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第17話『魔王城』
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「俺が崇めている神様が土着の信仰の神を廃して人為的に作られたものだったとは。食事の前に祈りを捧げる神が、人工的に作られた物という事実は単純に不快だ」
「そうね。特に、パパとママとケネスは食事の前にも手をあわせてお祈りをしてから食事をするほどに真面目な信徒だったんですものね」
「そうだな。俺のオフクロと親父が知ったらガッカリするだろうな。よりにもよって、悪党の考えた偶像を神として崇めていたとは、本来の土着の神様に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだ」
「ふふっ。ケネスは真面目ね。本当の神様だったらきっと事情を知っていても許してくれるわよ。全てが片付いたら、そのもとにあった伝承の神様を探してみるのも面白いかもしれないわね」
「そうだな。新しい目的が出来たな」
「それにしても……いま思うと、教会が子供に配布する絵本や教会が開催していた劇なんかでは邪悪な魔王を勇者が倒すというような内容の物が多かったわね。勇者は魔王を倒す存在、魔王は倒されるべき存在ということを幼い頃から脳内に刷り込むための刷り込むための一環だったのかしら。だとしたら、彼らもなかなか入念に策を練っていたということになるわね」
「ソフィの言うとおりだ。早く止めないと取り返しのつかない事になる」
シンの情報提供によって分かった事は他にもある。
勇者パーティーは教会の指示で動いているが、
彼ら自身にもその行動の具体的な意味は伝えられていないそうだ。
あくまでも神のお告げの一言で済まされているようだ。
「きっと、御旗となる勇者を単騎で魔王と呼ばれる存在を倒せるくらいに強くさえできれば、その時点で教会の目的は達成されたのも同然なのよ。だから、その行動の意味までは知らされない。戦術兵器としての運用でしか期待されていないのよ」
「あいつらが王都の近辺で延々とモンスターを殺し回っているのもただ、教会が魔王城に攻め込ませるタイミングまでに膨大な力を勇者に得させるためということか」
勇者一行は、今回のように遺跡都市などに遠征することは稀で、
ほとんどは王都周辺でモンスターを乱獲しているそうだ。
モンスターを殺せば魂を吸収し"レベル・アップ"できる。
レベル・アップすれば、ほぼ無限に強くなるそうだ。
理屈は分からないが確かに厄介な能力だ。
ただ、こちらにとって幸いなことは、
"レベル・アップ"で強くなれるのは、
勇者シンのみに限られるということだ。
シンの仲間も同じように強くなっていたとしたら、
かなり厳しい戦いを挑まなければいけなかった。
だが、その点を警戒しなくて良いというのは、
俺とソフィにとっては多いなる福音だ。
「教会という組織……鬱陶しい組織だな。俺は、田舎でソフィと一緒に暮らせればそれだけで幸せになれると思っていたが、教会が居る限りはその暮らしは訪れない。だから、俺は教会を潰そうと思う」
「その……ケネスは、私と一緒に暮らしたいと思ってくれているの?」
「無論だ。今後も生活の邪魔をしてくる存在を潰さないといけない。規模の大きな組織ではあるが、倒すしかない」
俺が狙われるだけならまだ良い。
だが……港町の暗殺者の一件がある。
教会は人の命を重く捉えていない。
もし俺とソフィが見つかれば、
仮に俺とソフィが教会に反目をしていなくても、
過去の勇者の権威に泥を塗ったその罪によって、
いかなる手をつかってでも殺そうとするだろう。
俺はソフィと一緒になりたい。
そのために確実に障害となる教会は、
どんな手段を使ってでも完全に破壊するしかない。
だが具体的にどうするか。
相手は巨大な組織である。
「ソフィは俺が教会を倒せると思うか?」
言葉の意味が分からなかったのか唖然としている。
文字通りの意味で言っただけなのだが
「…………王都の教会の正規部隊の数は千を超える。戦闘職の比率はわからないわ。仮に楽観的に見積もって10分の1としても、100人の魔術師を相手に戦うことになる。ケネスの強さを私は信じている、でも魔法相手に斧一本だけではさすがに……難しいと思うわ」
冷静な分析だ、ソフィが隣に居ると助かる。
ソフィが隣にいれば、俺が道を誤ることもないだろう。
「無数の魔術師に包囲され遠距離から一方的になぶり殺されるということか」
「そうね。きっと手練れの魔術師が大勢いるに違いないわ。あとは得体の知れない"神聖魔法"……既存の魔法の枠から逸脱した魔法が厄介ね。今のところ、これらの魔法の詳細が分からない」
「ああ……あの、仲間に傷や痛みを押し付ける外法の事か」
「そうね。それにきっと……あの魔法一つだけではなく他にも奥の手を隠し持っているはずよ。こちらの武装は斧、対して相手の使える魔法は不明。現時点で直接攻め込むのは負け戦をしにいくのも同じことだと思うわ」
シンたち一行は遺跡都市の治癒院で足止めだ。
見立てによると遺跡都市の施設では2~3ヶ月ほど掛かるらしい。
シン以外の彼らがいかに優れた存在だったとしても、
少なくとも1ヶ月は足止め出来るであろう。
船での移動の時間も考慮するのであれば、
王都の教会に彼らが報告に戻れるのは1月以上先の事になるだろう。
そもそも仮に王都に帰還したとしてもシンの性格上、
俺に破れた事をそのまま伝えるとは考えづらい。
俺たちは最低でも1ヶ月間以上の猶予を得たことになる。
その1ヶ月の間に教会も勇者も完全に粉砕する方法を考える必要がある。
そんな時にふと遺跡地下の隠し部屋でソフィが何らかの、
メモをスケッチ帳に書いていた事を思い出した。
「ソフィ、スケッチに何かメモを取っていたようだが」
口足らずの言葉ではあるが賢いソフィにはこの言葉で通じる。
そして俺に、その時に書きとめていた内容を説明する。
「ケネス、いろいろと端折って説明するけどいい?」
「ああ。学術的な難しい話は俺には分からないから、その方が助かる」
「だよねっ! 一言で言うとあの映像は私へのメッセージと、私にしか分からない暗号で別のメッセージが隠されていたの。つまり、私にしか解けない専用のパズルみたいな物が隠されていたというわけね」
「なるほど」
「あの時はまだ解読仕切れなかったっけどもう解読は完了したわっ! そして、パパとママの遺したメッセージが……教会に一矢報いるための起死回生の一手になるかもしれないの」
「ふむ。その一手というのは」
「魔王が統治する"魔導法国"の力を借りるの」
「魔導法国というのは、魔王が統治する魔族の支配する国のことか?」
「そう、魔王と呼ばれる存在が統治する国家。教会を崩壊させるためには、最終的には魔王に勇者を倒してもらわなければいけない。そのためにはなるべく早めに彼らと近づく必要があると思うの」
「そうだな。ソフィの言うとおりだ。早めに現状の俺たちが抱えている情報を伝える必要がある。だが、情報を提供するにしても魔導法国とやらが本当に信頼のおける相手かどうかの判断も必要だ。教会と同じような邪悪な集団なのであれば、話は別だからな」
「それは……確信はないけど、きっと大丈夫だと思うの。」
「むぅ……? それはどうしてだ」
「実はパパとママと私が暮らしていた"研究都市国家"と"魔導法国"は友好関係にあったの。少なくともそのときは、魔族とは教会側の呼び名であり、生まれつき魔力が高い亜人種というのが正しい認識かしら。少なくとも当時はいたって普通の国だった」
「なるほど」
「私達が暮らしていた"研究都市国家"がアーティファクトの技術を提供していたの。その見返りとして、魔導法国側からは有能な魔術師の派遣をお願いしていた。お互いに苦手な分野を協力しあうことでずっと良い関係を築いていたの」
「もう……だいたいのことは察してはいるが念のための確認だ。魔王というのは世界征服を狙う邪悪の化身ではないということだな」
「そうね。シンの理解が正しいわ。魔導法国の王を指す名称。確かに王になるためには高い魔力適正を持っていることが条件になるから戦えば強いのかもしれないわ。だけど、あくまでもその役割は国を統治すること。戦闘のプロでは無いわ。完全に成長した勇者と一騎打ちで戦えば分が悪いかもしれない……」
「なるほど。まずは直接その魔導法国に行かないとだな。強力なモンスターに囲まれた地域だと聞いたが。どうやって向かうか……それが一番の問題だ」
「えへんっ! それは大丈夫」
「何かソフィには策があるのか?」
「遺跡都市ピラミッド最上部の玄室。そこに、地下の部屋のように聖剣を挿し込むことで起動する転移装置があるの。その転移先が魔導法国の王城の中に繋がっている。つまりは、今すぐに移動することが可能なのよ!」
「さすがはソフィだ」
教会はまだ魔導法国へ渡る手段を持っていないはずだ。
これはかなりのアドバンテージになる。
更に幸運にも本来はモンスターの魂を吸収することで、
無限に強くなれるはずの勇者の育成がまだ終わっていない。
おそらく本来の工程より遅延しているはずだ。
最終的には一人で国を堕とすほどの力を身につける予定なのだろう。
まだそこまでの育成が完了していない現時点で教会側が
動くとは考えづらい。
「よし、それじゃあ行こう。次の旅の目的地は魔導法国だ」
「そうね。次の街も楽しいところだと良いわね」
「もちろんだ」
王都を出て気づいたことがある。この世界は広い。
いろいろな人がいろいろな事を考えながら一生懸命に生きている。
だからこそ面白い。
だからこそ教会のように世界の真実を捻じ曲げ、
不当な暴力によってこの世界を我が者にしようとする、
そんな相手は絶対に許容してはいけない。
少なくともきっと俺の親父とオフクロならそう考えるだろう。
最上階の玄室の中にはソフィの言う通り、
偽装された転移ゲートが有り、
聖剣を挿し込むことで起動した。
俺はソフィをお姫様のように抱きかかえる。
この行為に意味はない。
単にソフィの重みを両手に感じたかっただけだ。
そうすると、なんだか気持ちが落ち着くのだ。
「それじゃ、いくぞ」
「いっきましょー! 目的地は魔導法国!」
そんなことを考えながら転移ゲートの上に乗った。
その瞬間に俺とソフィの体は膨大な光に包まれた。
「そうね。特に、パパとママとケネスは食事の前にも手をあわせてお祈りをしてから食事をするほどに真面目な信徒だったんですものね」
「そうだな。俺のオフクロと親父が知ったらガッカリするだろうな。よりにもよって、悪党の考えた偶像を神として崇めていたとは、本来の土着の神様に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだ」
「ふふっ。ケネスは真面目ね。本当の神様だったらきっと事情を知っていても許してくれるわよ。全てが片付いたら、そのもとにあった伝承の神様を探してみるのも面白いかもしれないわね」
「そうだな。新しい目的が出来たな」
「それにしても……いま思うと、教会が子供に配布する絵本や教会が開催していた劇なんかでは邪悪な魔王を勇者が倒すというような内容の物が多かったわね。勇者は魔王を倒す存在、魔王は倒されるべき存在ということを幼い頃から脳内に刷り込むための刷り込むための一環だったのかしら。だとしたら、彼らもなかなか入念に策を練っていたということになるわね」
「ソフィの言うとおりだ。早く止めないと取り返しのつかない事になる」
シンの情報提供によって分かった事は他にもある。
勇者パーティーは教会の指示で動いているが、
彼ら自身にもその行動の具体的な意味は伝えられていないそうだ。
あくまでも神のお告げの一言で済まされているようだ。
「きっと、御旗となる勇者を単騎で魔王と呼ばれる存在を倒せるくらいに強くさえできれば、その時点で教会の目的は達成されたのも同然なのよ。だから、その行動の意味までは知らされない。戦術兵器としての運用でしか期待されていないのよ」
「あいつらが王都の近辺で延々とモンスターを殺し回っているのもただ、教会が魔王城に攻め込ませるタイミングまでに膨大な力を勇者に得させるためということか」
勇者一行は、今回のように遺跡都市などに遠征することは稀で、
ほとんどは王都周辺でモンスターを乱獲しているそうだ。
モンスターを殺せば魂を吸収し"レベル・アップ"できる。
レベル・アップすれば、ほぼ無限に強くなるそうだ。
理屈は分からないが確かに厄介な能力だ。
ただ、こちらにとって幸いなことは、
"レベル・アップ"で強くなれるのは、
勇者シンのみに限られるということだ。
シンの仲間も同じように強くなっていたとしたら、
かなり厳しい戦いを挑まなければいけなかった。
だが、その点を警戒しなくて良いというのは、
俺とソフィにとっては多いなる福音だ。
「教会という組織……鬱陶しい組織だな。俺は、田舎でソフィと一緒に暮らせればそれだけで幸せになれると思っていたが、教会が居る限りはその暮らしは訪れない。だから、俺は教会を潰そうと思う」
「その……ケネスは、私と一緒に暮らしたいと思ってくれているの?」
「無論だ。今後も生活の邪魔をしてくる存在を潰さないといけない。規模の大きな組織ではあるが、倒すしかない」
俺が狙われるだけならまだ良い。
だが……港町の暗殺者の一件がある。
教会は人の命を重く捉えていない。
もし俺とソフィが見つかれば、
仮に俺とソフィが教会に反目をしていなくても、
過去の勇者の権威に泥を塗ったその罪によって、
いかなる手をつかってでも殺そうとするだろう。
俺はソフィと一緒になりたい。
そのために確実に障害となる教会は、
どんな手段を使ってでも完全に破壊するしかない。
だが具体的にどうするか。
相手は巨大な組織である。
「ソフィは俺が教会を倒せると思うか?」
言葉の意味が分からなかったのか唖然としている。
文字通りの意味で言っただけなのだが
「…………王都の教会の正規部隊の数は千を超える。戦闘職の比率はわからないわ。仮に楽観的に見積もって10分の1としても、100人の魔術師を相手に戦うことになる。ケネスの強さを私は信じている、でも魔法相手に斧一本だけではさすがに……難しいと思うわ」
冷静な分析だ、ソフィが隣に居ると助かる。
ソフィが隣にいれば、俺が道を誤ることもないだろう。
「無数の魔術師に包囲され遠距離から一方的になぶり殺されるということか」
「そうね。きっと手練れの魔術師が大勢いるに違いないわ。あとは得体の知れない"神聖魔法"……既存の魔法の枠から逸脱した魔法が厄介ね。今のところ、これらの魔法の詳細が分からない」
「ああ……あの、仲間に傷や痛みを押し付ける外法の事か」
「そうね。それにきっと……あの魔法一つだけではなく他にも奥の手を隠し持っているはずよ。こちらの武装は斧、対して相手の使える魔法は不明。現時点で直接攻め込むのは負け戦をしにいくのも同じことだと思うわ」
シンたち一行は遺跡都市の治癒院で足止めだ。
見立てによると遺跡都市の施設では2~3ヶ月ほど掛かるらしい。
シン以外の彼らがいかに優れた存在だったとしても、
少なくとも1ヶ月は足止め出来るであろう。
船での移動の時間も考慮するのであれば、
王都の教会に彼らが報告に戻れるのは1月以上先の事になるだろう。
そもそも仮に王都に帰還したとしてもシンの性格上、
俺に破れた事をそのまま伝えるとは考えづらい。
俺たちは最低でも1ヶ月間以上の猶予を得たことになる。
その1ヶ月の間に教会も勇者も完全に粉砕する方法を考える必要がある。
そんな時にふと遺跡地下の隠し部屋でソフィが何らかの、
メモをスケッチ帳に書いていた事を思い出した。
「ソフィ、スケッチに何かメモを取っていたようだが」
口足らずの言葉ではあるが賢いソフィにはこの言葉で通じる。
そして俺に、その時に書きとめていた内容を説明する。
「ケネス、いろいろと端折って説明するけどいい?」
「ああ。学術的な難しい話は俺には分からないから、その方が助かる」
「だよねっ! 一言で言うとあの映像は私へのメッセージと、私にしか分からない暗号で別のメッセージが隠されていたの。つまり、私にしか解けない専用のパズルみたいな物が隠されていたというわけね」
「なるほど」
「あの時はまだ解読仕切れなかったっけどもう解読は完了したわっ! そして、パパとママの遺したメッセージが……教会に一矢報いるための起死回生の一手になるかもしれないの」
「ふむ。その一手というのは」
「魔王が統治する"魔導法国"の力を借りるの」
「魔導法国というのは、魔王が統治する魔族の支配する国のことか?」
「そう、魔王と呼ばれる存在が統治する国家。教会を崩壊させるためには、最終的には魔王に勇者を倒してもらわなければいけない。そのためにはなるべく早めに彼らと近づく必要があると思うの」
「そうだな。ソフィの言うとおりだ。早めに現状の俺たちが抱えている情報を伝える必要がある。だが、情報を提供するにしても魔導法国とやらが本当に信頼のおける相手かどうかの判断も必要だ。教会と同じような邪悪な集団なのであれば、話は別だからな」
「それは……確信はないけど、きっと大丈夫だと思うの。」
「むぅ……? それはどうしてだ」
「実はパパとママと私が暮らしていた"研究都市国家"と"魔導法国"は友好関係にあったの。少なくともそのときは、魔族とは教会側の呼び名であり、生まれつき魔力が高い亜人種というのが正しい認識かしら。少なくとも当時はいたって普通の国だった」
「なるほど」
「私達が暮らしていた"研究都市国家"がアーティファクトの技術を提供していたの。その見返りとして、魔導法国側からは有能な魔術師の派遣をお願いしていた。お互いに苦手な分野を協力しあうことでずっと良い関係を築いていたの」
「もう……だいたいのことは察してはいるが念のための確認だ。魔王というのは世界征服を狙う邪悪の化身ではないということだな」
「そうね。シンの理解が正しいわ。魔導法国の王を指す名称。確かに王になるためには高い魔力適正を持っていることが条件になるから戦えば強いのかもしれないわ。だけど、あくまでもその役割は国を統治すること。戦闘のプロでは無いわ。完全に成長した勇者と一騎打ちで戦えば分が悪いかもしれない……」
「なるほど。まずは直接その魔導法国に行かないとだな。強力なモンスターに囲まれた地域だと聞いたが。どうやって向かうか……それが一番の問題だ」
「えへんっ! それは大丈夫」
「何かソフィには策があるのか?」
「遺跡都市ピラミッド最上部の玄室。そこに、地下の部屋のように聖剣を挿し込むことで起動する転移装置があるの。その転移先が魔導法国の王城の中に繋がっている。つまりは、今すぐに移動することが可能なのよ!」
「さすがはソフィだ」
教会はまだ魔導法国へ渡る手段を持っていないはずだ。
これはかなりのアドバンテージになる。
更に幸運にも本来はモンスターの魂を吸収することで、
無限に強くなれるはずの勇者の育成がまだ終わっていない。
おそらく本来の工程より遅延しているはずだ。
最終的には一人で国を堕とすほどの力を身につける予定なのだろう。
まだそこまでの育成が完了していない現時点で教会側が
動くとは考えづらい。
「よし、それじゃあ行こう。次の旅の目的地は魔導法国だ」
「そうね。次の街も楽しいところだと良いわね」
「もちろんだ」
王都を出て気づいたことがある。この世界は広い。
いろいろな人がいろいろな事を考えながら一生懸命に生きている。
だからこそ面白い。
だからこそ教会のように世界の真実を捻じ曲げ、
不当な暴力によってこの世界を我が者にしようとする、
そんな相手は絶対に許容してはいけない。
少なくともきっと俺の親父とオフクロならそう考えるだろう。
最上階の玄室の中にはソフィの言う通り、
偽装された転移ゲートが有り、
聖剣を挿し込むことで起動した。
俺はソフィをお姫様のように抱きかかえる。
この行為に意味はない。
単にソフィの重みを両手に感じたかっただけだ。
そうすると、なんだか気持ちが落ち着くのだ。
「それじゃ、いくぞ」
「いっきましょー! 目的地は魔導法国!」
そんなことを考えながら転移ゲートの上に乗った。
その瞬間に俺とソフィの体は膨大な光に包まれた。
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