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39.風の民
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「そうえいえばレーメはどうしてこの街へ来たの?」
レーメと2人で話すのは振り返ってみれば初めてのことだったので今まで聞いてみたかったことを聞いてみることにした。
「そうですね……もう随分昔の話になりますが……
私の家族は風の民という民族で、定住地を持たず、各地を転々としながら生活をしていました。ある国で交易に来ていたアズールと出会ったのです。アズールも異国語にはかなり詳しかったのですが、私の方が異国の平民言葉により詳しかったことと、私の演奏を気に入ってくださったこともあって商会へ誘ってくださったのです。」
「ご家族と離れるのは寂しくなかったの…?」
「もちろん寂しくないと言えば嘘になりますが、私たちは風の民。きっといつかどこかで会えます。」
レーメは柔らかく微笑む。
「それに、私たちは風の妖精の加護を受けておりますので、近くにいなくても元気に過ごしていることを感じることができるのです。」
「まぁ…!!そうなの? じゃあレーメにも妖精が見えるの?」
「いいえ、見ることはできません。ですが、近くで見守ってくれていることを感じることはできます。」
レーメの言葉に風がそよそよと木を揺らし、青々とした木の葉がクルクルとイリスたちの周囲に舞い落ちる。
「ほら、ここにいるよって言ってるでしょう?」
レーメの手のひらに葉がゆっくりと落ちる。
「本当ね…!!」
「妖精たちはいつも傍で私たちを見守ってくれているのです。」
「素敵…。」
イリスも両掌に舞い落ちた緑の葉を見て優しく微笑む。
「そうだ、アズールが気に入った演奏ってなあに?」
「大きいものはありませんが、では少しだけ。」
そう言ってレーメは懐から両掌くらいの大きさのころんとした木の板を取り出す。
長く大切に使い込まれていることがよく分かる風合いで、板の端から長さの異なる細い棒状の金属が何本も並んでいる。
レーメが板を両手で包み込み、金属の棒を親指で弾くと、そこから柔らかい音が溢れ出した。
異国の物悲しいメロディだが、楽器が出す柔らかな優しい音色と混ざり合って懐かしいような切ないような胸が締め付けられるような気持ちになる。
初めて聞くはずのその曲は不思議と初めて聞いたような気がしなくて、演奏に合わせた歌が自然とイリスの口から溢れ出す。
風が優しくイリスの頬を撫でていく。
潮風と緑と太陽の混ざった優しい香りが鼻を掠める。
梢の間からはキラキラと日差しが降り注ぐ。
レーメの家族たちが元気でいますように。
アズールたちが無事早く帰ってこれますように。
アラン様が元気で過ごされていますように。
胸に湧き上がる色々な想いに願いを込めて歌う。
目を閉じて歌っているうちに不思議な空間に放り込まれたかのような、何か優しい柔らかなものに大切に包まれているかのような気持になる。
演奏が終わったあとも音色の余韻がしばらく心に響き、ふわふわとした心地からゆっくりと醒めていく刹那、瞳から涙が一筋頬を伝った。
「お嬢様…?」
「素晴らしい音色ね…。」
「お嬢様の歌声も…きっとお嬢様の想いは風の妖精たちが伝えてくれます。」
レーメは優しく微笑む。
アズールたちは早々に帰還するに違いないと不思議な確信があった。
レーメと2人で話すのは振り返ってみれば初めてのことだったので今まで聞いてみたかったことを聞いてみることにした。
「そうですね……もう随分昔の話になりますが……
私の家族は風の民という民族で、定住地を持たず、各地を転々としながら生活をしていました。ある国で交易に来ていたアズールと出会ったのです。アズールも異国語にはかなり詳しかったのですが、私の方が異国の平民言葉により詳しかったことと、私の演奏を気に入ってくださったこともあって商会へ誘ってくださったのです。」
「ご家族と離れるのは寂しくなかったの…?」
「もちろん寂しくないと言えば嘘になりますが、私たちは風の民。きっといつかどこかで会えます。」
レーメは柔らかく微笑む。
「それに、私たちは風の妖精の加護を受けておりますので、近くにいなくても元気に過ごしていることを感じることができるのです。」
「まぁ…!!そうなの? じゃあレーメにも妖精が見えるの?」
「いいえ、見ることはできません。ですが、近くで見守ってくれていることを感じることはできます。」
レーメの言葉に風がそよそよと木を揺らし、青々とした木の葉がクルクルとイリスたちの周囲に舞い落ちる。
「ほら、ここにいるよって言ってるでしょう?」
レーメの手のひらに葉がゆっくりと落ちる。
「本当ね…!!」
「妖精たちはいつも傍で私たちを見守ってくれているのです。」
「素敵…。」
イリスも両掌に舞い落ちた緑の葉を見て優しく微笑む。
「そうだ、アズールが気に入った演奏ってなあに?」
「大きいものはありませんが、では少しだけ。」
そう言ってレーメは懐から両掌くらいの大きさのころんとした木の板を取り出す。
長く大切に使い込まれていることがよく分かる風合いで、板の端から長さの異なる細い棒状の金属が何本も並んでいる。
レーメが板を両手で包み込み、金属の棒を親指で弾くと、そこから柔らかい音が溢れ出した。
異国の物悲しいメロディだが、楽器が出す柔らかな優しい音色と混ざり合って懐かしいような切ないような胸が締め付けられるような気持ちになる。
初めて聞くはずのその曲は不思議と初めて聞いたような気がしなくて、演奏に合わせた歌が自然とイリスの口から溢れ出す。
風が優しくイリスの頬を撫でていく。
潮風と緑と太陽の混ざった優しい香りが鼻を掠める。
梢の間からはキラキラと日差しが降り注ぐ。
レーメの家族たちが元気でいますように。
アズールたちが無事早く帰ってこれますように。
アラン様が元気で過ごされていますように。
胸に湧き上がる色々な想いに願いを込めて歌う。
目を閉じて歌っているうちに不思議な空間に放り込まれたかのような、何か優しい柔らかなものに大切に包まれているかのような気持になる。
演奏が終わったあとも音色の余韻がしばらく心に響き、ふわふわとした心地からゆっくりと醒めていく刹那、瞳から涙が一筋頬を伝った。
「お嬢様…?」
「素晴らしい音色ね…。」
「お嬢様の歌声も…きっとお嬢様の想いは風の妖精たちが伝えてくれます。」
レーメは優しく微笑む。
アズールたちは早々に帰還するに違いないと不思議な確信があった。
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