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8:侍女達のティータイム

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 昼夜がそろそろ大人と同じようになっているので、アンナももう安心ですね。
 お昼寝もたっぷりしていますし、皆に余裕が出てきたようです。
 時々マサとアンナでティータイムをしている時もあります。
 それでも、アンナが一日中私に付きっきりであることには代わり有りません。
 両親には会ったことがありませんが、実質アンナとお兄様が私の親代わりでしょうか。

「う~あぅあ~」
「お嬢様はご機嫌ですね」

 私の発声練習に、マサがくすりと微笑みました。
 よくある小説とかって1歳になる前から流暢に話し始める赤ちゃんとか、そもそも私とは違って生まれたときから翻訳付きというか胎教どれだけ良かったの? と不思議になる主人公も多いです。
 けれど、私はなんというか、読んでたライトノベルとは違って本能に忠実ですし、自分なのに自分をコントロール出来ないことも多いです。例えば泣くこととか、泣くこととか、泣くこととか。
 物語は所詮物語か。そうは思わずにいられません。
 私だって文字の勉強をしたいですし、この世界のことを知りたいです。
 しかしながら、私の本能はまず生きることに忠実です。
 本能に従わなければ自我がすり減るような感覚さえあるのですから怖いものですね。

「一時はどうなることかと思いましたが、あれからスキルも発動しておりませんし」
「お嬢様のスキルはどんなものでしょう。移動系であることは間違いないのですが」

 鍵をかけた寝室から居なくなる赤ちゃん。うん、ホラーですね。
 確かに、アンナの言う通り移動系のスキルでなければ難しいでしょう。
 土まみれになっていたことからしても、私が外に居たことは皆分かっているでしょうし。
 あの森は一体何だったのでしょうね。

「最も、私はお嬢様が無事にお育ちになれればそれでいいです」

 アンナは私を抱き上げて優しく揺らしてくれます。
 それを微笑ましそうに見るマサ。
 この空間が私は好きですよ。

 そうそう。今までアンナの紹介を簡単にしかしていなかったと思うので、ここでご説明します。
 どこの誰かなんてことは赤ちゃんにわかるわけがないので、そこは割愛させて頂きますね。
 栗色の髪を三編みにした13歳の少女。それがアンナです。
 言動がかなり大人びているように感じますが、使用人の訓練を受けている子はこんなものなのでしょうか。
 前世では使用人という職業の方に会ったことがないのでわかりません。
 そもそもからしてアンナの年齢では中学生ですしね。
 ぷっくりとした頬は桃色に色付き、くりりとした青い瞳は彼女の愛らしさを引き立てます。

「そうですね」

 マサも微笑みながら私の頭を撫でてくれます。
 マサの説明もここでしちゃいましょうか。
 黒髪を前髪も全て後ろへ流してお団子にしている古風な感じの髪型です。
 青い瞳はアンナと同じ。お国柄でしょうか。
 きりりと眉尻が上がっているので一見怖く見えますが、そんなことはありません。
 髪型が年齢を上げているように見えますが、恐らく20歳半ばくらいだと思います。
 マサが侍女長だと何故知っているのかというと、アンナがマサのことをそう呼ぶからです。
 まあ侍女の中の上下関係は大切ですね。
 いつもなにか書類仕事をしているみたいで、たまに私の部屋に持ち込んでいます。
 アンナの代わりでしょう。私とマサだけのときには眉尻がふにゃりと下がるところが可愛いです。

「お嬢様はどんなお子になるのでしょう」
「きっと素敵な方になるに違いないわ」

 2人というか、この家の使用人とお兄様は皆、私に甘い。
 どこからそんな自信が出てくるのでしょうね。
 私としては早く読書が出来るように成長したいな~と思っています。
 今日も今日とていい天気です。

 
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