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第四章5 『船上の決戦!早撃ち勝負!』
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船主の先端で風を切りながら颯爽と立つ。
深々と三角帽《トライコーン》を被り、
片手には仰々しい装飾のついたフリントロックピストルを持つ。
航海者の青年マルコポーロは改めて告げる。
「ぃよーそろおおおおうっ!!! さっきの艦砲射撃を受けても生きているとは随分と運のいい奴らだなあ!! こちら側の再三の平和的な交渉も無視して、だんまりを決め込むとはよほど命が惜しくないらしいなぁ!! ここまでぶっ放してまだ分からないっつーなら鉄球のお代わりをくれてやらああっ! 艦砲の弾丸の再装填開始いっ!! 辺境の蛮族に文明開化のお見舞いだああああっ!! ボンボヤージュいいい!!」
遥か上空から拡声器のような物で、マルコポーロのをカグラ達は一方的に聞くことができるが、カグラ達の声を1000メートル上空に伝える手段は少なくともこの場には存在しない。おそらく彼の住んでいた異世界では拡声器を保有しない国が存在しないことの方が異常なのだろう。
彼の住んでいた異世界の国際法によると3分間以内に無回答の場合は交戦意志有りの判断と見なされるということからも、かなり好戦的な世界であることが想像できる。
「どうするよ。何か良い策があるか、セレネ。口八丁手八丁で煙に巻きたいところだが、1000メートルも離れた上空に居る船相手に交渉する手段なんて存在しねえ。いや………っもし仮に言葉で会話が出来たところで、あの男とまともな会話が成立するとは全く思えねーが。つまり、これは俺があの船に乗り移って、一対一の平和的な肉体言語で交渉するしかなさそうだな。…………ところでセレネ、いつも頼って悪いが、あの船にたどり着く妙案は何かあるか?」
そう言いながらカグラは覚悟を決め、戦場の決戦に備えて柔軟体操を開始する。
「現状の戦力でとり得る…………最適解を分析中…………そうデスね、例えば空中に足場を作るのは如何デス? 先日の遺跡の一件で見た、カグラの記憶映像の中のガラスの階段を、氷で再現するのデス。強度的には、若干の不安はありますが、確実な方法はそれ位デス」
「ちぃっとばかしあの船まで距離があるが、まあ一歩一歩着実に昇って行くって方法は安心感はあるな。マルコ・ポーロとやらの一対一の強さは分からないが、このまま一方的になぶり殺しにされるよりも賭けに出た方が良いと言うのは俺も同意だぜぇ。船上の白兵戦なら、まだ勝機はあると思うぜっ! ソレイユは連続かつ長時間魔法を展開しなければならないけど、大丈夫か?」
「にっひひ。ボクに任せるにへぇ。………今、セレネから送られてきたデータリンクのイメージを元に空中に足場を展開するにへ。ただ、あくまでも氷の足場。ガラスの階段のような強度は無い使い捨ての足場だから、十分気をつけるにへ。ただ空気中の水分を凝固して足場を作るだけだから、強度は保証できないけどそれで問題ないにへ?」
「ああ、大丈夫だぜっ! ロックマンの消えるブロックの要領で、消える足場をジャンプしてガンガン上に昇って行ってやらあ!」
「念のため、今日の気温における…………空気中のH2O比率を解析……ッ……計算数式はNm3…………OKッ!…………大気中の1立方㎝中の成分として、足場を作るのに十分な水分量を確認…………ただし、高度が高くなるごとに大気密度が薄くなりマス………それに応じて、足場も脆くなるのでその点だけは気を付けるデスッ」
「にっひひひひ。セレネっち! りょうーかい。高度高めの時は、ちょい強めに氷結魔法を展開するにへぇ。ちょっとだけ、魔力量が心配だけど、なんとか頑張るにへ」
「ソレイユ、頼みマシタ!………足場の展開先座標については、ソレイユとカグラにデータリンク。術式の展開と、カグラが足場を移るタイミングは、ワタシに併せて下さいっ! 当然、敵の艦砲による反撃も予想されますのでお気をつけてっ!」
「それじゃー! いく足場を作るにへぇ! 氷の精霊足場を作れ!」
「それじゃーいくぜいっ! それっケンケンパっとっ!」
ソレイユが術式を展開すると、空中に氷の足場が出来上がる。ただし脆弱。まるで薄氷の上を渡るが如き闘い方である。それはまるで横スクロールアクションゲームの消える足場っ!
カグラは神楽流跳躍術、蛙草《ぎゃるぐさ》にて足場を蹴り跳び渡る。蛙草《ぎゃるぐさ》は元は、他社との間合いを一気に詰め、他の技と連携してして使われる起点として使われる技である。その技を、一段一段昇るために使用する。
「ひえっ! この足場こえーぜ! これジャンプの時に蹴ると反動で割れるのなっ! この高度から落ちたら、助からねぇし、高度が高くなるごとに風も強くなるわできついな。はは…………っ生きた気しねぇわ」
現在は高度、333メートル。その高さは東京タワーと並んだっ! だが、飛空艇まではまだまだ遠いっ!
「はっはっは! 無駄な悪あがきをおおっ! それ、ボンボヤージ! そしてっ!よーそろおおおおおおおおっ! あの空を掛ける野蛮な少年に向けて全砲門艦砲開放集中砲撃ぃいいいいいいっ!!!」
弾丸の雨あられが、ソレイユが展開した氷の足場術式を砲弾が貫通して次々にぶち抜いて行くっ! 事実、カグラの足元の氷の足場も砲撃にて破壊され、墜落するカグラは一瞬死を覚悟した。
だがセレネとソレイユが機転を利かして、元の足場から10メートル下に新たなる足場を作っていたことで一命を取り留めた。
「とぅおりかじいっぱいぃっいいい!! 次弾装填っ! 旅は私の戦場だぁああああっ! 自分の目で見ぃ、自分の頭で考えるぅ! 辺境の蛮族どもに我が国の威信を見せるのだあああっ!!!! ひゃっはー! よおそろおおおおおおおっ!」
ソレイユの額から、汗が流れ出す。魔力の過剰行使による明かな疲労。小規模な魔法とはいえ、連続かつ長時間で展開することは非常に高い集中力を要することである。カグラ達と行っていた一連の特訓で、長時間一定の強さで重力魔法を使い続けていた経験が今になって役に立ってきている…………。
とはいえ、特訓でソレイユの集中力の限界をとっくに超えている。今も魔法を使えるのは、ソレイユの意地以外はない。カグラは現在、高度634メートル今やスカイツリーの高さにまで達している。当然砲撃は続いているが、これを避けつつも、足場を転々としているのだ。
「にひ……ひっ………っとは言っても、さすがに結構シンドイのは事実にへぇ……。空から落ちてくる砲撃にも注意しなきゃいけないしで、ボクの思考回路はショート寸前にへぇ………はぁ…………はぁ………」
「ソレイユ………しっかりするデスッ!………まずは水飲んでくだサイッ」
「にっへへ。………セレネっち、さんきゅっ! 少し元気でたよ。それにしてもカグラとんでもない高い所まで昇っていってるね。ありゃ、落ちたらさすがに即死にへ。………ボクたちも頑張るにへ」
ここは上空1000メートル。カグラは、あのマルコ・ポーロの船と同じ高度に立っている。
「はあっ………はぁ…………っ………さすがに、酸素が薄いせいか、結構シンドイぜっ! あと突風が怖すぎる。セレネが風向きとか計算して指示してくれなきゃこんなん無理ゲーだったぜっ! そにしても視えてきやがったぜっ! あれがあの船の船主かっ! へへへっ! あの男、絶対ぶん殴ってやるぜ!」
「カグラ!………目の前にマルコポーロの戦艦。左、右どちらに行きますか?」
「ここは左だっ! 大抵の戦艦は左舷が弱いという統計が有る。更に付言するならなぁ、俺の愛読書ハンターハンターという漫画のクラピカ理論でも『右と左で迷ったら左が正解』というお墨付きだぁっ!」
「…………カグラがいつも通り…………何言っているか分からないデスが、いつも通りの言葉を聞けて安心しまシタッ!…………ラジャ…………ソレイユ、左方向に足場を展開っ!…………座標はデータリンク照会のコト」
「にひっ……ッひ……了解にへっ! 氷の精霊足場を作れ」
足場を伝い、ついにカグラはマルコ・ポーロの戦艦の中への侵入に成功する。目の前には、マルコポーロ。カグラの船内の侵入に対して一切動じていない。おそらく、船内での白兵戦の経験も数多く経験していると思われる。
マルコ・ポーロの片手には連装式フリントロックピストルを保持。照準は、カグラの脳天。狙った獲物は絶対に外さないという自信からうまれる、慢心ではない余裕の表情。つまりは、この男は白兵戦においても負ける気は更々ないということ!
「ボンジョールノッ! 私の名前はマルコ・ポーロっ! ようこそ招かれざるお客人。あなたを土足でこの船に入ることを許可しましょう!」
「ありがとうよ。だけど、お前の許可はいらねぇさ。マルコ・ポーロ、お前に決闘を申し込むっ!………受け入れるか?」
「ははん。命知らずですねぇ。ふん、面白い。それじゃあ私の国の決闘法に則り、決着は銃による早撃ちでいかがですか?」
「ははん。西部劇スタイルか。いいぜ。ただし、俺は銃は使わねぇ。お前を舐めているわけじゃねえさ。……徒手空拳が、俺の本気のスタイルって、わけさ」
「いいでしょう。ふん、拳闘志とは船上で何度か闘ってきました。時には彼らの拳が銃を上回ることがあるのも事実。いいでしょう。それでは、私が指でコインっを弾きますので、それが落ちたらお互いが撃ちあいましょう。良いですね」
「異存は無い………勝負は一瞬だ」
マルコ・ポーロは舞台役者のように大げさに拍手を送る。絶対に自分は負けることはないからくる、慢心とは違う、自信。当然、彼も油断しているわけではない。これから行われる、決闘は彼の本気っ!
「招かれざる客人よ。辺境の国の侍としての矜持、その勇気、称賛に足る。グラッツィエ、ブラーボ、そして………………アリーデヴェルチィッ!!」
マルコ・ポーロの連装式のフリントロックピストルは2発しか撃てないような銃である。なおかつ、再装填に撃鉄を引くアクションが必要。小型の火縄銃のような物だ。カグラからしたら装飾華美な、骨董品としての価値しかない旧世代の遺物。
………だが、そのような旧時代の遺物も持ち手によって、意味合いが大きく変わる。引き金に指が掛かり、球状の弾丸が射出される。………確実に当たる射線軸にて、引き金を引いた。だから、彼は引き金を引いた瞬間に勝利を確信していた。
――だが、この弾丸をカグラは回避する。
身体能力を極限まで鍛えたカグラとは言え、放たれた弾丸を目視で確認してその後に避けることは不可能。
だが、引き金を引き前の相手の視線、呼吸、一瞬の筋肉の強張り、そして銃口の確度、等々様々な要素から引き金を引く、瞬間を先読みすることは可能。………つまり、カグラの目には、マルコ・ポーロが放つ弾丸の軌道が確実に見えているっ!
「蛙草《ぎゃるぐさ》、派生っ! 神楽流祭法、水浸の型”空木《うつぎ》”!」
神楽流の跳躍技によって、10メートルの距離を一瞬で詰める………そして、懐に入りこみ、零距離から水月に掌底を放つっ!
この技は直接の打撃により肉体を損壊させる破壊技ではない。人間の体を伝う体内の水分を媒介として振動を伝わせることによって、体の内部から破壊する鎧通しの技。人間の体は70%は水分、つまり…………
「………ぐはっ…………!!」
マルコ。ポーロの口からは、おびただしい量の鮮血。眼球からは血涙、耳からも血が流れている。”空木《うつぎ》”は確かに、残酷な技ではあるが、殺人技が基本の神楽流の中では珍しい、活人拳。つまり、人を活かすための技の一つである。
カグラと大航海者マルコ・ポーロの船上の早撃ち対決は、カグラの勝利で終わった。
深々と三角帽《トライコーン》を被り、
片手には仰々しい装飾のついたフリントロックピストルを持つ。
航海者の青年マルコポーロは改めて告げる。
「ぃよーそろおおおおうっ!!! さっきの艦砲射撃を受けても生きているとは随分と運のいい奴らだなあ!! こちら側の再三の平和的な交渉も無視して、だんまりを決め込むとはよほど命が惜しくないらしいなぁ!! ここまでぶっ放してまだ分からないっつーなら鉄球のお代わりをくれてやらああっ! 艦砲の弾丸の再装填開始いっ!! 辺境の蛮族に文明開化のお見舞いだああああっ!! ボンボヤージュいいい!!」
遥か上空から拡声器のような物で、マルコポーロのをカグラ達は一方的に聞くことができるが、カグラ達の声を1000メートル上空に伝える手段は少なくともこの場には存在しない。おそらく彼の住んでいた異世界では拡声器を保有しない国が存在しないことの方が異常なのだろう。
彼の住んでいた異世界の国際法によると3分間以内に無回答の場合は交戦意志有りの判断と見なされるということからも、かなり好戦的な世界であることが想像できる。
「どうするよ。何か良い策があるか、セレネ。口八丁手八丁で煙に巻きたいところだが、1000メートルも離れた上空に居る船相手に交渉する手段なんて存在しねえ。いや………っもし仮に言葉で会話が出来たところで、あの男とまともな会話が成立するとは全く思えねーが。つまり、これは俺があの船に乗り移って、一対一の平和的な肉体言語で交渉するしかなさそうだな。…………ところでセレネ、いつも頼って悪いが、あの船にたどり着く妙案は何かあるか?」
そう言いながらカグラは覚悟を決め、戦場の決戦に備えて柔軟体操を開始する。
「現状の戦力でとり得る…………最適解を分析中…………そうデスね、例えば空中に足場を作るのは如何デス? 先日の遺跡の一件で見た、カグラの記憶映像の中のガラスの階段を、氷で再現するのデス。強度的には、若干の不安はありますが、確実な方法はそれ位デス」
「ちぃっとばかしあの船まで距離があるが、まあ一歩一歩着実に昇って行くって方法は安心感はあるな。マルコ・ポーロとやらの一対一の強さは分からないが、このまま一方的になぶり殺しにされるよりも賭けに出た方が良いと言うのは俺も同意だぜぇ。船上の白兵戦なら、まだ勝機はあると思うぜっ! ソレイユは連続かつ長時間魔法を展開しなければならないけど、大丈夫か?」
「にっひひ。ボクに任せるにへぇ。………今、セレネから送られてきたデータリンクのイメージを元に空中に足場を展開するにへ。ただ、あくまでも氷の足場。ガラスの階段のような強度は無い使い捨ての足場だから、十分気をつけるにへ。ただ空気中の水分を凝固して足場を作るだけだから、強度は保証できないけどそれで問題ないにへ?」
「ああ、大丈夫だぜっ! ロックマンの消えるブロックの要領で、消える足場をジャンプしてガンガン上に昇って行ってやらあ!」
「念のため、今日の気温における…………空気中のH2O比率を解析……ッ……計算数式はNm3…………OKッ!…………大気中の1立方㎝中の成分として、足場を作るのに十分な水分量を確認…………ただし、高度が高くなるごとに大気密度が薄くなりマス………それに応じて、足場も脆くなるのでその点だけは気を付けるデスッ」
「にっひひひひ。セレネっち! りょうーかい。高度高めの時は、ちょい強めに氷結魔法を展開するにへぇ。ちょっとだけ、魔力量が心配だけど、なんとか頑張るにへ」
「ソレイユ、頼みマシタ!………足場の展開先座標については、ソレイユとカグラにデータリンク。術式の展開と、カグラが足場を移るタイミングは、ワタシに併せて下さいっ! 当然、敵の艦砲による反撃も予想されますのでお気をつけてっ!」
「それじゃー! いく足場を作るにへぇ! 氷の精霊足場を作れ!」
「それじゃーいくぜいっ! それっケンケンパっとっ!」
ソレイユが術式を展開すると、空中に氷の足場が出来上がる。ただし脆弱。まるで薄氷の上を渡るが如き闘い方である。それはまるで横スクロールアクションゲームの消える足場っ!
カグラは神楽流跳躍術、蛙草《ぎゃるぐさ》にて足場を蹴り跳び渡る。蛙草《ぎゃるぐさ》は元は、他社との間合いを一気に詰め、他の技と連携してして使われる起点として使われる技である。その技を、一段一段昇るために使用する。
「ひえっ! この足場こえーぜ! これジャンプの時に蹴ると反動で割れるのなっ! この高度から落ちたら、助からねぇし、高度が高くなるごとに風も強くなるわできついな。はは…………っ生きた気しねぇわ」
現在は高度、333メートル。その高さは東京タワーと並んだっ! だが、飛空艇まではまだまだ遠いっ!
「はっはっは! 無駄な悪あがきをおおっ! それ、ボンボヤージ! そしてっ!よーそろおおおおおおおおっ! あの空を掛ける野蛮な少年に向けて全砲門艦砲開放集中砲撃ぃいいいいいいっ!!!」
弾丸の雨あられが、ソレイユが展開した氷の足場術式を砲弾が貫通して次々にぶち抜いて行くっ! 事実、カグラの足元の氷の足場も砲撃にて破壊され、墜落するカグラは一瞬死を覚悟した。
だがセレネとソレイユが機転を利かして、元の足場から10メートル下に新たなる足場を作っていたことで一命を取り留めた。
「とぅおりかじいっぱいぃっいいい!! 次弾装填っ! 旅は私の戦場だぁああああっ! 自分の目で見ぃ、自分の頭で考えるぅ! 辺境の蛮族どもに我が国の威信を見せるのだあああっ!!!! ひゃっはー! よおそろおおおおおおおっ!」
ソレイユの額から、汗が流れ出す。魔力の過剰行使による明かな疲労。小規模な魔法とはいえ、連続かつ長時間で展開することは非常に高い集中力を要することである。カグラ達と行っていた一連の特訓で、長時間一定の強さで重力魔法を使い続けていた経験が今になって役に立ってきている…………。
とはいえ、特訓でソレイユの集中力の限界をとっくに超えている。今も魔法を使えるのは、ソレイユの意地以外はない。カグラは現在、高度634メートル今やスカイツリーの高さにまで達している。当然砲撃は続いているが、これを避けつつも、足場を転々としているのだ。
「にひ……ひっ………っとは言っても、さすがに結構シンドイのは事実にへぇ……。空から落ちてくる砲撃にも注意しなきゃいけないしで、ボクの思考回路はショート寸前にへぇ………はぁ…………はぁ………」
「ソレイユ………しっかりするデスッ!………まずは水飲んでくだサイッ」
「にっへへ。………セレネっち、さんきゅっ! 少し元気でたよ。それにしてもカグラとんでもない高い所まで昇っていってるね。ありゃ、落ちたらさすがに即死にへ。………ボクたちも頑張るにへ」
ここは上空1000メートル。カグラは、あのマルコ・ポーロの船と同じ高度に立っている。
「はあっ………はぁ…………っ………さすがに、酸素が薄いせいか、結構シンドイぜっ! あと突風が怖すぎる。セレネが風向きとか計算して指示してくれなきゃこんなん無理ゲーだったぜっ! そにしても視えてきやがったぜっ! あれがあの船の船主かっ! へへへっ! あの男、絶対ぶん殴ってやるぜ!」
「カグラ!………目の前にマルコポーロの戦艦。左、右どちらに行きますか?」
「ここは左だっ! 大抵の戦艦は左舷が弱いという統計が有る。更に付言するならなぁ、俺の愛読書ハンターハンターという漫画のクラピカ理論でも『右と左で迷ったら左が正解』というお墨付きだぁっ!」
「…………カグラがいつも通り…………何言っているか分からないデスが、いつも通りの言葉を聞けて安心しまシタッ!…………ラジャ…………ソレイユ、左方向に足場を展開っ!…………座標はデータリンク照会のコト」
「にひっ……ッひ……了解にへっ! 氷の精霊足場を作れ」
足場を伝い、ついにカグラはマルコ・ポーロの戦艦の中への侵入に成功する。目の前には、マルコポーロ。カグラの船内の侵入に対して一切動じていない。おそらく、船内での白兵戦の経験も数多く経験していると思われる。
マルコ・ポーロの片手には連装式フリントロックピストルを保持。照準は、カグラの脳天。狙った獲物は絶対に外さないという自信からうまれる、慢心ではない余裕の表情。つまりは、この男は白兵戦においても負ける気は更々ないということ!
「ボンジョールノッ! 私の名前はマルコ・ポーロっ! ようこそ招かれざるお客人。あなたを土足でこの船に入ることを許可しましょう!」
「ありがとうよ。だけど、お前の許可はいらねぇさ。マルコ・ポーロ、お前に決闘を申し込むっ!………受け入れるか?」
「ははん。命知らずですねぇ。ふん、面白い。それじゃあ私の国の決闘法に則り、決着は銃による早撃ちでいかがですか?」
「ははん。西部劇スタイルか。いいぜ。ただし、俺は銃は使わねぇ。お前を舐めているわけじゃねえさ。……徒手空拳が、俺の本気のスタイルって、わけさ」
「いいでしょう。ふん、拳闘志とは船上で何度か闘ってきました。時には彼らの拳が銃を上回ることがあるのも事実。いいでしょう。それでは、私が指でコインっを弾きますので、それが落ちたらお互いが撃ちあいましょう。良いですね」
「異存は無い………勝負は一瞬だ」
マルコ・ポーロは舞台役者のように大げさに拍手を送る。絶対に自分は負けることはないからくる、慢心とは違う、自信。当然、彼も油断しているわけではない。これから行われる、決闘は彼の本気っ!
「招かれざる客人よ。辺境の国の侍としての矜持、その勇気、称賛に足る。グラッツィエ、ブラーボ、そして………………アリーデヴェルチィッ!!」
マルコ・ポーロの連装式のフリントロックピストルは2発しか撃てないような銃である。なおかつ、再装填に撃鉄を引くアクションが必要。小型の火縄銃のような物だ。カグラからしたら装飾華美な、骨董品としての価値しかない旧世代の遺物。
………だが、そのような旧時代の遺物も持ち手によって、意味合いが大きく変わる。引き金に指が掛かり、球状の弾丸が射出される。………確実に当たる射線軸にて、引き金を引いた。だから、彼は引き金を引いた瞬間に勝利を確信していた。
――だが、この弾丸をカグラは回避する。
身体能力を極限まで鍛えたカグラとは言え、放たれた弾丸を目視で確認してその後に避けることは不可能。
だが、引き金を引き前の相手の視線、呼吸、一瞬の筋肉の強張り、そして銃口の確度、等々様々な要素から引き金を引く、瞬間を先読みすることは可能。………つまり、カグラの目には、マルコ・ポーロが放つ弾丸の軌道が確実に見えているっ!
「蛙草《ぎゃるぐさ》、派生っ! 神楽流祭法、水浸の型”空木《うつぎ》”!」
神楽流の跳躍技によって、10メートルの距離を一瞬で詰める………そして、懐に入りこみ、零距離から水月に掌底を放つっ!
この技は直接の打撃により肉体を損壊させる破壊技ではない。人間の体を伝う体内の水分を媒介として振動を伝わせることによって、体の内部から破壊する鎧通しの技。人間の体は70%は水分、つまり…………
「………ぐはっ…………!!」
マルコ。ポーロの口からは、おびただしい量の鮮血。眼球からは血涙、耳からも血が流れている。”空木《うつぎ》”は確かに、残酷な技ではあるが、殺人技が基本の神楽流の中では珍しい、活人拳。つまり、人を活かすための技の一つである。
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