げたものも美味しいわ。柑橘系のソースに付けて食べるのね。こんど料理を作るときに参考に…………」


 ソフィは自分の言葉を言い切る前に、顔の表情に暗い影がさした。
 シンに言われた心無い言葉の数々を思い出したのだろう。
 俺だって今思い出しただけで腹が立つくらいだ。


「おう! 楽しみにしているぞ。ソフィのメシは最高に旨いからな。オフクロの代わりにソフィが料理当番の日は楽しみにしていたんだ。折角だから、この港町で海鮮料理を覚えて機会があれば食べさせてくれよ!」


「もう! 本当に昔っからケネスは食べ物に関しては目がないわね」


「まあそりゃあ、木こりをしているとずーっと森のなかで木を切り倒す每日だろ? めっちゃお腹が空くんだよ。だからか、俺以外の木こりもメシを食うことが趣味な奴は多かったぞ」


「ふふっ。そのケネスの大きな体を維持するのも大変なのね。いいわよ! 港町で食べた料理を真似た料理をこんど作ってあげるわ。楽しみにしていなさい」


 食事を終えたあとは俺とソフィは港町をブラブラと散歩して、
 日が暮れるまでこの祭りのような街を楽しんだ。
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