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第11話『神話級農具』

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「お待たせたな。サトシ殿から
 頼まれていた農具一式は完成したぞ!
 それと、井戸に使うと言っていた
 ポンプもできあがった」

ドワーフの村の女騎士グッゴローゼが
数名の荷運びをするドワーフとともに
サトシとミミの開拓地にやってきていた。

クワ、カマ、スキといった農作業
に必要なものから、作業着一式
まで必要なモノはすべて
運んできてくれていた。


「おっ! さすがドワーフ。
 仕事が早いな!」

「さすがドワーフの中でも世界一の
 鍛冶師が暮らしていている
 隠れ里、農具は完璧なできなのじゃ!」


サトシは農具の中からクワを
手にもっていろんな角度から眺める。


(うわー。すごい農具がピカピカ
 に光ってる。レアリティー最高の
 アイテム特有のあのピカピカだ!)


ちなみに一例だが、今回の農具
作成に使ったエクスカリバーの
レアリティー等級は伝説級《レジェンダリー》の
更に上の幻想級《ファンタズマ》の更に上の
神話級《ミソロジー》の武器である。


――つまり、超凄い武器という事だ


代々勇者が魔王を倒すのに用いた
聖剣が伝説級《レジェンダリー》なので、それよりも
強い武器を農具にしたということだ。


(まあ神話級《ミソロジー》とかいっても。
 もうドロドロに溶かして
 クワとかスキにしちゃったけどな!)


「ところで、サトシ殿から預かった
 品々は我々、ドワーフの一族ですら
 今までに見たことのないような
 物凄い武器や防具だったのだが、
 あのような一級品を本当に農具に
 してしまってよかったのだろうか?」

「まったく問題ない。
 そもそも俺を土属性専門だから
 武器とか使いこなせないし、
 危険な刃物を盗まれたら大変だからな」


「サトシ殿が、そういうのであれば
 良いのだが……」


複雑な表情でグッゴローゼは応える。


(とは言っても、神話級のアイテムを
 ゲットするために、この世界の
 大災厄"ウ・ラヴォース"を倒して
 しまった事を話したらめちゃくちゃ
 まずいことになるんだったよな。

 グッゴローゼさんを信じていない
 わけではないけど、この神話級の
 武具を手に入れた経緯を話す
 わけにもいかないわけだから
 ここは適当に誤魔化そう)


そんなことを考えていると、
ミミが空気を読んだのか
サトシに声をかけてくる。


「旦那さまよ。せっかくドワーフが
 新しい農具を作ってくれたのじゃから
 試しに使ってみてはいかがかの?
 "でもんすとれいしょん"というヤツじゃの」

「そうだな。せっかくだし使ってみるか!
 いろいろと農具があるけど、全部ためして
 いたら日が暮れるから試しに
 まずはこのカマから試してみよう」


サトシはトマト畑に向かって
聖剣エクスカリバーや魔槍ゲイボルグ
などを溶かして作った
神話級のカマを振るう。


(……マジかっ?!)


軽くカマを横薙ぎに振るった
だけにも関わらず、区画ごとに
区切られた畑一区画分の
トマトのみをピンポイントに
刈り取ることに成功。


更に驚くべきことに
茎から地面に落ちたトマトには
一切のキズはない。

トマトや桃などのすぐに痛み
やすいものは衝撃に弱いため
手でもがなければいけなかったり
するのだが、このカマを
使えばそのようなことを
心配する必要は無さそうであった。


この農具に付与されている
なんらかの加護が
働いたものと思われる。
――さすがは神話級農具である。


(凄い! まるでルーンファ○トリー
 や牧場○語の終盤に手に入る
 最上級のクワを使った時のように
 収穫物だけを刈り取れとることができたぞ!
 ってーか、一体どういう理屈だよっ!)


そんな感じでサトシが心の中で
突っ込んでいると、ミミがカマを
持っていってトウモロコシ畑の
収穫で"でもんすとれいしょん"
を楽しんでいた。


「ほう。これは便利じゃのぅ。
 農作業は腰に負担がかかるから
 一振りだけで一区画分の作物を
 収穫できるのはめっちゃ便利なのじゃ」

「確かに。トマトとか、キズを
 つけないように収穫するのって
 割とガチで大変なんだよな。
 これはめっちゃ助かるアイテムだな!」


「そうじゃの。それにちょっと
 うっかり刃の部分に指を
 触れてしまったのじゃが
 人体は切れないような加護が付与
 されておるようじゃの」

「って、今回はたまたま大丈夫
 だったけど刃物は危ないから
 気をつけて使うようにな!」

「はいなのじゃ~!
 気をつけるのじゃ!」


元気よく応えたので、
サトシはミミの頭を撫でる。


「刈ったトマトはゴーレムたちに
 収穫させよう。これで農作業
 は劇的に楽になったな!
 スローライフ実現まで一歩前進だ!」


「次はポセイドンの三叉槍を
 溶かして作ったジョウロで
 水を撒いてみよう」

「そのような花に水をくれてやる
 程度のジョウロで何かできる
 のかの?」

「まぁ、見てろって。俺の勘が
 正しければ。このジョウロも
 何らかの加護を持っているはず!
 なにしろピカピカ光っているからな!」


サトシがトマトを栽培している
区画にポセイドンの三叉槍を溶かして
作ったジョウロを傾けただけで

畑全体に根腐りしない程度の
適量の雨が降り注ぐ。
さすがは神話級のジョウロである。


(ここらへんで異世界転生では
 お約束で伝統のあの台詞を
 言っておかないとな)


「フッ……。まるで、ゲームの世界だな」


サトシはオーバー○ードの
アインズさんの声色を
真似して渋めの声で呟いた。


「のじゃあ……?」

「いやさ、やっぱ異世界転生ファンタジー
 大好きマンとしては一度この台詞を
 言ってみたかったんだよ」

「ふむ? 良くは分から
 ないのじゃが、それで
 満足できたかの?」

「おう。めっちゃ満足だ!!」

「ふふっ。サトシが楽しいの
 ならそれはよかったのじゃ」


そんな感じで、ラブラブして
いるとドワーフの女騎士が
サトシに声をかける。


「サトシ殿には、我々の村を
 守ってもらたことを感謝
 している。その上で更に
 お願いしたいことがあるの
 だがよいだろうか?」


「おう、全然気にしなくていいぞ!
 何か困ったことがあったときは
 お互い様だからな。こちらと
 しても、こんな凄い農具を作って
 くれたドワーフの一族に感謝している」


「恩にきる。それでは折り入っての
 お願いがあるのだが、ドワーフの
 村の一族をこの村に移住させても
 良いだろうか? 

 魔獣の群れによっていままでに
 多くの仲間たちが犠牲になってきた
 ぜひとも、屈強なるサトシ殿の
 庇護下に入りたい。無論、住居
 などの必要なモノは我々が作るつもりだ」


ドワーフの女騎士は申し訳なさそうに
サトシに願い事を切り出す。


「俺は問題ないが、ミミは
 他種族が移住しても問題ないか?」

「妾はまったく問題ないのじゃ。
 むしろ、村の発展を考えるなら
 ぜひとも移住をお願いしたい
 ところなのじゃ」

「ということで、移住はオーケーだ!」

「サトシ殿、ミミ殿、恩にきる」

「ところでグッゴローゼさん、
 ドワーフの人たちは
 何人くらい移住する予定なの?」

「35名だ。多すぎるだろうか?」

「いやまったく問題ないぜ!
 家も俺が作るから安心して、
 いつでも移住してくれば良い。
 食糧問題も、この便利な農具
 を使えば」


(まぁ。家とか作るのは
 ゴーレムなんだがな!)


「それに新しい農具のおかげで
 作物の大量生産、大量収穫
 ができるようになったから
 全然余裕で受け入れられる」

「感謝する!」

「その代わり、町の発展のために必要な
 水車やポンプや道具作り、農具の
 メンテナンスなんかについては
 お願いするよ!」

「もちろんだ!」

代表としてこの村に訪れた
ドワーフの女騎士とサトシ
は強く握手をする。


「旦那さまよ、よかったの。
 これで、サトシの目指す
 "すろおらいふ"にまた一歩
 近づいたのじゃな」

「そうだな! この調子でドンドン
 開拓を進めるぞー!」

===================
【辺境村の開拓状況】

土属性:1名
世界樹:1名
ドワーフ:35名
ゴーレム:とてもたくさん
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