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奴隷となった青年 〈ステラside〉
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※少し暗い話になってます。
ーーーーーーー
私はマフィリア帝国の第三皇子としてこの世に生まれた。
私が物心がついて覚えているのは母親が毎日、朝晩ごめんなさいと私に声をかけることだった。
幼い私にはそれがなぜかわからなかったが母が悲しむのが嫌で
「母上悲しまないで」
とごめんなさいと言われるたびに私も答えていた。
すると母はいつも決まってぎこちない笑顔で
「お願いだからあなたは生き延びてね。」
と言うのであった。
その意味がわかったのは私が10歳になった頃だった。
兄弟が全員呼び出され、皇帝から伝えられたのは、皇太子となるもの以外生き延びることはできないと言うものだった。
そこからは地獄のような日々だった。
貴族たちは皇子それぞれに合わせて三派閥に分かれ、皇子たちはそれぞれ命を狙われるようになった。
毎日のように食事に毒が入り私の身の回りで私の命を狙うような不自然な事故が多発し、寝る前には必ず暗殺者がやってくる。
このような日々が毎日毎日繰り返されるのだ。
いつ死ぬかわからない。気が抜けない日々と、自分の派閥の貴族からのプレッシャーが続き精神をだんだん蝕んでいく。
ついに私たち皇子の考えは皇子の中で一人でも死ねばこの日々が早く終わるのだというものになってしまった。
そして兄弟たちはすれ違っても以前のように挨拶もせずに殺気をむけるようになってしまった。
そんなある日私が階段を下ろうとした時誰かから押された。とっさに魔法で身を守り怪我をせずに済んだがその犯人が1番信頼していた兄上である第一皇子であったことに驚いてしまった。
後日兄上に会うとその目は以前のような輝きはなく私を見て繰り返し言うのだった。
「あぁ、お願いだステラ。どうか私のために死んでくれないか。もうこんな日々は嫌なのだ。私たちは兄弟だろう?お願いだステラ、死んでくれ。」
変わってしまった兄上に私も精神が壊れる限界までになってしまった。
私がそれでも精神を壊さずに済んだのはまだ優しい母上がいたからだった。
母が謝る回数は増えてひどくなってしまったがそれでも私に下心で近づいてはプレッシャーをかけてくる私の派閥の人間やいつでも命を狙ってくる兄弟たちの派閥の人間しかいない私には母上の絶対的な私の味方だと言う安心感は大きかったのだ。
しかしそこに目をつけられてしまった。
その日も毎日の日課である母上に挨拶するために母上の部屋に向かった。
おかしいと思ったのだ。
いつも早起きである母上がその日はまだベッドにいるようだった。
ベッドの上の母上は穏やかな顔で目を閉じていた。
「母上、まだ寝ているのですか?起きてください。」
そういっても起きないので母上に触れた。
母上の体は冷たかった。
母上は亡くなっていたのだ。
きっと暗殺だろう。しかし不慮の事故として扱われ調査もろくにされないまま母上の葬式が始まった。
私は泣くことができなかった。
私のせいで母が死んでしまった。私以外の命は奪われないと思っていた私が悪いのだろうか。
葬式は静かに行われた。皇帝や他の王妃、貴族、兄弟が出席した。
みんな悲しんでいると思っていた。
皇帝は花を添えただけで何も母に声をかけることはなかった。
貴族やら兄弟やらが哀れみの言葉や慰めの言葉を向けてくる。
しかし裏では母の死を笑っていたのだ。
「これで第三皇子の派閥はだいぶ少なくなりましたねぇ。」
「えぇ。邪魔が消えました。これでより第三皇子の命が狙いやすくなりますね。」
「第一皇子殿下!これであなた様は時期皇帝の座により一歩近づきましたね。」
「あぁ、、。そうだな。」
「第二皇子殿下の派閥と手を組んだ甲斐がありました。」
あぁ、やはり母上は私が巻き込んでしまったのだろう。貴族たちの笑い声が聞こえてくる。
今まで散々味方です。と言ってきた私の派閥の貴族もだいぶ消えてしまった。
気持ち悪い。気持ち悪い。全ての人間が気持ち悪かった。
私が殺されるのももう時間の問題だと思った。
私は死んでしまうのだろうか。
いや、もう死んでしまってもいいのかもしれない。
地獄のような日々から解放されたかった。
母上の死から一週間後母上の息子への手紙が見つかった。
『どうかあなただけは生き延びてね。愛しているわ。私の息子。』
ああ、私はまだ生きないといけない。
母上の願いに応えなければいけない。
だがもう人間は誰一人として信じない。
人間は全て腐っているのだと痛いほど感じさせられたのだから。
大事なものを作ればそれは奪われ去ってしまう。
だからもう大事なものもいらない。
私には今何もないのだ。それを寂しく思う心も全て消えてしまった。
私は継承権を放棄した。
その条件として諜者というのを隠して奴隷としてハルバニア王国に行くことになった。
ハルバニア王国には使用人や奴隷を虐めるわがままで癇癪持ちの王子がいるという。
その王子は嫌われていつも孤独らしい。
私は何回も命の危機をのりこえてきた。そんな王子のいじめなどなんて事もないだろう。
皇帝にはきっとその王子と契約を結ぶことになるだろうと言われた。
しかしそれもどうでもよかった。
体に奴隷の印を入れられた。
奴隷として行くことが決まったその日の夜に私は出発した。
ーーーーーー
後1話ステラ視点つづきます!
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私はマフィリア帝国の第三皇子としてこの世に生まれた。
私が物心がついて覚えているのは母親が毎日、朝晩ごめんなさいと私に声をかけることだった。
幼い私にはそれがなぜかわからなかったが母が悲しむのが嫌で
「母上悲しまないで」
とごめんなさいと言われるたびに私も答えていた。
すると母はいつも決まってぎこちない笑顔で
「お願いだからあなたは生き延びてね。」
と言うのであった。
その意味がわかったのは私が10歳になった頃だった。
兄弟が全員呼び出され、皇帝から伝えられたのは、皇太子となるもの以外生き延びることはできないと言うものだった。
そこからは地獄のような日々だった。
貴族たちは皇子それぞれに合わせて三派閥に分かれ、皇子たちはそれぞれ命を狙われるようになった。
毎日のように食事に毒が入り私の身の回りで私の命を狙うような不自然な事故が多発し、寝る前には必ず暗殺者がやってくる。
このような日々が毎日毎日繰り返されるのだ。
いつ死ぬかわからない。気が抜けない日々と、自分の派閥の貴族からのプレッシャーが続き精神をだんだん蝕んでいく。
ついに私たち皇子の考えは皇子の中で一人でも死ねばこの日々が早く終わるのだというものになってしまった。
そして兄弟たちはすれ違っても以前のように挨拶もせずに殺気をむけるようになってしまった。
そんなある日私が階段を下ろうとした時誰かから押された。とっさに魔法で身を守り怪我をせずに済んだがその犯人が1番信頼していた兄上である第一皇子であったことに驚いてしまった。
後日兄上に会うとその目は以前のような輝きはなく私を見て繰り返し言うのだった。
「あぁ、お願いだステラ。どうか私のために死んでくれないか。もうこんな日々は嫌なのだ。私たちは兄弟だろう?お願いだステラ、死んでくれ。」
変わってしまった兄上に私も精神が壊れる限界までになってしまった。
私がそれでも精神を壊さずに済んだのはまだ優しい母上がいたからだった。
母が謝る回数は増えてひどくなってしまったがそれでも私に下心で近づいてはプレッシャーをかけてくる私の派閥の人間やいつでも命を狙ってくる兄弟たちの派閥の人間しかいない私には母上の絶対的な私の味方だと言う安心感は大きかったのだ。
しかしそこに目をつけられてしまった。
その日も毎日の日課である母上に挨拶するために母上の部屋に向かった。
おかしいと思ったのだ。
いつも早起きである母上がその日はまだベッドにいるようだった。
ベッドの上の母上は穏やかな顔で目を閉じていた。
「母上、まだ寝ているのですか?起きてください。」
そういっても起きないので母上に触れた。
母上の体は冷たかった。
母上は亡くなっていたのだ。
きっと暗殺だろう。しかし不慮の事故として扱われ調査もろくにされないまま母上の葬式が始まった。
私は泣くことができなかった。
私のせいで母が死んでしまった。私以外の命は奪われないと思っていた私が悪いのだろうか。
葬式は静かに行われた。皇帝や他の王妃、貴族、兄弟が出席した。
みんな悲しんでいると思っていた。
皇帝は花を添えただけで何も母に声をかけることはなかった。
貴族やら兄弟やらが哀れみの言葉や慰めの言葉を向けてくる。
しかし裏では母の死を笑っていたのだ。
「これで第三皇子の派閥はだいぶ少なくなりましたねぇ。」
「えぇ。邪魔が消えました。これでより第三皇子の命が狙いやすくなりますね。」
「第一皇子殿下!これであなた様は時期皇帝の座により一歩近づきましたね。」
「あぁ、、。そうだな。」
「第二皇子殿下の派閥と手を組んだ甲斐がありました。」
あぁ、やはり母上は私が巻き込んでしまったのだろう。貴族たちの笑い声が聞こえてくる。
今まで散々味方です。と言ってきた私の派閥の貴族もだいぶ消えてしまった。
気持ち悪い。気持ち悪い。全ての人間が気持ち悪かった。
私が殺されるのももう時間の問題だと思った。
私は死んでしまうのだろうか。
いや、もう死んでしまってもいいのかもしれない。
地獄のような日々から解放されたかった。
母上の死から一週間後母上の息子への手紙が見つかった。
『どうかあなただけは生き延びてね。愛しているわ。私の息子。』
ああ、私はまだ生きないといけない。
母上の願いに応えなければいけない。
だがもう人間は誰一人として信じない。
人間は全て腐っているのだと痛いほど感じさせられたのだから。
大事なものを作ればそれは奪われ去ってしまう。
だからもう大事なものもいらない。
私には今何もないのだ。それを寂しく思う心も全て消えてしまった。
私は継承権を放棄した。
その条件として諜者というのを隠して奴隷としてハルバニア王国に行くことになった。
ハルバニア王国には使用人や奴隷を虐めるわがままで癇癪持ちの王子がいるという。
その王子は嫌われていつも孤独らしい。
私は何回も命の危機をのりこえてきた。そんな王子のいじめなどなんて事もないだろう。
皇帝にはきっとその王子と契約を結ぶことになるだろうと言われた。
しかしそれもどうでもよかった。
体に奴隷の印を入れられた。
奴隷として行くことが決まったその日の夜に私は出発した。
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後1話ステラ視点つづきます!
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