《完結》隠れヤンデレ奴隷が契約解除してくれません!!

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久しぶりからの勘当

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俺は久しぶりに王宮の離れに来た。

戦争で王宮自体はボロボロだったのでだいぶ離れた離れまで避難していたみたいだ。

ここに来るのは久しぶりで母上を思い出した。

母上はこの離れに今も住んでいるが、今日は王妃と出かけているらしい。

うん、心配だ。

それにしても父上からの呼びだしはすごく久しぶりで、もう俺のことなど忘れていたかと思っていた。

「久しぶりだな。
よく生きていた。」

父上に謎に誉められてゾワゾワした。

「ありがとうございます。」

「お前を呼び出したのは二つ要件があるからだ。
まず一つ目、、、ハリスが婚約した。」

「おめでとうございます。」

ぶっちゃけどうでもいい話だな。

このために俺を呼んだのか?

アルルとはくっつかないんだな、。

「お前にも関係ある話だ。」

「え?」

つい反応してしまう。

俺に関係ある話?

「リリウム、お前、今自分が何歳かわかっているのか?」

「16歳です。」

「結婚の適齢だ。
お前も早く結婚しなさい。
より多くの王家の血筋を増やすのだ。」

ああ、そうだった。

この国では王家は皆結婚して、子供を成して血筋を絶やさないことがいいこととされる。

王家の者は必ず結婚しなければならないのだ。

忘れていた。

だけど俺は前世の記憶の持ち主だ。

知らない誰かと政略結婚など嫌なのだ。

ちゃんと愛し合って結婚したい。

そして死ぬまで一緒にいたいのだ。

俺は前世ただの会社員で、愛し合えるような相手もいなく孤独で死んだ。

今世はちゃんと愛し合いたい。

「ええ、わかりました。
まず自分で相手を探してみます。」

俺は一旦取り繕った。

結ばれたい相手にはもう結ばれた相手がいる。

俺はこの先誰かを愛せるのか?

結婚なんてできそうになかった。

「よろしい。
それと二つ目の件だ。
お前の奴隷契約を有効活用して欲しい。
お前ももう知っているだろう。
マフィリア帝国の皇帝はステラ・ユウミーンとなった。
しかしステラ・ユウミーンはお前と専属奴隷契約をしているだろう。
お前はあまり命令を出していなかったみたいだが、、、
お前の命令なら絶対だ。
まだ解除してないなら、ステラ・ユウミーンを飼いならせ。
お前の絶対的な従僕とするのだ。」

「それはできません。」

俺ははっきりと断った。

「ステラは俺の奴隷ですが、ステラの意思に反することは絶対にやりたくないと思っていました。
それに、ステラは俺が命令しなくても常に俺のために動いてくれました。
もう俺の元で十分働いてくれました。
ステラは皇帝となり今最も輝いているでしょう。
その輝きを私は自分の手で壊したくありません。
俺はステラの幸せを願っています。
ハルバニア王国の利益のためにステラを専属奴隷契約で使役したくありません!」

「私に口答えするのか!」

「はい!
これだけは譲れません。
それに私はステラのためにこの奴隷契約を解除するつもりです!
ステラがもし解除したいと戻ってきたら私は今すぐにでも解除できます。」

「なんだと!!
お前はこの国の駒なんだ!
勝手なことをするな!!
お前を王族として残してやっているのは誰かわからぬのか!!」

「わかっています!!」

「それなら言うことを聞け!」

「できません!」

「言うことを聞けぬのなら王族から出ていけ。
お前はもっと早くこうすればよかったな。
お前は何も使えないクソだ。
たった今!
お前を平民堕ちとする!」

平民堕ちか!

普通の王族なら発狂していたであろう。

でも俺はそうでもない。

なぜなら前世は生粋の平民だ。

全然何も怖くなどない。

そしてさっきの結婚のことも逃れられるとなると非常に嬉しかった。

「わかりました。
もう二度とここには戻ってきません!!」

俺はそう言うと自分で部屋を出た。

そして最後に自分の部屋に最低限のものを取りに行った。

俺の気持ちは不思議とスッキリしていた。

16年間王族は本当は肩が重かった。

その全てが今解かれた気分だった。

すぐにでも王宮を出ようとすると声をかけられた。

「リリウム様!!!」

それはカルウスやサラをはじめとする俺に使えてくれていた使用人たちだった。

「なんで、、」

「私たちはずっとリリウム様の帰りを待っておりました!
たった今リリウム様が平民になられたと聞きました!
私たちはずっとリリウム様の使用人です!!
どうぞ連れていってください!」

「だが、、この人数で暮らす場所もお金も俺は持っていないんだ。
みんなの気持ちは嬉しい。
だけど、、みんなはここで働いていた方がいい。
家族や自分の生活を大事にしてくれ。」

「ですが!!」

「俺は平民でもちゃんと生きていけるさ。
安心してくれ。」

俺は満面の笑みを見せる。

使用人のみんなは泣き始めた。

こんなにも慕われることができて俺は幸せだなぁと素直に思えた。

全員とハグをして、ついに王宮から去った。

サラはずっと号泣して俺についていくと言っていたが落ち着かせた。

王都の入り組んだ路地裏の道に入り少し歩いたところで格安の宿を見つけた。

今日はここで泊まろう。

そうやって決めて宿に入った。

しかし、、

「ここはすでに満室ですねえ、、。
他を当たってください。」

断られてしまった。

仕方ない。

今まで泊まっていたアリソン騎士団長が管轄している軍の寮に泊めてもらおうと考えたが、平民は普通に入れない。

時期に入れなくなってしまうだらう。

迷惑もかけられないしもう夜も遅いし、今日は野宿にしよう。

そう思って宿を出ると一人の老人、、、
いやカルウスが立っていた。

「なんでここにいるんですか??」

俺が聞くとカルウスはあの優しい笑顔を浮かべる。

「私は商人の中でも最年長で、リリウム様をずっと見てきておりました。
そして使用人一同リリウム様を心配しておりますので私がリリウム様がちゃんと職と住を見つけるまでついていきます。」

「でも、、、」

「ほらいいから行きましょう。
こちらの宿をとっておきましたから。」 

カルウスに押されるまま別の宿に入る。

さっきの宿よりも綺麗だ。

カルウスは宿の部屋についてからも俺の世話をまるで俺が王族だった時のようにしてくれた。

「そういえば気になっていたんだが、アロンダさんは元気なのか?」

「はい。
元気だと手紙が先月も届きました。
フランド様の遺体を探しているみたいですね。」

「生きていると信じて探すアロンダさんもすごいな、、。」

「ええ。あの方はきっと自分の信じたことを通し抜く人なのでしょうね。」

「そうだな、、。」

こうして俺の平民1日目の夜は更けて行った。








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