梨里杏とリリア ⚜️二十歳の夜、二人は世界を越えた⚜️

星ノ律

文字の大きさ
30 / 47
第二章:新しい日常

🌐 30:地球はどう?

しおりを挟む
◤ 大学のボクシングサークルで、凛太郎に勝利した梨里杏。しかし梨里杏の心は、決して晴れやかなものでは無かった…… ◢

「ただいま」

「おかえり、梨里杏。見たわよ、ボクシングの試合!」

 ああ……そう言えば萌が、お母さんにも送っておいたって言ってたっけ。お母さんにも凛太郎の左目は、殆ど見えていないことを話した。

「そうだったんだ……」

 お母さんはそう言って間を置くと、大学はどうだったかと聞いてきた。

「お母さんが心配してくれてたのがよく分かった。ビックリするくらい、ついていけなかった」

「だよね……まあ、仕方ないよ。——時間はたっぷりあるし、辞めるも辞めないも、じっくり考えたらいいんじゃないかな」

 お母さんはそう言って席を立った。きっと、コーヒーを入れてくれるんだと思う。


「お母さん……話変わっちゃうんだけど、ちょっと聞いていい?」

「どうしたの、改まって。当たり前じゃない、なあに?」

「こっち……地球で何か、おかしなことって起き出したりしてる? 具体的に言うと、ここ二十年くらいで」

 私がそう言うと、お母さんは腕を組んで首を傾げた。

「その前に、どうしてあなたがそんな質問をするのか聞かせてくれる? どうせ、リアノスが関係してるんでしょ?」

 さすがお母さん、すぐに分かっちゃうんだ——

 本当は地球に着いてすぐ、聞かなきゃと思っていたことだ。だが、地球はあまりにも平和で、ついつい先延ばしにしてしまっていた。

「うん……実はエルデリアではここ最近、少しずつおかしな事が起きていて。——お母さんは、マナトゥムって聞いたことある?」

「マナトゥム……? ああ、前世界のエルデリアを滅ぼしたっていうロボットだっけ? まるで、映画やアニメのお話みたいだねって、リアノスに言ったのを憶えてるわ。——もしかして、それが出てきたの?」

「うん……遠く離れた場所の話なんで、まだハッキリとは分かってないんだけど。特徴からして、マナトゥムじゃないかって」

「エルデリアって、通信に関しては全然遅れてるって話だったもんね……それより、リアノスはあの子にそれを倒させようと思ってるのかしら……」

 お母さんの表情が険しくなった。急にエルデリアに飛ばされて、そんな大役を押し付けられたとしたら、お母さんが怒るのも無理はない。

「い……一応、前にも言ったけど、私たちを入れ替えた理由は、地球とエルデリアの接近を防ぐためで……」

「あ。ごめんね梨里杏、気にさせてしまったみたいで。——あ、そうそう。最初の質問に答えなきゃね。ここ二十年ほどで、地球で悪くなってきたことか……」

 お母さんは「うーん」と考え込んでしまった。すぐに思い当たらないのであれば、これといったトラブルはないのかもしれない。

「あ! あったあった、少し不思議なことが。ちょうど二十年前くらいからなのよ、オリンピックなんかの記録が伸びなくなったのは。スポーツの技術も格段に進化してるってのに、何故伸びないんだろう、不思議だよねって話で」

 お母さんが言うには、伸びなくなっているのは特定の競技だけではないという。陸上や水泳、どの分野に至っても、一様に記録が伸びなくなっているらしい。


 その後、気になってネットで色々と調べてみた。

 やはりお母さんが言うように、ちょうど二十年程前から記録が伸びなくなっているようだ。それに関連して、平均身長が下がってきていたり、寿命が頭打ちしているというような記事も出てきた。

 お父様が地球へのゲートを開けたのが、二十二年ほど前。そこから全てが、悪い方向へ進んでいるのかもしれない。


***


 お風呂から上がってスマホを見ると、いくつかメッセージが届いていた。

 大学の楓と、ボクシングサークルの村瀬、そして凛太郎からも届いている。凛太郎とはID交換してなかったはずだけど……村瀬が教えたのだろうか。

 楓は「SNSでボクシング見たよ!」という、連絡だった。適当なスタンプを返しておいた。

 村瀬からは「焼肉いつがいい?」というメッセージ。ある程度、凛太郎と日にちを決めてくれればいいとも書いてある。だから、凛太郎に私のIDを教えたのだろう。

————————————
藤森凛太郎です。
俺もいつかはSNSでバズってみたいとは思ってたけど、想定外のバズり方して戸惑ってます。友達からは、めちゃくちゃ連絡くるし……
で、村瀬さんから焼肉の日聞かれてたんで、メッセージしました。
俺は大体ヒマなんで、そっちがいい日教えてくれたら。
あと、ここの焼肉めっちゃ美味いから、腹減らして来たほうがいいよ。
————————————

 焼肉か……

 こっちに来てから外食なんて、お母さんと萌としか行ったことがない。少し楽しみでもあり、ちょっと緊張しそうでもある。

 それにしても、エルデリアでは緊張が高まりつつあるなか、私はこんなフワフワとした生活をしていていいのだろうか——

 そっ、そうだ! 大学の件、萌に連絡入れなきゃ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

処理中です...